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2012.01.16

フェイスブックのCEOザッカーバーグの暴かれた過去

フェイスブックの創立者ザッカーバーグが、
利用者をバカな奴らだとあざ笑っていたメッセージが暴かれた。
自分は大きく変わったと言うが、ほんとうに変わったのか。

●ウェブ3.0

 フェイスブックによって実名化が進行している。ブログが普及して多くのひとが情報を発信し、それは「ウェブ2.0」と呼ばれたが、フェイスブックが引き 起こしつつある変化はウェブ3.0と呼ぶのにふさわしい。実名化によってリアルな世界とバーチャルな世界が結びつけば、ネット外の世界の革命も引き起こす。

 世界8億人の利用者を得て大革命を仕掛けているのは、まだ27歳のフェイスブックのCEOザッカーバーグだ。そんな年齢の若者に世界の運命をゆだねて大丈夫なのかと不安をかきたてる事件も、これから書くように起こっている。しかし、「情報を共有するのはいいことだ」と感覚的にわかっているのは若い世代だ というのが彼の考えだ。情報の透明性の向上には老若問わず賛成しそうだが、個人情報についてこうした原理を貫徹しようとすれば、実際のところ若い利用者からも反発は起こる。
 そしてまた2010年5月には、当のザッカーバーグ自身が、透明性の高さによって苦い思いをさせられる事件も起こっている。


●ネットはこわい‥‥


 ハーバード大学2年生のときのザッカーバーグのメッセンジャーでの友人とのやりとりが暴露されたのだ。

ザッカーバーグ「ハーバードの誰かの情報が欲しければ言ってくれ。4000以上のメールや写真、アドレス、SNSを持っているから」
友人「何だって? どうやって手に入れたんだ?」
ザッカーバーグ「送ってきたんだよ。なぜかね。『オレを信用している』んじゃないか。まったくバカな奴らだ」

 フェイスブックを立ち上げたばかりの7年ほど前のやりとりだ。フェイスブックで個人情報を提供した利用者を「バカな奴ら」とあざ笑った。ネットはこわい。若いころの軽薄なやりとりが今頃になってメディアの手に渡ってしまったわけだ。
 こうしたことは繰り返しこれからも起こるだろう。
 後で言い逃れできない実名サイトという恐るべきものを広めた張本人は、ほかの誰よりもその恐さを思い知るべきなのかもしれない。

 このやりとりを暴露したのは米ビジネス・インサイダーだった。
 フェイスブック側は当初、言いがかりは相手にしないとばかりに次のようなことを言って「大 人の対応」をしてみせた。

「利用者の情報のプライバシーはわれわれにとってきわめて重要である。匿名の情報や、マーク[ザッカーバーグ]やフェイスブック のプライバシーに対する見方を特徴づけようとする主張について議論するつもりはない」。

 ところが9月になってザッカーバーグは、ニューヨーカー誌のインタヴューでメッセンジャーのこのやりとりを認め、「とても悔やんでいる」と告白した。 「もし影響力があり、多くのひとが頼りにするサービスを作ろうとしたら大人である必要がある。そういうことだよね?」そして次のように付け加える。

「ぼく は成長して、ずいぶんいろんなことを学んだと思う」。

 それに対してニューヨーカーはこう書いている。

「大学2年生のときのザッカーバーグでいまの彼を判断すべきではない。しかし彼は、こういう目にあうことはわかっている。『ソーシャル・ネットワーク』の映画が封切られるので、こうしたことが間違いなく続くとわかっている」。

 日本で昨年前半に封切られたこの映画は、女子学生に振られた腹いせにザッカーバーグがサイトを作ったとか、SNSを作るのを頼まれた学生にいい加減な対応をしたばかりかそのアイデアを盗んだ可能性さえあることなどが示唆されている。
 この映画は、日本など「フェイスブック後進国」で認知度を上げるのには役立ったが、こんなやつらが作ったサイトで大丈夫なのかという不安感も掻きたてた。そういう意味では、モロ刃の剣の映画だった。
 ザッカーバーグが「若気のいたり」を認めたのは映画の公開の前月だった。否定しきれないことは素直に認めて、以前の自分といまの自分は違うと主張することに戦略を改めたのだろう。


●ザッカーバーグは変わったのか?

