« 「熟議の民主主義」は「クジ引き政治」に到りつく | トップページ | 「悪いことはしない」グーグルがなぜ非難されるのか? »

2012.06.12

グーグルがGメールをやめるときが来る?

新たな機能をどんどん増やし続けてきたグーグルが、
乱立を嫌って、「大掃除」をするようになってきた。
グーグル内部で何が起こっているのか。

●グーグルに対して感じ始めた漠然とした不安

 グーグルのウェブ・メール「Gメール」を使っている人は多いだろう。私も使っている。Gメールで送受信したメールはすべてグーグルのコンピューターに保存されているので、自分のパソコンにはメールをまったく保存しなくなった。最初のころは用心してメール・ソフトも使って保存していた。しかし、グーグルがクラウド・ビジネスに熱心でGメールの保存容量を拡大させていたこともあって、いつのまにかやめてしまった。メール・ソフトそのものももうほとんど使っていない。

 しかし昨年9月、そんなにグーグルまかせにしていいのかと少し不安を感じ始めた。グーグルが、「グーグル・デスクトップ」をやめてしまったからだ。

 グーグル・デスクトップというのは、パソコン内のデータやメールなどを横断検索できる機能で、2004年にサービスを始めている。これはたいへん便利で、私はずいぶん重宝していた。インストールすると、パソコン内のデータを集めて検索インデックスが作られる。あらかじめインデックスができているので、パソコン中を探しまわる検索とは比べものにならないぐらいに検索が速い。

 最近のウィンドウズ・パソコンも、パソコン内の検索については(不完全な検索でありながらとてつもなく時間がかかっていたときに比べれば)ずいぶんよくなってきた。しかしグーグル・デスクトップは、閲覧したウェブ・ページまで検索してくれる。つまり、「どこかのウェブ・ページで見たのだけれど、どこだったかな」などというときにもたちどころに探し出してくれるのだ。
 もちろんもういちどウェブ全体を検索することはできるが、自分が見たウェブ・ページの範囲で探したほうが、ずっと簡単に見つかる。

 さらに自分のパソコンがおかしくなったときにも助かった。
 グーグルが保存(キャッシュ)してくれていたデータから拾い出せたからだ。自分のパソコンのデータにグーグルにアクセスされるのはコワイという人には向かないが、自動バックアップしていてくれるわけだから、私にはとても便利なものに感じられた。

 グーグル・デスクトップをやめるといっても、新たにインデックスが作られなくなるものの保存してあるデータを捨ててしまうわけではないようだ。インストールしたパソコンではいまも検索できている。しかし、新たにインストールはできないので、パソコンを買い換えればそれまでだ。

「グーグル・デスクトップをやめる」という発表は、次々と新たなサービスを投入し拡大の一途に思われたグーグルがとうとう変わり始めたしるしのように思われた。
 グーグル・デスクトップをやめるのであれば、いつの日にかGメールだってやめるのではないか。そんな漠然とした不安にかられた。
 グーグルは永遠ではない――当たり前といえば当たり前の、そんなことも感じた。


●利用者第一から効率重視へ?
 

 グーグルは、グーグル・デスクトップの公式ブログで、サービスをやめる理由について、昨年9月2日にこう説明している。

 2004年来、何千万人もの人がグーグル・デスクトップを使ってきたが、この7年のあいだに利用者はオンラインのアプリケーションを使い、データもオンラインで保存するようになってきた。また、パソコン内の検索などもOSの機能として組みこまれるようになってきた。それでやめるのだという。

 グーグルは、パソコンでの作業をすべてオンラインで完結させる「クラウド化」の方向に驀進している。近い将来パソコンを立ち上げるとただちにネットにアクセスし、オンラインのアプリケーションですべての作業をするようになるというのがグーグルのヴィジョンだ。そのため、データをパソコン内に保存する必要はなくなると考えている。パソコン内の検索などは旧時代の遺物になるということで、さっさとやめてしまったわけだ。

