« 国会図書館による有料配信決定の記事は誤報のよう | トップページ | まぼろしの有料配信 »

2009.08.17

グーグルの次の手は無料のネット接続?

先ごろグーグルが発表した無償のOSはネットが前提で、
コンピューターはからっぽのほうがいいという発想だが、
次にグーグルがやるのはネット接続を安くすることだろう。

●コンピューターは「ただの箱」のほうがいい

「コンピューター、ソフトがなければただの箱」という有名な言葉がある。誰が言ったのか知らないが、コンピューターはソフトがなければ役に立たない。また、とてつもないスピードで情報を処理する一方で、うまく動かなくなって難儀も振りまく。このフレーズは、コンピューターを小馬鹿にしているようでもあって、一回聴いただけで記憶に残った。
 コンピューターはこのようにソフトを入れておく必要があると思われてきたわけだが、7月7日に発表されたグーグルのOSは、コンピューターはいまよりもっと「ただの箱」にしたほうがいいという考えにもとづいている。グーグルは、公式ブログでこう言っている。

「多くの方がコンピューターを起動させブラウザを立ち上げるのを待たずに、すぐにメールを見たいと思っていて、コンピューターがいつも最初に買ったときと同じ速さで動いてくれればいいと思っています。どこにいても自分のデータを入手できて、コンピューターを失くしたりファイルのバックアップを忘れる心配から解放されたいと願っていて、ハードウェアを新しくするたびに何時間もかけてコンピューターの環境設定をしたり、ソフトウェアの更新を常に気にしたりしたくないと思っています」。

 こうした利用者の欲求に応じるため「Google Chrome OSの重要な要素は、スピードと使いやすさ、安全性」で、「ユーザーが数秒でコンピューターを立ち上げてウェブにアクセスできるように、非常に高速で軽量」で、来年後半に提供するとのことだ。
 パソコンの起動が遅かったり、データがなくなることを気にしなければならないのは、パソコンにたくさんのソフトやデータを入れているからだ。「ただの箱」にしてしまえば、起動は早くなる。データも自分のパソコンの中ではなくて、ネットの向こう側、グーグルなどのIT企業が持っているコンピューターに保存してもらう。必要があるたびにそれを引き出して使うのであれば、データの保存もネットの向こう側の仕事になる。自分でデータを持っていないのは不安だと思う人もいるだろうが、お金は家に持っているよりも銀行に預けたほうが安心だと思っている。それと同じで、専門家に任せたほうが安全という考え方もある。
 いまさかんに言われている「クラウド・コンピューティング」はまさにこうした考えで、ネットのこちら側の端末は「ただの箱」でいい、というものだ。

●グーグルのOS開発は予想通りの結果

 ところで、グーグルがこうしたOSをなぜ作ったのかについて、ネットでもメディアでもさかんに議論されているが、それについては、グーグルが「Chrome(クロム)」というブラウザを発表した昨年9月、「ブラウザの次はいよいよパソコンOSの無償配布か?」という小見出しを付けて書いた。あらためて読み返してみると、修正する必要がない。グーグルのこれまでのOS開発にも触れ、こんどのOS開発の発表に際しても参考になると思われるので、それを引用しておこう。

