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2012.03.01

死んでしまった人のコンテンツはどうなる?

ネット企業は、死んだ利用者のコンテンツをどうするかについて苦慮している。
今後ネット上の死者はますます増えていくわけだが‥‥

●年間110万人の利用者が死んでいる

 自分のコンテンツがどうあつかわれるかは、死んでいく人も気になるかもしれないが、死んでしまったらどうしようもない。遺言を残しでもすれば別だが、そうでなければ生きている人にお任せするしかない。生き残った人たちのほうは、解決しなければならない問題として突きつけられる。

 難問だが、幸いなことには、たいていはそうしょっちゅう向きあわなければならないことではない。しかし、サービス提供者はそうはいかない。「デザート・ニュース」の「ソーシャルメディアにおける死後の生」という記事によれば、1年間で110万人のソーシャルメディア利用者が死んでいっているそうだ。サービス提供者にとっては日常的な問題ということになる。
 ネット企業はどう対処しているのだろうか。

 ツイッターは、「亡くなられたユーザーに関するご連絡」というヘルプ・ページで、「ユーザーが亡くなられたというご連絡をいただいた場合、そのアカウントの削除または公開ツイートの保存」をすると書いている。連絡者の名前や連絡先、死んだユーザーとの関係、死んだ人のユーザー名またはプロフィールページへのリンクとともに、死亡記事や故人略伝へのリンクを送るように、とのことだ。

 ビジネス専門SNSのリンクトインはフォーマットを提供し、それに書きこんで送らせている。連絡者の所在や関係などをやはり書くことになっているが、死んだ人のメールアドレスの記入も必須になっている。メルアドを知っているかどうかでインチキな通報者をはじく踏み絵にしているのだろう。

 しかしいうまでもなく、メルアドを知っているぐらいではたいした踏み絵にはならない。
 対処に苦慮しているようすがよくわかって興味深いのは、グーグルのウェブ・メール「Gメール」だ。「故人のメールへのアクセス」というヘルプ・ページができている。

●死者のメールを見せるべきか見せないべきか

 グーグルがこういうヘルプ・ページを作っているのを見ると、「故人のメールを見たい」という要望が実際にあるのだろう。簡単に見せるわけにはいかないはずだが、「亡くなられた方に代わって、その方のメールアカウントの内容にアクセスする必要がある場合、ごくまれに故人の正式な代表者に対して提供できる場合があります」と、「ごくまれに」と牽制しながらも、絶対にダメというわけでもない姿勢を見せている。

「Googleでは、ユーザーの皆様からお寄せいただく信頼を強く認識し、Googleサービスをご使用のユーザーのプライバシー保護について責任を負います。故人のメールの内容を提供するかどうかは慎重な審査を経て決定されるもので、メールの内容の取得申請は処理に時間がかかります。GoogleがGmailアカウントの内容を提供できないことがあり、リクエストを送信したり必要な書類に提出したりしていただいても、Googleでサポートできない場合があることをあらかじめご理解ください」。

 これ以後もこんな調子で、見せるような見せないようなのアイマイな雰囲気を漂わせている。

 ともかく2段階の審査をするとのことで、パート1でも、請求者の身分証明書のコピーや故人の死亡診断書、故人から請求者に送信されたGmailのヘッダーと本文まで求めている。
 死亡診断書は、英語で書かれていない場合は専門の翻訳者による英訳、その英訳も「公証済みのもの」を添付しろとのことだ。大使館や領事館、公証役場などで英訳が正しいかどうかを証明してもらえというわけだ。国内では対応せず、米国本社であつかうということなのだろう。

 ここまででも日本人にはハードルが高いが、これはパート1にすぎない。第2段階が待っている。パート1の審査に通ったら次の手順を送るとのことだが、パート2では米国の裁判所命令などの法的手続きが必要になるという。どうもお金とヒマと根気がない人はあきらめたほうがよさそうだ。
 ヘルプ・ページはご丁寧にも、「ただし、これらの書類をお送りいただいてもGmailの内容を提供できるとは限らないので、パート1についてGoogleから連絡があるまでパート2を開始しないことをおすすめします」とダメ押しのように付け加えている。

 違う宛先の人にメールが送られてしまうという、やってはならないことをやってしまった携帯電話会社があったが、メール・サービスを提供している会社が第三者にメールを見せるのはやってはならないことだ。メールを見せてもらいたい人にはそれなりの事情があるにしても、グーグルが慎重になるのも無理はない。
 それならば思わせぶりなヘルプ・ページを作らなきゃいいのにと思うが、それでもできているのは、やはりこういう求めがあるからなのだろう。


●死んだウィキペディアンのメモリアル・ページ

 おもしろいことに英語版のウィキペディアにも、死んだウィキペディアンの扱いについてのガイドライン・ページができている。

 ウィキペディアは記事の執筆・編集をしてくれる熱心な利用者に支えられている。彼らウィキペディアンはウィキペディアのサイトでアカウントを作成し、利用者ページを作れる。ウィキペディアでの執筆などの業績も利用者名のもとに記録されるようになっている。
 一般にネット上のコンテンツの死後の扱いは、情報発信したものを削除するか保存するかの2通りあるわけだが、もちろんウィキペディアの記事は、書いた人が死んだからと言って消してしまうわけにはいかない。利用者個人のページやアカウントをどうするかがこのガイドラインの趣旨だ。

 ほんとうに死んだかどうかについては、できれば複数の方法でチェックする必要があるなどと書かれているが、その具体的手順は書かれていない。死んだ利用者のページが荒らされないように保護することと、家族が拒否しなければ死んだことを冒頭に注記するという2つの措置をとることが書かれている。

 アカウントは、死んだウィキペディアンへの敬意の証しとして原則的には残される。ただし、いろいろな問題にぶつかってきたネット百科らしく、ウィキペディア自身に手痛いダメージがある場合は別だとわざわざ書いている。
 どういうことかすぐにはピンと来ないが、名誉毀損のような法律に触れることが利用者ページに書かれているケースなどを想定しているのだろう。
 おもしろいことに死んだウィキペディアンのメモリアル・ページもできている。日本語版にはないようだが、英語版のウィキペディアのメモリアル・ページには、05年に死んだというフランス人らしき人物を筆頭に、死んだウィキペディアンがずらっと並んでいる。


afterword

案の定というか、利用者が死んだ場合にどうするかについて、ヘルプ・ページやオフィシャル・ブログでもっとも詳しくあつかっているのはフェイスブックだった。次回はフェイスブックについて。


関連サイト

●ツイッターのヘルプ・ページ「亡くなられたユーザーに関するご連絡」(http://support.twitter.com/articles/489599-)。
●グーグルのヘルプ・ページ「故人のメールへのアクセス」(
http://support.google.com/mail/bin/answer.py?hl=ja&answer=14300)。
●ウィキペディアの「死んだウィキペディアン」のガイドライン(
http://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Deceased_Wikipedians/Guidelines)。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.715)
(この原稿を実際に書いたのは数週間前です)

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