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2011.07.13

すぐれたツイッター地震速報は可能か

ツイッター地震速報の試みはすでにやられてるいるが、
その問題点はどこにあるのか。
また、デマを検知することはできないものだろうか。

●ツイッターのウソ感知の仕組み

 ツイッターでつい最近も有料化されるというデマが広がっていたが、大震災のときも、犯罪や放射能などの誤った情報が行き交った。
 大災害のときに怪情報が出まわるのはいつものようで、昨年2月末のチリ大地震のときも、略奪が起こっている、誰々が死んだ、何々が破壊された、噴火が起こる等々、根も葉もないウワサが飛び交った。

 チリ地震後の4日間、震災に触れた72万人のツイッター利用者473万のつぶやきを分析して、ウソを見分けられるかどうかを調べた研究がある。
 ツイッターで伝えられたほんとうの話とたんなるウワサを7つずつ抽出して調べたところ、ほんとの情報(下のグラフの黒棒)は肯定的なつぶやきが多いのに対し、ウソの情報(灰色の棒)は、疑問に思っているつぶやきや否定しているつぶやきが多い。ほんとうの話は96パーセントのつぶやきが肯定的に受けとり、否定しているつぶやきは0・4パーセントしかなかった。
 ところが根拠のないウワサは、肯定しているつぶやきがぐっと減って45パーセントしかない。38パーセントのつぶやきは否定していて、疑問を呈しているつぶやきも17パーセントあった。
 ツイッターのコミュニティが集団的なフィルターの働きをしていて、つぶやきを集めて分析すればウソを感知することができると指摘している。

Photo_5

「あなたのいま読んでいる情報を多くの人が疑っています」などと警告する仕組みをツイッターのようなマイクロブログは作るべきではないかと提案している。たしかにこうした仕組みがあれば、どれぐらい信用していいか心の準備をしながらツイッター情報に接することができる。

 ツイッター情報の真偽を判別する仕組みを作る試みはほかにもいろいろやられている。
 ツイッターで情報をやりとりしているようすを図で一見してわかるようにして、ふたつのアカウントを操り多くの人が話題にしているように見せかけているインチキを暴いたり、転送だけしている怪しげな利用者を見つけたりしたインディアナ大学研究者のサイトなどもできている(下のTruthy)。

 こうした仕組みが進化し使われるようになれば、ツイッターの怪情報に翻弄されることは少なくなるかもしれない。

●ツイッターによる地震速報

 ツイッター情報を集めて地震をいち早く知らせるということを最初にやったのは、08年5月の中国四川省の地震のときに現地のツイッターに気づいたロバート・スコブルというブロガーだとされているが、米地震学会誌の「電子地震学者」というコーナーに掲載された論文では、地震後どれぐらいの時間差でツイッター情報が出たかを調べている。

 09年3月のカリフォルニアのモーガン・ヒル地震では、19秒後に地震を知らせるツイートが出たのに対し、地震速報を出している公的機関「北カリフォルニア地震ネットワーク(NCSN)」が情報を出したのは22秒後だったという。3秒ツイッターに負けている。NCSNは震源を知らせるだけなので、これでももっとも速い地震速報なのだそうだ。通常はマグニチュードがわかってから報じるためにもっと遅くなり、地震の位置と大きさにもよるが1・5分から20分もかかっているという。
 ツイッターは送信に5秒ぐらいかかるそうだが、地震情報はツイッターのほうが速いというのは少なくともアメリカについてはほんとうのようだ。

 日本でもこのところの地震で、民放のテレビなどで「あっ、揺れています」とアナウンサーが叫んだあと突然CMになって、あっけにとられるということが何度もあった。気象庁から情報がないので待つあいだにCMを流しているわけだが、そのあいだにツイッターなどでは「地震が来た」という情報であふれている。これらのツイッター情報を瞬時に集めて分析できれば、気象庁の地震速報にまさる仕組みができる。

 こうしたことは日本でもすでに試みられ始めているが、この研究でもツイッター地震情報を地図上に表示するということをやっている。ツイッターでは位置情報を付加してツイートできるのでマッピングに都合がいい。
 地震が大きいほどツイッターによる地震情報の発信が活発になるということがもし言えれば、つぶやきの数だけで震度の大きさまでわかるツイッター地震速報ができる。実際カリフォルニアの地震では、60秒後までにどれぐらいのつぶやきがあったかを地図表示して、どの地域で揺れ、もっとも揺れたのはどこかをつかめることが実証された。公的な機関が地震マップを作成できたのは6分後なので、ツイッター地震情報地図の優位は明らかだった。