「グーグルは、ネットを使いやすくすれば自分たちの利益につながると考えているが、いくらブラウザの動きを速くしても、肝心のパソコンが立ち上がるのが遅ければ、ネットがほんとうに使いやすくはならない。やはりOSそのものを開発しなければ目的を達成できないはずだ。
 06年初めに、グーグル社内で『Goobuntu』と名づけたリナックスベースのOSを開発し使っていると報じられ、グーグルもそれを認めた。しかし、配布する予定はないとのことだった。
 マイクロソフトの売り上げを直撃するパソコンOSの配布を始めれば、戦いはずっと激しくなる。また、ネット上のソフトを使うようになればなるほどOSに依存しなくなり、OSの重要性も下がる。OSの開発や維持には莫大なコストがかかる。グーグルとしては、そうまでして乗り出すのは割に合わないということなのだろう。
 しかし、パソコンのOSをマイクロソフトに握られていたのでは、グーグルは、自分たちのビジネスに対する潜在的な脅威を取り除くことはできない。また利用者のほうも、パソコンを使ってネットにアクセスしているかぎりは、OSの機能に制約される。パソコンを立ち上げっぱなしにしているグーグルの社員はパソコンの起動の遅さが気にならないかもしれないが、家庭のパソコンはそんなふうには使われていない。ネットとメールぐらいしか必要ない人にも、あるいはそのまったく逆に、テレビ替わりに動画を見るなど、さまざまな用途に使っている人にも、パソコンの起動はあまりにも時間がかかる。
 すぐ立ち上がりますます強力になっていくケータイという『ネット端末』に加えて、ネットにつながったテレビやゲーム機など『新興勢力』が次々と出てくるなかで、パソコンがいまの地位を守るためにも、まったく発想の異なったパソコンOSはますます必要になっている。マイクロソフトと戦う力もつけたし、ケータイのOSにも乗り出したし、時機は熟したのではないか」。

 グーグルがOSを開発しているということが、以前はときどき話題になっていた。しかし昨年グーグルが自前のブラウザを出したこのときは、「次はOS」という人をあまり見かけなかった。けれども「理屈」を考えれば当然そうだろうと思ってこの原稿を書いたわけだが、まさに「やっぱり」という結果になった。以前の予想が当たった余勢を駆って、次の予想をしてみよう。

●グーグルの次の手はネット接続の進化

 このようにグーグルは、起動が速いOSを無償で配布するという驚くべき発表をした。「驚くべき」と書いたが、グーグルがタダで配布することに驚く人はいまやもういない。大容量の保存ができるメールに始まって、ネット接続しながら使えるワープロや表計算、プレゼンソフト、ケータイOSにいたるまで、次々と無料で提供し続けてきたからだ。
 グーグルはOSを発表した公式ブログの記事に、「ユーザーの満足度が高まれば今後もっと多くの時間をインターネットに割いてくれるようになると考えると、ユーザーのよりよいコンピューティング・エクスペリエンスはGoogleのためでもある」と書いている。利用者がネットにアクセスする時間が長くなればなるほどグーグルの広告を目にする機会が増え、グーグルは収入を拡大できる。
 そうしたことを思うとき、グーグルが次に何にエネルギーを注ぐのかは明らかなように思う。それはネット接続、とくにいつでもどこでもネットに接続できる無線接続の環境をきわめて安く、できれば無料で提供することだろう。グーグルのこのOSは、ネットへの接続が前提になっているのだから、こうした環境は是非とも必要だ。実際グーグルは、こうした方向に向けてさまざまな試みをすでに始めている。次回はそれについて書くことにしよう。

afterword
 グーグルは検索会社だったはずなのに、電話会社のお株を奪うようなこともアメリカで始めている。そうした動きからは、日本ではあまり知られていないグーグルの次世代に向けての戦略が見えてくる。

関連サイト
●「Google Chrome ブラウザの時と同じように、ユーザーがウィルスやマルウェア、セキュリティ更新に対処したりしなくてもよいように、基本に帰って OS の基礎をなすセキュリティアーキテクチャを全面的に設計し直している。余計なことを気にしなくても、安全にすべてが動作する」と、2010年後半に高速で軽量のOSを提供することを発表したGoogleの公式ブログ記事(http://googlejapan.blogspot.com/2009/07/google-chrome-os.html)。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.582)

« 国会図書館による有料配信決定の記事は誤報のよう | トップページ | まぼろしの有料配信 »

グーグル」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/56597/45942260

この記事へのトラックバック一覧です: グーグルの次の手は無料のネット接続?:

« 国会図書館による有料配信決定の記事は誤報のよう | トップページ | まぼろしの有料配信 »

2014年8月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31