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2011.10.31

フェイスブックは日本で普及するのか?

日本はフェイスブックがトップSNSでない数少ない国だ。
CEOのザッカーバーグは、日本攻略に自信を持っているが、
ほんとうに実現するのか?

●巧妙なフェイスブックの日本戦略

 フェイスブックがソーシャル・ネットワークのトップでない国はもう少なくなった。アクセスをそもそも規制している中国などは別格としても、韓国、ロシ ア、ブラジルと日本ぐらいらしい。その日本でかならず指摘されるのは、実名登録が原則というフェイスブックの特徴だ。匿名志向の強い日本では普及しないと いうわけだ。
 実名登録させたうえに顔写真まで載せさせ、詳しいプロフィールも入力させる。誰だかはっきりわかるからこそ逆に安全なのだというフェイスブックの言い分には一理あると思うが、そうした理屈で、匿名志向の強い日本のネットの「壁」を超えられるかどうか。

 しかし、フェイスブックもさるもの、うまい手を打ち出した。
「コネクション・サーチ」という機能だ。「就職活動や仕事上つながりになると有用と思われる人を検索することができ」るという。大学や出身地が同じ自分の 志望企業に務めるOB・OGたちをフェイスブックで見つけてコンタクトし、就職につなげられるというわけだ。さしあたりこれは日本の利用者だけが使える検 索なのだそうだ。
 詳細なプロフィールを入力させる「面倒さ」を逆手にとって、就職難に苦しんでいる学生たちのもっとも切実な欲求に応えてみせた。就職につながるなら、学生たちは実名登録するリスクをとるかもしれない。フェイスブックの日本攻略の戦術を練っている人物はかなりの知恵者だ。

 この戦略はけっこうあたるのではないかと私は思う。
 アメリカでもフェイスブックは、大学生から出発した。日本でも就職が気になる大学生から広めていくというのは巧みな戦略だ。

 フェイスブックの創立者でCEOのザッカーバーグは、ナンバー1のSNSになっていない日本などの国も、3年から5年のあいだには攻略できると昨年6月 に「予言」した。国内の利用者間のつながりが外国の利用者とのつながりを上まわったときに変化が起こる。これまでの経験則からそうしたことが言えるのだそ うだ。日本はその境を超えた。グローバル展開に成功してきただけに発言に重みがある。

 こうした発言を聞いて、けっこうじっくり構えているんだなと思った。すぐに普及するなどと甘いことを考えていないことにも現実味が感じられる。
 とはいえ、それからもう1年以上経ったので、彼の予言どおりならば、早ければさ来年、遅くても2015年までには日本でもトップになるというわけだ。


●「いいね!」ボタンの問題
 

 私がフェイスブックについてまず抵抗を感じたのは、「いいね!」ボタンだ。

 フェイスブックのサイトではもちろん、いまやウェブ中に「いいね!」ボタンが設置されている。フェイスブックのもっとも基本的な機能のひとつだ。

 このボタンは、「いい」と思ったときにクリックするわけだが、これをクリックすると、フェイスブックの自分のページ(「ニュースフィード」)にそのボタ ンを設置したサイトの情報が送られてくる(こともある)。つまり、そのサイトの情報が欲しければ「いい」と言わざるをえない。かならずしも「いい」とは 思っていないけど、そのサイトの情報が欲しい場合にはどうしたらいいのだろう。

 フェイスブック側もこうしたことはわかっているようだ。
 ジャーナリストが自分の個人ページとは別に仕事用ページを作ることができるメリットについて、ジャーナリスト向けページで次のように説明している(企業ページやこうした公的な仕事用ページは個人ページと区別するために「フェイスブック・ページ」と呼ばれている)。

「政治記者は、さまざまな党の候補者の情報が欲しいが、自分のプロフィールを使って候補者のページを『いい』と言うのは困る。あなたのパブリックなページ で『いい』と言うことで、あなた個人のアイデンティティと職業上のアイデンティティをもっとはっきりと分けることができ、『いい』と言うのは仕事上の行為 で個人的に認めるわけではないとほかの利用者たちに理解させられる」。

 一見もっともらしいが、奇妙な理屈だ。
「いい」と言うことの意味は、公的ページでも私的ページでも変わらない。むしろジャーナリストの仕事として特定の候補者を「いい」と言ってしまうことのほうが意味は重いのではないか。

 論理は通っていないが、「いい」という大ざっぱな感情表明には問題があることを、フェイスブックも認識はしているということなのだろう。

 こうしたことはジャーナリストでなくてもあらゆる人にとって問題になりうる。
 会社勤めしていれば、敵対する企業グループの情報が欲しい。しかし、「いい」と宣伝するわけにはいかない。こういったことはつねに起こってくる。
「いい」と思うだけでなく、「ちょっとおもしろい」とかいろいろなニュアンスのボタンがあればもっと使いやすいのではないかと思うが、「いいね(英語ではLike)」と単純化してしまうところがいかにもアメリカ的だ。私はまずそこからして引っかかりを感じてしまった。

●よくこんなややこしいSNSがヒットしたものだ‥‥
 

 さらにもうひとつフェイスブックに感じる違和感は、「とてつもなくややこしい」ということだ。

 個人ページと公的なページの2種類あると書いたが、さまざまな情報が表示される自分のページには「ウォール」と「ニュース・フィード」の2種類(以上)ある。そのニュースフィードも「ハイライト」と「最新情報」の2種類の表示が切り替えられるようになっている。
 いずれもフェイスブックでは基本的な機能だが、使っている人たちも、それらがそれぞれどう違うのか正確に説明できる人は少ないのではないか。さらに、 「いいね!」とか「シェア」、コメントといったほかの人の情報発信に対してリアクションした場合、自分のはともかく友達のページにどう表示されるかまで正確にわかっている人はもっと少ないだろう。

 ネットでたまたま見たソーシャル・メディア支援企業のフェイスブック解説ページはじつにわかりやすく書かれていて、「わかってしまえばそれほど難しいわけではない」と前振りしていたが、いつどう表示されるかは「わからない」と正直に書いている。
 なぜ「わからない」かというと、フェイスブックのプログラムが決めているからだ。利用者には「わからない」のだ。

 よくこんなサービスが広まったものだと私が驚く最大のポイントはこの点なのだが、残念ながらページが尽きてしまった。それについては次回あらためて。

afterword

自分の好き嫌いはともかく、いまは明らかにソーシャル・メディアの時代だということは認めざるをえない。強力なセルフ・マーケティングの機能を持っていてネットのプラットフォームをめざしているフェイスブックが「ウェブの未来」であるのも確かなようだ。

関連サイト
●ここ6か月のフェイスブックの日本での普及度(socialbakersより)。6か月で1.5倍以上増加し、500万人を超えた。(http://www.socialbakers.com/facebook-statistics/japan)
●仏カンヌの広告フェスティバルで2010年のメディア・パーソンに選ばれて話をするフェイスブックの創立者でCEOのザッカーバーグ(http://www.canneslions.com/lions/videos.cfm?media_id=1070)。

追記
このブログ記事はほかの原稿同様、雑誌原稿なので少し前で、私の書いた不満点にたいする改善が行なわれ始めたようだ。不満に思う人はやはり多かったのだろう。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.700)

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