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2011.06.28

「EPIC2014」は現実化する?――ニュースを伝える「ツイッター・スタンド」

ネット上のシステムがウェブ情報を集めて記事を自動生成する近未来を描いた動画が評判になったが、そうしたことがほんとうに起こるかもしれない。

●「何でもあり」がツイッターの強み

 04年に、「EPIC2014」というフラッシュ・ムービーがネットで評判になった。グーグルとアマゾンが合併してできた企業「グーグルゾン」が作った「進化型パーソナライズ情報構築網(EPIC)」というシステムが、ネットの情報を集め、ニュースを自動生成するメディアの近未来を描いていた。
 今回とりあげる「ツイッター・スタンド」はまさにこのEPICを思わせる。ツイッターの膨大な利用者を目や耳にして、現在のニュースのトピックをつかみ・仕分けして、ニュース・メディアにすることを目指している。EPICときわめて似ているが、違うのは、グーグルゾンがネット上の情報を使っていたのに対し、ツイッターの情報でやろうとしていることだ。

 ツイッターには、何についてどう書かなければならないというルールがない。雑多な情報があふれている。ツイッターをニュース・メディアに使うメリットのひとつはこの点にある。
 グーグル・ニュースなどメディアのニュース記事を集めたサイトは、結局のところメディアの関心に応じていて、そのぶん話題の広がりに制約がある。震災直後、マスメディアはパニックが起こることを恐れて不安を掻きたてるような報道を控えた。ニュース記事を集めたサイトも、こういうマスメディアの限界がそのまま限界になる。こうした制約がなく、「何でもあり」がツイッターの強みというわけだ。

 論評についてもメディアには一定の制約がある。
 新聞などでは、識者に尋ねて対立する意見を載せ、「正解」はふたつの意見のどちらか、あるいはそのあいだにあると示唆する。しかしほんとの「正解」はそのどちらでもなく、「極論」こそ正解かもしれない。
 たとえば震災前には、「日本経済を支えるためには原発を全廃することはむずかしい。原発の安全性をどう保っていくかが重要だ」といったあたりがメイン・ストリームの世論だった。しかしいまや「できるだけ早く原発は止めるべきだ」という、少し前の「過激な意見」が正論と見られるようになってきた。

 ツイッターのようなCGMには「暴論」も含まれている。従来のメディアよりも多様で、さまざまな意見に触れられるという点でも、ツイッターはすぐれたメディアになりうると、ツイッター・スタンドの研究者たちは主張している。

●パーソナライズされたニュースを提供

 情報が伝えられる速さも、ツイッターを使うメリットのひとつだ。
 ツイッター・スタンドの研究では、マイケル・ジャクソンの死のときの状況がレポートされている。救急電話があった20分後には、マイケルの緊急事態について最初のつぶやきが発信された。1時間後には200を超え、2時間後にはつぶやきの数は1000を超えた。一方、ロサンジェルス・タイムズがマイケルの死を伝えたのは2時間半後。従来のメディアが重体情報を伝えたのも、ツイッターより1時間ほど遅かったという。

 マスメディアではメディアの編集者がニュースの重要性を決めるわけだが、ツイッター・スタンドでは、同じような情報が素早く大量に発信された場合に、そのニュースの重要度が高いと見なす。このようにツイッターの情報発信のされ方によって重み付けをする。

 また、情報を発信した利用者の発信場所や性別、友人関係、興味・関心などの属性もプロフィール・ページの情報からつかむことができる。ネット上の情報発信であるにもかかわらず現実世界と結びついているのも、ニュース・メディアのもとになるデータとしてすぐれているという。情報発信者に連絡をとって確認することもできるわけだ。

「EPIC2014」でも、「一人ひとりの人間関係や属性、消費行動、また趣味に関する詳細な情報などを把握することで、各ユーザー向けにカスタマイズされたコンテンツを作成する」と言っていた。ツイッターでも、情報の発信者・受け手双方の属性を勘案しつつ、それぞれの属性に応じた情報や意見を提供することが可能だ。

●「機械仕掛けのニュース装置」ができる?

