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2011.06.14

ツイッターはソーシャル・メディアというよりニュース・メディア?

ツイッターは人とのつきあいを深めるメディアと見られているが、
ほかのソーシャル・メディアとは違った特性があると指摘されている。

●過去よりもいま――リアルタイム性を強めたウェブ

「10億のユーザーがいれば、ツイッターは地球の鼓動そのものになる」とか、ツイッターは「情報の速報システムというよりむしろ神経系」などとツイッターの幹部たちが09年に話し合っていたという話を前回書いた。

 ウェブは情報を共有するアーカイヴとして生まれたが、こうしたウェブの特徴は、ウェブ誕生当初に比べて注目度が低くなってきた。当たり前のことになってきたともいえるが、人びとと情報をやりとりするコミュニケーション機能が重視されるようになってきたからだ。

 ツイッターが登場するまで、ウェブには、ウェブ全体を脈動させる「神経系」とでもいえるような存在は、「2ちゃんねる」ぐらいのものだった。2ちゃんねる発でウェブが広く活性化するということは実際に何度も起こったが、2ちゃんねるの影響力は下がってきた。ヤフーのようなポータルサイトも、ニュースのように画面が頻繁に更新される要素を重視するようにはなったものの、どちらかといえば静的で、「神経系」とか「鼓動」にはなぞらえられない。

 しかし、ツイッターの登場で、ウェブは時々刻々変化する動的な傾向をまた強め始めた。「ツイッターによってウェブは、動的で情報が波打つようなものになって新たなインターネットが生まれた」と後のメディア学者がふり返ることになったとしても不思議ではない。

●ツイッターは「たんなる速報システム」ではない

 こんどの震災でもその威力を発揮したように、ツイッターは「速報システム」でもありうるが、「たんなる速報システム」ではない。第一報を伝えるだけでなく、それを拡散し、さらにその情報を評価し批判し誤報を正していく機能さえ持っている。ツイッターは「新しい情報の速報システムというよりむしろ神経系」というツイッター社幹部の言葉は、たんなる速報システムを超えたツイッターのこうした機能を指しているのだろう。

 09年のツイッター社の戦略会議で幹部たちは、ウェブというアーカイヴを検索するグーグルは「古いニュース」を教えるものであるのに対し、ツイッターは「いま何が起こっているかを発見し共有するためのもの」だととらえている。
 このとき彼らは、リアルタイムの検索機能についても議論している。「ツイッターはツイッター検索の乗り物だ」と言う意見が出る一方で、「人びとは検索のためにツイッターを使うのではない。ツイッターは、検索をしなくても教えてくれるものであるべきだ」と意見を戦わせている。

 ツイッターはリアルタイムの情報の宝庫なので、客観的に見ると「ツイッターはツイッター検索の乗り物」、つまり検索するためのアーカイヴのようだ。その一方、利用者の立場に立てば、利用者が情報を引き出そうとしなくても知りたいことを教えてくれるツールだ。
 こうしたことを議論している09年の幹部たちは、自分たちの強みと方向性をはっきりと自覚し、グーグルやフェイスブックなど他のパワフルなネット企業に勝つためには、ツイッターをどこにでもある存在にすることが必要だなどと言っていた。

●ツイッター利用者の集団は意外にコンパクト?

 ツイッターの幹部たちがこうした話し合いをしていた09年には、ツイッターのアメリカ国内の訪問者は400万から2000万に急成長している。ツイッターについての研究も活発になり、この新メディアの性格を探る試みが本格的に始まった。

 コミュニケーション・メディアとなったウェブで重要なのは、「おしゃべり」を活性化させる仕組みだが、ツイッターが神経系とか鼓動のような存在になるためには、たんなるおしゃべりの道具にとどまっていてはだめで、それ以上の存在になる必要がある。
 09年6月から7月までの1億ほどの「つぶやき」を収集し、それをもとに、ツイッターによる情報発信がどのように行なわれているかを調べ、ツイッターは、他人と関係を作るソーシャル・ネットワークというよりニュース・メデイアのような特徴を持っているのではないかと指摘した研究も発表されている。

 ニュース・メディアだという理由のひとつは、相互性の低さだ。
 この研究によれば、フォローしあう関係になっているのは22パーセントにすぎず、78パーセントは一方的な関係だ。こうしたフォローの関係を見るかぎり、利用者は相互的なつきあいを望んでいるというより、有力な情報発信者のつぶやきをフォローし情報を取得することを目的としているように見える。

 知りあいの知りあいという具合に6人たどっていくと世界中の人間にたどり着けるという研究がある。しかし、ツイッターのフォローの関係は相互的ではないので、これよりも遠い関係になっているのではないかとこの研究者たちは予想したが、この推測ははずれていた。
 サンプル調査したところ、平均は4・12で、5人以下で93・5パーセントの人に行き着けるという結果だった。アクセスが集中している少数の人を経由すれば、予想外に多くの人に行き着ける構造になっていた。
 ツイッター利用者が分散してばらけて大きく広がっている集団になっているのであれば、周辺の人にたどり着くためには多くの人を経由しなければならない。しかし、ごく少数のハブ的機能を果たす人のまわりにぎゅっとかたまっている凝集した集団ならば、どの人にたどり着くのも容易だ。ツイッターはこうした集団だったわけだ。

●フォローする人とリツイートする人は別?

 この研究でもうひとつ興味深いのはランキングについてだ。

 フォロー数の多いベスト20には、ミュージシャンや俳優、スポーツのスター、モデルなどが並ぶ。
 ところがリツイートされる数の多さでリストアップすると、まったく違った結果になった。ネット、テレビ、新聞といったニュース・メディアやジャーナリストなどのニュース性の高い発信者が上位を占める。好んでフォローする人と、重要なつぶやきだと思って転送する相手は違うわけだ。
 考えてみれば、これは不思議なことではない。「朝ご飯おいしかったー」などというタレントのツイートよりも、「あの原発情報はウソ」というニュース性の高いツイートのほうが転送されやすいのは当然だ。

 こうしたことも、ツイッターはソーシャル・メディア、つまり人とのつきあいを深めるメディアだと一般に思われているのとは実際のところ少し違ったメディアである可能性を示唆している。

 前回ニュースなどの更新情報を読むRSSリーダーとツイッターを比較したが、ツイッターを新たなニュース配信の仕組みと見るのはかならずしもマトはずれとは言えない。
 ソーシャル・ネットワークのひとつと見られているツイッターが、ほかのソーシャル・メディアとは少し違った特異な存在であることを示すデータはまだまだある。次回以降でもさらにそうした研究を紹介する。

afterword
上で、09年にツイッターのアメリカ国内の訪問者が400万から2000万に急成長したと書いたが、アメリカ国内の現在の利用者は、米ダブルクリックの推計によれば6000万人。日本国内の利用者は2300万人。全世界の利用者は2億人を超えたようだ。

関連サイト
●ツイッターの特徴を調べた研究「ツイッターはソーシャル・ネットワークかニュースメディアか何だろう?(What is Twitter, a Social Network or News Media?)」(
http://an.kaist.ac.kr/~haewoon/papers/2010-www-twitter.pdf)。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.682)

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