「7年ぐらいで人間がそんなに変わるものか」と思ったりもするが、「7年で自分は大きく変わった」とザッカーバーグが思うのは不思議ではない。

 前に、パーティとドラッグに明け暮れ、頭のなかは異性のことばかりというセレブの子弟たちが通うニューヨークの高校を舞台にした「ゴシップガール」とい うアメリカのドラマをとりあげた。こうした高校生たちにフェイスブックのような仕組みを投げこむとどうなるかと書いたが、19歳のザッカーバーグもそんな 感じの若者からそれほど隔たってはいなかったはずだ。
「女の子に好かれたい」とか「大学で認められたい」といったことでフェイスブックを作ったという映画の解釈に対して、ザッカーバーグは、「ものを作るのが 好きで作る人間がいることをわかっていない」と批判した。その言葉もまたウソではないにしても、19歳の若者の頭の中にはいろいろな考えや「妄想」が交錯 していただろう。

 問題は、かつての彼といまの彼がどれぐらい違うのかということだ。以前の彼のままならば、フェイスブックに個人情報をゆだねるのは不安になる。
 カークパトリックの『フェイスブック』は、ザッカーバーグとフェイスブックを理解するための一級資料だが、それを読むとこの7年のあいだに彼がいかに多くのすぐれた人をメンター(
)として学んできたかに驚かされる。
 アメリカで広く使われているネット決済システム「ペイパル」の創立者ピーター・シールは、フェイスブックの最初の投資家で現取締役だ。音楽共有ソフトの 存在を広く認識させたナップスターの創立者ショーン・パーカーは、いいことも悪いことも教える先輩で、名うてのベンチャー・キャピタルたちのあつかい方を 教えた。それ以後も、ハーバードの先輩でもあるビル・ゲイツ(中退したことも同じだ)、ブラウザを作ったマーク・アンドリーセンといったITの最先端を生 きてきた人びとはもとより、ワシントン・ポストのオーナー、ドン・グラハムのような既存メディアの人間にも私淑して多くのことを学んでいる。

 グーグル、ヤフーをはじめフェイスブックを買収したいと言った企業は多く、ザッカーバーグは、売却する気はなかったものの、幹部が出てきたときには会ったようだ。少し前まで雲の上の人びとだったIT企業の幹部たちに対する好奇心と、自分の勉強のために会ったのだろう。
 フェイスブックを立ち上げてわずか半年後、夏休みになったこともあって早々にシリコン・バレーに移ったことも、ザッカーバーグのオ ン・ザ・ジョブ・トレーニングにはよかったようだ。しかし、そうした成長ぶりを除いても残る懸念は、冒頭に書いた彼の情報の透明性についての信念だ。
 「大人になった」ザッカーバーグが何を考えているのか。次回はそれに焦点を当ててみよう。

aferword
 
米ヤフーの前CEOテリー・セメルは、10億ドルでフェイスブックを買収しようとしたものの、ザッカーバーグは、「フェイスブックは自分のベイビーなの で、自分で経営したい。育てていきたいんだ」と言って断わった、10億ドルを断わったやつは見たことがないとニューヨーカーの記事で証言している。


関連サイト
 
●ビジネス・インサイダーの暴露記事「このインターネット・メッセンジャーの文章はフェイスブックのプライバシー問題の助けにはならない」(Well, These New Zuckerberg IMs Won't Help Facebook's Privacy Problems)」(http://articles.businessinsider.com/2010-05-13/tech/30034517_1_instant-personalization-privacy-flap-privacy-policy)
●ニューヨーカーの記事「フェイスブックの顔(The Face of Facebook)」(http://www.newyorker.com/reporting/2010/09/20/100920fa_fact_vargas?currentPage=all)。「ぼくは成長して、ずいぶんいろいろなことを学んだと思う」という言葉 はウソではないだろう。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.709)

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