 実際のところグーグル・デスクトップの機能はほかのサービスでカバーされるようになってきた(ウェブの履歴の全文検索も、じつはグーグルにログインして設定しておけばネット上で可能だ[関連サイト参照]――ということに、グーグル・デスクトップがなくなって、グーグルのサイトを探しまわって気がついた)。

 とはいえ、少なくともほとんどのパソコン・ユーザーはまだ自分のパソコン内にデータを置いているだろう。さっさとやめてしまったのは、グーグル内部の事情もあるようだ。

 グーグル全体の公式ブログも翌9月3日「秋の大掃除」と題し、これから数か月かけてグーグル・デスクトップを含めたいくつものサービスをやめることを明らかにした。そこでは、この「秋の大掃除」によって、ユーザーにはシンプルなものになり、グーグルの使い勝手が改善されるとユーザー視点の説明をしたあと、次のように書いている。

「より多くの資源をインパクトのある製品にまわすことができるということをこれは意味する。これらの製品にかかわっていたグーグルのスタッフをインパクトのある製品に移動させる」。

 人的資源や資金を「インパクトのある製品」に集中させるために、インパクトの乏しくなった製品は切るというわけだ。

 企業である以上、効率化を求めて製品の取捨選択をするのは当然だが、グーグルは、自分たちの金儲けよりもユーザー第一を謳って実行してきた。グーグル・デスクトップの中止は、自分のデータを無防備にグーグルにゆだねておいていいのかと考え始めたエポック・メーキングなできごととして、のちのち思い出すことになるような気がする。


●追う立場のグーグル内部で何が起きている?
 

 昨年来、ツイッターやフェイスブックばかりとりあげて、グーグルについてはこのところご無沙汰だった。

 グーグルはフェイスブックの激しい追撃にあい、形勢が逆転し始めた。またこれまで経営をになってきたエリック・シュミットが会長になり、創立者のラリー・ペイジがCEOになるという変化もあった。ネット・ベンチャーからネットの王者に駆けのぼり、さらにフェイスブックを追う立場になったグーグル内部でどんなことがあったのか。

 そんなことを思っていたら、昨年末タイムリーに、グーグルについて詳しくレポートした本が出た。グーグルに関するおもだった本はあらかた読んでいるものの、この本の著者スティーブン・レヴィは、長くニューズウィーク誌でIT関係のすぐれた記事を書き続けてきた記者だ(現在はワイアード誌に移っているそうだ)。
 日本語版のタイトルは『グーグル ネット覇者の真実――追われる立場から追う立場へ』で、フェイスブックを追う立場に変化していくグーグル内部で何があったのかという筆者の疑問にいかにも答えてくれそうだ。
 次回からはこの本を参考に、グーグル内部でどんなことがあったのかについて書いてみたい。

afterword
 
 グーグルがコスト削減のためもあって、サービスの整理をすることは以前にもあったが、そのときはさして不安を感じなかった。けれどもいまは、フェイスブックを追う立場になって、情勢は明らかに変わってきている。グーグルに何が起こっているのかを探って見るべき時期だろう。

関連サイト

●グーグル・デスクトップの中止を告げる昨年9月2日のグーグル・デスクトップ公式ブログの記事(http://googledesktop.blogspot.jp/2011/09/google-desktop-update.html
)。
●グーグル・デスクトップのほかグーグル・パックやノートブックなどをやめることを明らかにした昨年9月3日のグーグルの公式ブログの記事「秋の大掃除」(http://googleblog.blogspot.jp/2011/09/fall-spring-clean.html

●アクセスしたことのあるウェブ・ページを検索できる「ウェブ履歴」(http://www.google.com/history/
)。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.729)

« 「熟議の民主主義」は「クジ引き政治」に到りつく | トップページ | 「悪いことはしない」グーグルがなぜ非難されるのか? »

グーグル」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/56597/54878778

この記事へのトラックバック一覧です: グーグルがGメールをやめるときが来る?:

« 「熟議の民主主義」は「クジ引き政治」に到りつく | トップページ | 「悪いことはしない」グーグルがなぜ非難されるのか? »

2014年8月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31