検索サイトをめぐる意地と損得をかけた戦い
「草食系男子」の繁殖するこの国では考えられないような激しい肉食系の争いが、
検索エンジンと新聞サイトをめぐって海の向こうで繰り広げられている。
●泥棒呼ばわりされる「金持ちグーグル」
マイクロソフトは、今年6月BINGという新たな検索を立ち上げた。当初は少しシェアを伸ばしたものの、グーグルとの差はまだ大きく、詰められる気配はない。そこでマイクロソフトは新聞社に、グーグルの検索で表示させない条件で優遇することを持ちかけていると米メディアが報じている。
一方、メディア王のマードックは、自分たちのコンテンツを検索表示するグーグルばかりが儲けていると怒り心頭だ。グーグルで傘下のニュース記事を検索できないようにすると、11月始めのテレビのインタヴューで息まいた。そして、マイクロソフトの申し出に乗って提携を模索しているという。
ニューズ社会長兼CEOのマードックは、ウォールストリートジャーナル(以下WSJ)など数多くの新聞を所有している。
WSJはウェブ上の記事に有料課金している数少ない新聞サイトだが、この有料課金の仕組みには、じつは「裏口」がある。同紙のサイトではお金を払わなければ読めない記事も、グーグルなどの検索サイトやディグなどのソーシャル・ブックマーク経由では、記事全文に無料でアクセスできる。
なぜわざわざそんなふうにしているのかといえば、広告収入を増やすためには検索サイトなどからのアクセスがいるからだ。購読料と広告料収入の二股をかけるために「裏口」が開いているわけだ。
マードックは、グーグルのことを自分たちの記事を盗む泥棒呼ばわりするが、検索表示させたくなければ、検索サイトのデータ収集を拒否できる。「泥棒」させたままにしているのはじつはマードックのほうなのだ。
そういうわけでマードックの非難は理不尽にも思えるが、その気持ちはわからないでもない。自分たちの新聞記事を使ってグーグルが利益を増やす一方で、自分たちのほうはちっとも儲からない。となれば、「金持ちグーグル」が泥棒のように見えてきても不思議ではない。
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(週刊アスキー「仮想報道」Vol.610)