 ツイッターはすぐれたニュース・メディアを作るための条件をそなえているものの、膨大なツイッター情報からニュース性のあるつぶやきを選び出し、同じトピックだと見きわめるのはむずかしく、干し草の山から針を見つけるようだと言う。

 とはいえ、具体的な提案もされている。
 迷惑メールの仕分けでは、含まれている単語によって迷惑メールである確率をはじき出して判別している。それと同様、含まれている単語によってそのツイートの「ニュース度」を判定する。地震とか殺人という言葉が含まれていればニュースの可能性が高いといった具合だ。

 さらに、前回書いたようにツイッターについて、トップ10パーセントの人が全つぶやきの90パーセントを占めているという研究がある。ニュースを発信しているニュース・メディアやジャーナリスト、有力なブロガーなど、ニュース性のある情報を頻繁に発信している2000ほどの利用者をまず選び、彼らの情報を使って、膨大なツイッター情報をふるいにかける。これら核になる情報発信者のつぶやきによってつぶやきの情報が確認されればその情報をニュースとして取りあげるといった具合に、コアになる発信者のつぶやきを用いるのだそうだ。

 ニュース記事の判定や仕分けがむずかしいといっても、グーグルのニュース検索では人力を使わず、すでにこうしたことをやってのけている。できないはずはない。

 つぶやきに虚偽の情報が含まれている可能性もあるが、アマゾンなどがやっているように利用者が★をつけて評価するといった方法を提案している。★の多いツイッター情報は信頼度が高いというわけだ。

 この研究者たちは、こうしたアイデアをもとに、下のようなツイッター・スタンドのインターフェイスを作成し、サイトで公開している。

Photo

●米メリーランド大学の研究者たちが作成している「ツイッター・スタンド」(http://twitterstand.umiacs.umd.edu)。グーグル・マップや、マイクロソフトのbingのマップのほか、グーグル・アースの表示もできるようになっている。




 右側に地図、左側にはツイッターとふたつの画面にわけ、その地域の重要なニュースを表示する。地図上の街をクリックすれば、その街の最新の重要なニュースが表示される。ビジネス、科学技術、スポーツなどジャンルごとの表示もしようとしているが、これはまだ試案とのことで、もっとよい表示方法はいくらも考えられるだろう。

「ツイッターか、もっとありそうなことにはその後継者が、その瞬間の人間の経験の総体をとらえ伝える未来技術になるのではないかとじっくり見ていることが重要だ」という言葉で、この論文は締めくくっている。
 ツイッター(とその後継者)をこういう視点で見て、新たな仕組みを考えようとする人が増えれば増えるほど、「機械仕掛けのニュース装置」が実現する日は近くなる。

afterword
前回までツイッターは他人と関係を作るソーシャル・ネットワークというよりニュース・メデイアではないかということを示唆する研究を取りあげたが、そういう見方をする人は少なくない。今回のツイッター情報を使った「ツイッター・スタンド」も、ツイッターの「ニュース・メディア化」の流れに沿ったものといえる。

関連サイト
●マイケル・ジャクソンの死のときのツイッターの反応。救急電話をしたときを0時(A)として横軸は経過時間、縦軸はマイケルの異変に触れている1時間あたりのつぶやきの数。20分後に最初のつぶやきが発信され(B)、2時間30分後にロサンジェルズ・タイムズがマイケルの死を報じたときには(C)、すでに1時間あたり1000以上のつぶやきが発信されている。「ツイッター・スタンド――つぶやきのなかのニュース(TwitterStand: News in Tweets)」(http://www.cs.umd.edu/users/hjs/pubs/twitter-gis2009.pdf)より。

Photo_3

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.684)

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