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2011年1月の2件の記事

2011.01.26

国策「電子書籍元年」

2010年の「電子書籍元年」の背景には、
政府の情報通信技術(ICT)政策がある。
その点が、以前の電子書籍についての動きと大きく異なっている。

●電子書籍の意外な推進者

 2010年は「電子書籍元年」と言われていたが、はたしてどれぐらいほんとうにそうなるだろうかと思っていた。iPadはたしかに発売されたが、アップルの電子書店「iブックストア」で日本の電子書籍は売られず、キンドルの日本での本格的な発売も始まらなかった。
 コンテンツについても散発的なおもしろい電子書籍の発売はあったものの、それだけで端末購入の起爆剤になるとは思えなかった。
 そうしたことになったのは、国内の動きによって「電子書籍元年」が始まったのではなくて、アップルやアマゾン、グーグルなどの「黒船企業」によって始まったことも関係していると思っていた。
 しかし、私は2010年の終わり近くになって「電子書籍元年」であることを納得し始めた。
 国内の動きによって「電子書籍元年」が始まったわけではないと書いたが、この見方は、半分はあたっているものの、半分はあたっていないようだ。アメリカでの動きに誘発されたことは確かだが、国内でのそうとうに組織だった動きがあることがわかったからだ。「そうとうに組織だった」と書いたが、国が動いているのだから、これほど「組織だった」動きはないとも言える。

続きは、こちらです。
この原稿は有料化しました。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.655)

2011.01.14

アマゾンと出版社のあいだに横たわる深淵

出版社団体は、数々の電子書籍事業に対して、
どう対応しようとしているのか、
日本電子書籍出版社協会に話を聞いた。

●出版社は電子書籍事業に後ろ向き?

 iPadの発売がメディアをにぎわしていた今年5月、今回話を聞く細島三喜・日本電子書籍出版社協会(以下、電書協)事務局長のあるコメントが、ネットでさかんに取り上げられた。
 紙の出版を維持できないのであれば電子書籍事業に協力できないというロイターの記事に載ったコメントだ。大手出版社31社(9月時点で41社)が今年2月に集まって結成した電書協が、電子書籍という名前を掲げていながらじつは後ろ向きの姿勢なのではないかと疑惑の眼差しで見られていたから、電子書籍に期待している人びとは、そのコメントに「やっぱり」と思ったわけだ。

 しかし、細島氏のコメントを読んで、私はそのとき少々違ったことを思っていた。
 出版社は、出版によって売り上げを確保することで成り立っている。電子書籍のコンテンツを増やすことを目標にしているわけではない。電子書籍という新たな市場によって売り上げが増えるのであれば協力するが、そうでなければ協力できないというのは当たり前である。電子書籍が爆発的に普及し始めたアメリカでは、出版社や小説家の収入が減りだしたという報道もある。少なくとも現状で出版社が利益の大半を得ているのは紙の本で、電子書籍によって利益が増えるのか、それとも紙の本の市場が破壊されて混沌とした状態に陥るのか、はっきりしない。出版社も営利企業だから、ビジネスとして有望かどうかを考えざるをえない。そういうことだろうと思ったわけだ。

 たとえば、本欄ですでに書いたように、電子書籍の値段を誰がつけるのかという問題がある。電子書籍は再販制の対象ではないので小売店が値段をつけられるが、アメリカのように新刊発売と同時に紙の本よりも大幅に安く売れば、紙の本も「同じように安く売らせろ」という声が書店から上がる。安売り競争が始まり、出版社のビジネスモデルが崩れる。
 アマゾンは「日本の商習慣は崩さない」と言っているようだ。しかし今回、細島氏に話を聞くと、そうしたビジネス以前の問題がアマゾンやアップルと出版社連合の組織のあいだに横たわっていることがわかった。
 前々回、話を聞いた鈴木雄介イーブックイニシアティブジャパン会長が、アマゾンは日本の電子書籍についてずっと本格的な販売を始めないのではないかと言い、3回前の号で、下川和男・日本電子出版協会副会長が、日本でアマゾンが電子書籍を売るのは中国のあとではないかと言ったことの意味がよくわかった。問題の根はそうとうに深いのだ。

続きは、こちらです。
この原稿は有料化しました。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.654)

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