 ただいつもこううまくいくとは限らないことも、この研究者たちは認めている。ツイッターによる情報発信の多い少ないは、揺れの大小にいつも比例するわけではない。揺れの大きさに関係なく、人口の多いところは情報発信が多くなると考えられる。地域の人口にも左右されるのだ。

 またほんとうに大きな地震が来れば、身の安全をはかるのに忙しくてつぶいていたりはしないんじゃないかと推測している。
 しかし、この点はどうだろう。誰かとつながっていたくて、恐いときほどツイッターを使ってしまうということはいかにもありそうだ。スマートフォンでツイッター利用が広がれば広がるほど、机の下に隠れて揺られながら「この地震は大きいよ。まだ揺れている!」などとつぶやく人が多そうな気がする。

●大事件のときにツイッター・デビューすると定着する

 興味深いことに、大事件のときのツイッターの情報発信は、通常と異なった傾向があることを示す論文も出ている。

 08年夏のアメリカの党大会やハリケーンに関するツイートは、これらのイベントに触れていないツイートのサンプリング調査と比べて、返信のツイートが減り(約7割減)、URL付きのツイートの割合は1・5倍から2倍ほど増えていた。また全体平均ではURLが付いているのは25パーセントほどなのに、党大会に関するツイートでは約4割、ハリケーンに関するツイートはさらに多くて約5割のツイートがURL付きだった。大事件のときには、リンクを使って有意義な情報を伝えようとする意識が働くからではないかと推測している。そのできごとが重大であればあるほどこうした傾向が顕著になるという結果だった。

 さらに、大事件がきっかけでツイッターを使い始めた人は定着する割合が高いこともわかった。
 党大会やハリケーンに関するツイートをした新規利用者のうち4か月後に週平均1回以上発信し続けているアクティヴ・ユーザーは、同時期の全体平均16パーセントの倍から3倍以上もいた。オバマが選ばれた民主党大会について書くことで「ツイッター・デビュー」した利用者は、58パーセントものきわめて高い定着率を示している。
 以前、こんどの大震災でツイッターは一段と日本でも普及するだろうと書いたが、こうしたデータからもそういう推測はできそうだ。

afterword
チリ地震後の4日間にツイッターでつぶやいた調査対象者の53パーセントは1回だけで、7割が2回以下。10回以上つぶやいたのは11パーセントの8万人だったそうだ。また震災時には、@付きの特定の人に向けてのつぶやきの割合は、通常より少なかったという。広く情報を伝えようという意識が働くからだろう。

関連サイト
●チリ地震後の4日間のツイートを分析して、ウソを見分けられるかどうかを調べた研究「緊急時のツイッター――リツイートの情報は信用できるか?(Twitter Under Crisis:Can we trust what we RT)」(
http://snap.stanford.edu/soma2010/papers/soma2010_11.pdf)より。
●ツイッターなどの情報拡散を図にして、インチキを暴こうとしているインディアナ大学の研究者のサイト「Truthy」(
http://truthy.indiana.edu/)。
●ツイッターの地震情報のマッピング。米地震学会誌の「電子地震学者」というコーナーに掲載された論文「あ、大変、地震だ! ツイッターは地震速報を改善できるか?(OMG Earthquake! Can Twitter Improve Earthquake Response?)」(
http://www.seismosoc.org/publications/SRL/SRL_81/srl_81-2_es/)より。
●ツイッターで伝えられているP2P地震情報(
http://twitter.com/#!/p2pquake)。
●地震や大事件のときのツイッターの情報発信は通常と異なった傾向のあることをレポートしている論文「Twitter Adoption and Use in Mass Convergence and Emergency Events」(
http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.156.8385&rep=rep1&type=pdf)。
●アメリカの公的機関・地質研究所も、政府予算を使って、ツイッター情報を利用して地震速報を伝える研究をバックアップし始めた(
http://recovery.doi.gov/press/us-geological-survey-twitter-earthquake-detector-ted/)。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.686)

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