フェイスブックの「バーチャルと現実世界の融合」
フェイスブックの今年の開発者向けイベントは、
SF映画もどきの発表だった。
人生が簡潔に表示され、
友人・知人がいま何をしているかまでわかるという。
●フェイスブックのプラットホーム化の歴史
フェイスブックの「いいね!」ボタンをウェブのあちこちで見るようになってずいぶん経つ気がするが、まだ1年半らしい。
さまざまなサイトに設置されている「いいね!」ボタンなどは「ソーシャル・プラグイン」と名づけられているが、昨年4月に発表された。
Windowsがパソコンのプラットホームになったように、フェイスブックは、インターネットのプラットホームになることを目指しており、着実に地歩を固めている。
フェイスブックがプラットホームという言葉を使い始めたのは07年のことだ。「フェイスブック・プラットホーム」と名づけて、フェイスブック上で外部制作者のアプリを動かせるようにした。
フェイスブックは毎年「f8」という開発者向けイベントを開いているが、初回の07年には「ソーシャル・グラフ」というコンセプトも打ち出した。CEOのザッカーバーグによれば、これは「世界中の人のすべての関係を表すコンセプト」とのことだった。
08年12月には「フェイスブック・コネクト」を導入した。フェイスブックのアカウントでログインし、フェイスブックと他サイトや他のアプリの個人情報が統合できるようになった。
09年4月には、フェイスブックの情報(ストリーム)を他サイトで読めるようにして、フェイスブックのサイトにログインしなくてもフェイスブックが使えようになった。
さらにそれから1年後の昨年のf8では、ソーシャル・プラグインやオープングラフを発表し、あらゆるサイトが簡単にフェイスブックと融合できるようになった。
このようにフェイスブックは、会員登録してログインするという「壁」は残しつつ、サイト外の世界と浸透しあえる仕組みを整えてきた。
今年9月のf8ではこうした動きをさらに進め、また新たな一歩を踏み出そうとしている。
この「新たな一歩」をひと言で言えば、これから書くように「現実世界との融合」ということになる。
●SF映画のようなフェイスブックのプレゼン
ネットの情報と現実世界を融合させる試みは、フェイスブックの最大のライバル、グーグルが早くから始めていた。
グーグルはその使命について、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」と言ってきた。「ネット上の情報」ではなくて、「世界中の情報」といったことの意味は、地図検索を始めたときに実感された。
地図は現実世界の地理情報を集約したツールである。それをネットで検索し自由に使えるようにすることは、バーチャルとリアル世界をトータルにあつかうための第一歩だった。その後グーグルは、大きな大学図書館などの蔵書をそっくり電子化し、検索できるようにするプロジェクトも始めたが、これもまた、リアル世界の情報が凝縮されている書物をバーチャル世界と融合させる試みだった。
フェイスブックが踏み出そうとしている「現実世界との融合」について、ザッカーバーグは今年のf8で次のように説明している。
「昨年はオープングラフというコンセプトを打ち出しました。関係を表すマップだけではなく、世界のあらゆるつながりを示すマップという意味です。最初のステップとして、マップに何でも追加し『いいね!』をクリックすることでつながることができるようにしました。これまでにない規模でつながりが構築されました。
今年、僕らは次のステップへと進みます。あらゆるところであらゆるものにあらゆる方法でつながることが可能になります。
これからは、本に対して『いいね!』する必要はありません。たんに読めばいいのです。おそらく皆さんはフェイスブックで『いいね』するよりも10倍の本を読んでいるはずです。
映画だって『いいね』する必要はありません。おそらく皆さんはフェイスブックで『いいね』するよりも10倍の映画を見ているはずです。
ただ何かを食べる、トレッキングに行く、音楽を聴く。それだけで、あらゆるものとさまざまな方法でつながることができ、これによりこれまでにない規模でつながりが広がっていくのです」。
見たり聞いたりしたりしたことがただちにフェイスブックに記録され、友人・知人にその行動が伝わる。現実世界での行動がデジタル情報になって記録され共有される。
今年のf8はネットで見ることができるが、映像を交えたそのスピーチを見ると、SF映画のシーンのような気がしてくる。
●人生を集約して表示するフェイスブック
具体的にどうすれば何でも記録してその情報を共有できるのかについて、ザッカーバーグはこう説明している。
「Nike+というナイキのランニングアプリを使えば、自分が走ったいちばん長い距離はどれだとか、誰と一緒に走ったとか、走った場所もわかる。このアプリがレポートしてくれます。
使い方はとても簡単で、ポケットから携帯をとりだし、ランニングに出かけると知らせます。誰と一緒に行くかも追加します。起動すると、アプリがGPSを使って残りを処理してくれます。どこで走ったか、ペースはどうだったか、どれだけの距離を走ったかを記録してくれます。こうした情報がすべて追加され、月末にはそれらをまとめたレポートを入手できます。『タイムラインに追加』をクリックするだけで使えるようになります。
ぼくは毎日食べているものもタイムラインに追加したいと思っています。そのためにFoodspottingを使っています。ここでおいしかった食べものや発見した食べものなどを追加できます。携帯をポケットからとりだしてアプリを開き、情報を入力します。写真を撮ることもできます。アプリがおもしろい情報を集約して毎月レポートしてくれます」。
「タイムライン」も今年のf8で発表された。
これまでフェイスブック上の古い情報は、画面をどんどんスクロールしていかなければ見ることができなかった。しかしタイムラインは、人生における重要な情報をコンパクトにまとめて表示してくれる。初めて会う人でもその人のタイムラインを見れば、「おぎゃー」と生まれたとき以来の情報を(その人がフェイスブックにアップしていればだが)見ることができ、どんな人だかわかる。
音楽アプリや動画アプリ、Nike+やFoodspottingを追加すれば、音楽についてのタイムライン、動画視聴についてのタイムライン、ランニングについてのタイムライン、料理についてのタイムラインができる。
フェイスブックのタイムラインを通してその人の人生がわかるし、いま何をしているかもわかる。フェイスブックの「現実世界との融合」はこうして進んでいく。
afterword
次回も、「f8」でのザッカーバーグの言葉を通して、フェイスブックがどういう方向に向かっているのかを見てみたい。
関連サイト
●今年のフェイスブックの開発者向けイベント「f8」(http://www.facebook.com/f8?sk=app_283743208319386)。冒頭は、ザッカーバーグのそっくりさん(?)のジョークで、7分過ぎにザッカーバーグが登場する。日本語の字幕も表示できる。
●「Nike+」のサイト(http://nikerunning.nike.com/nikeos/p/nikeplus/ja_JP/)。
(週刊アスキー「仮想報道」Vol.707)
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