フェイスブックがグーグルの脅威である理由
フェイスブックは、情報過剰時代に適合しているプラットフォームだ。
そのことが、グーグルの大きな脅威になっている。
●明かされたフェイスブックの価値基準「エッジランク」
フェイスブックはきわめてわかりにくいと以前書いたが、「わかりにくい」のではなくて、じつは「わからない」のだ。フェイスブックのプログラムが判断して決めているからだ。
たいていのソフトは最初はむずかしくても、しばらく使っているうちにわかってくる。しかし、フェイスブックの場合は、フェイスブックの機能を使っておこなった行動が、友達のページなど他人のページ(「ニュースフィード」)にも反映される。自分の関知しないところで反応が起こっている。
「知らないところで起こっているから気にならない」という人もいるかもしれないが、「起こっているらしい」と知ってしまうと、コワくなってこないか。
こんな具合なのによく世界最大のSNSにまでなったものだ。
フェイスブックは04年に生まれたが、当初は大学のメールアドレスが必要で、大学ごとに参加できるようになっていた。誰でも登録できるようになったのは06年9月末からだ。そして09年春にはマイスペースを抜いて世界最大のSNSになっている。
「フェイスブックのプログラムが判断している」と書いたが、昨年春までは、自分の情報発信や「いいね!」ボタンを押すといったネットでの行動が友だちなどのニュースフィードのページにどう表示されるのかについて具体的な説明がなかったらしい。
アルゴリズムを説明したのは昨年のイベントの講演で、フェイスブックのエンジニアによれば、利用者の情報発信を次の3つの視点で「スコア」に換算し、ニュースフィードに表示するかどうかを決めているという。
①情報発信者と利用者の親密度。メッセージを送受信したり、プロフィールを見たり、コメントをしたりといった行動の有無で親密度をはかる。
②重み付け。その情報発信がコメントなのか、「いいね!」ボタンのクリックなのか、あるいはコンテンツの作成かなどによってスコアが異なる。「いいね!」ボタンのクリックよりもコメントのほうが点が高いらしい。
③時間。コメントや「いいね!」など反応があってからの時間が経っていないほうが点が高い。
この3つのポイントを掛け合わせてスコアをはじき出し、表示の優先度を決めているという。つまり、情報を発信しても、スコアが低ければ、友達も含めたほかの人のページに表示されないわけだ。
この格付けを、フェイスブックは「エッジランク」と呼んでいる。「エッジ」には端っこという意味もあるが、「エッジが効く」などといった具合にも使われる。「鋭さ」とか「勢い」といった意味もある。情報の力を決めるのが「エッジランク」ということなのだろう。
●グーグルを超えて
グーグルは、検索結果でウェブ・ページを並べる順位付けの仕組みを「ページランク」と名づけた。「エッジランク」は、それを思い起こさせる名称だ。
グーグルのページランクでは、どれぐらい重要なサイトからいくつリンクされているのか、つまりリンク元のページの重要度とリンクの数を掛け合わせて、検索結果の順位を決めている。
グーグル以前、検索結果の順番は検索キーワードがそのページで何回使われているかなど、それぞれのページの内容で決まっていた。しかしそれでは、サイトを作っている人間が操作しやすい。ほかのサイトからのリンクならばそうしたことはむずかしくなると、グーグルはこの新たな手法を採用し、検索の世界に革命を起こした。
しかし敵もさるもの、リンクを操作する企業が現われた。
私も「ブログにリンクを張ってくれないか」というメールをもらったことがある。承諾すると、ブログの一番下などにずらっといろいろなサイトへのリンクが並ぶ。それらのリンクがクリックされた場合には一定の割合でお金を払うとのことだった。こうやって協力してくれるサイトを獲得して、顧客企業のサイトへリンクを張ってもらい、検索結果の順位をあげようとしているわけだ。
この申し出は断わったが、おそらくグーグルも、こうした行為をスパムと見なす防御措置をとっている。とはいえ、イタチごっこが続いている。
「エッジランク」に対しても、昨年春のフェイスブックの「種明かし」以後、ネット・マーケティング会社が熱心に戦略を練っている。
しかし、エッジランクを上げるためにやれることには限度がある。魅力的な情報発信をし、利用者のコメントなどに積極的に反応して交流を増やし、「親密度」を増すしかないだろう。
私がたまたま見たアメリカのマーケティング会社のレポートでは、仕事が忙しい午前10時から午後4時をはずし、業種によって異なるものの週後半、とくに木曜日に情報発信するのがいいなどと勧めていた。ネット・ユーザーの気持ちに余裕があって、コメントなどのリアクションをしてもらいやすい曜日や時間帯を選んで情報発信することを勧めているわけだ。
これにはたしかにそれなりの効果はあるかもしれないが、やれることはそれぐらいだろう。
●情報過剰時代のプラットフォーム
「エッジランク」がもうひとつ興味深いのは、情報が豊富というより過剰になっている時代にフィットしたものになっているという点だ。
最初に書いたように、フェイスブック・ページの「いいね!」ボタンを押してファンになってくれた人のページにも、自分の発信情報が表示されるとはかぎらない。また友達の情報発信も自分のページに表示されるとはかぎらない。親密度やウェイトといった観点から見て重要度が低いと判断されれば表示されない。
フェイスブックにそういう判断を勝手にされてしまうことに私は不安を感じるのだが、これだけ情報が行き交っているのであれば、たとえ友達の情報発信でも「全部は見ていられないよ」ということはたしかにある。「フェイスブックのほうで情報をセレクトしてくれればこれ幸い」というのが、情報氾濫時代のせちがらい現実かもしれない。
ツイッターでも、タイムラインから情報がどんどん消えていき、見ない情報も多い。しかし、重要な情報は誰かがまたリツイートしてくれるから消えてもかまわない。このように情報が取捨選択されるようになってきた。フェイスブックもまた、フェイスブックのプログラムによって情報が選択されている。
こうした考えは、できればある情報を全部見たいと思っている私のような人間には抵抗を感じる仕組みだが(もちろん実際には無理ではあるのだが)、アルゴリズムのほうで適当に取捨選択して表示してくれるのであれば、わざわざ検索して情報を探す必要はない。グーグルなんていらない(というか、あまり検索しなくなる)というのはきわめてありそうなことだ。グーグルがフェイスブックを脅威に感じるのは当然だ。
afterword
CEOのザッカーバーグは、フェイスブックはプラットホームになると言っているそうだ。実際アメリカのようにネット人口の4分の3ほどが利用者になっていれば、ネット情報摂取のプラットホームになってもおかしくはない。マイクロソフトがフェイスブックの株主になって関係作りに成功しているから、グーグルにとってはいよいよ脅威だ。
関連サイト
フェイスブックのアルゴリズムの種明かしをした昨年のf8デベロッパ・カンファレンス(
http://apps.facebook.com/feightlive/)。キーノート・スピーチは創立者でCEOのザッカーバーグだが、「セッション」で開発者のアリ・スタインバーグが明かした。そのとき使われた「エッジランク」の説明スライド。
(週刊アスキー「仮想報道」Vol.701)
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