ネットではいろいろな出来事が無秩序に起こっているように見えるが、
少し引いて眺めてみると、
日米の違いやメディアの性格が浮かび上がってくる。
●報道機関がターゲットになって世論形成が行なわれる
このところ90年代以降にアメリカで起こったジャーナリズム運動の流れをたどっている。
報道機関が市民と向き合ってその意見を積極的に採り上げ世論を作る「シビック・ジャーナリズム」という運動は、全米で少なくとも2割の新聞社がやったと報告されている。しかし、コストも手間もかかることからしだいに衰退し、ウェブを使った市民記者の運動に変わっていった。さらにジャーナリズムということを意識しないブログやSNSなどによる情報発信がさかんになって、CGM(消費者が生んだメディア)などと呼ばれるようになった。その一方で、新聞の衰退にともなって、ハイパーローカルなメディアが地域の報道を担い始めた。
アメリカでのこうした流れをたどってみると、日本のウェブで起こっていることがよりはっきり見えてくる。
シビック・ジャーナリズムは、必要とあれば市民がアクティヴな役割を果たし変化を起こす活動だったが、いまでは報道機関を介さずに行なわれている。こうしたことを象徴する日本での事件は、08年に起こった毎日新聞の英語サイトをめぐる出来事だろう。とんでもない性風俗が日本では一般化しているかのような記事が載っていたことから2ちゃんねるの既婚女性のスレッドなどで批判が始まり、広告主の企業に「電凸」が行なわれて広告掲載が見あわされるまでに拡大していった。
これと似たことはこの年の前半、韓国でも起こっていた。
米牛肉の輸入に激しい反発が起き、韓国の三大紙が「冷静な対応」を呼びかけたところ猛反発が起き、広告企業がターゲットになって掲載広告が激減した。
日本でも韓国でも、「報道機関をよそに」どころか報道機関がターゲットになって世論形成や実力行使が行なわれた。世の中を変える世論形成がマスメディアを経なくても可能であることが、ショッキングな形で実証された。
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(週刊アスキー「仮想報道」Vol.618)