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2009.06.08

ウェブで成り立つ課金メディア

「ウェブの情報はタダ」とみんなが思うようになり、
ネットでは課金サービスが成り立たないと信じられている。
しかし、かならずしもそうではないのかもしれない。

●いかがわしいネット・ビジネスが秘めている可能性

  

 新聞が衰退し、「焼け野原」状態になったニュースメディアからどのような新しい芽が出てくるのか。ここ何回かそうしたことを書いてきたが、ひそかに流行しているあるネットビジネスが近未来のニュースメディアのひな型になりうることに気がついた。
 それは「情報商材」だ。
 情報商材というのは、「こうすれば儲かります」といった謳い文句で、儲けるためのマニュアルなどを売る情報ビジネスだ。
 こうした情報商材の宣伝・販売をしているサイトやメルマガはかなりの数にのぼる。「情報商材って何それ?」と思った人も、言われてみると、そんなのを見た記憶があるのではないか。
「あんなものが近未来のニュースメディアのひな型か」と思うかもしれない。たしかにこのビジネスはいかにも怪しげだ。まず値段がしばしばびっくりするほど高い。1万円を超えていることはざらで、10万円ほどのものもある。
 そんなに簡単に儲かる方法が伝授できるわけがないと思うのが普通だし、そもそもそんなに儲かるのなら、他人に教えずに自分でやればいい。わざわざテキストにして売っているのは、儲かっていないからじゃないか。常識的に考えればそう思う。
「簡単に儲かります」みたいな売り言葉にだまされる人はそれほどいないだろうが、多くの人にタダ同然のコストで情報をばらまけるネットはリアルの世界の常識とまったく異なっている。元手がほとんどかからないのだから、メールや広告などを通して多くの人に知らせ、そのうちわずかの人が引っかかってくれればそれでいい。商品は一度つくってしまえば同じものを売るだけなので、その後は手間もかからない。10万円の価格で月に5人が買ってくれれば月収50万円。2人しかいなくても20万円。少なくとも副業としては十分な額だろう。
 この商売の何がまずいのかと言えば、言うまでもなく、それは内容がインチキの場合だ。
 さらに値段も高すぎる。社会通念上どうなのかと思わせる価格だ。しかし、これほど高くなくて内容がそれなりのものだったらどうなのか。
 ネットにアクセスしているたくさんの人のうち少しばかりの人が興味を持ってくれれば成り立つという情報商材のような発想は、ニュースメディアにかぎらず、小さな組織がネットでビジネスをやるときに有効な考え方だ。
 そして、こうしたビジネスは、少数の人からお金を募るだけで成り立つという意味で、マスを相手にしなければならないメディアよりも実際のところ強靱という側面もある。とくに現在のように経済が混迷し、広告が集まりにくくなったり、広告ビジネスそのものが大変動して不安定になっているときには、いよいよ注目すべきビジネスモデルに思われる。

●「焼け野原」に立つ小屋のようなニュースメディア

 前回紹介したネットのニュースメディアの数少ない成功例である「MyNewsJapan」は、有料会員500人でとりあえず食べていけ、1000人で持続可能という計算で始めて、4年経った現在は1500人を超え、かなり余裕が出てきたと運営者の渡邉正裕氏が著書で書いている。
 これまでのマスメディアのニュース・ビジネスでは、1000人とか1500人というのは無視されてきた規模だ。しかし、人々の関心が多様化しているいまでは、不特定多数の人に同じ情報を届けるマスメディアのビジネスモデルが衰退し始めている。その結果、冒頭に書いたような「焼け野原」になりつつあるわけだが、その焼け野原で育つのは、小さな小屋を建てて人を呼びこんでいくようなこうした小さなニュースメディアなのではないか。
 このようなニュースメディアがいくつも出てきて、それらのなかには記者などを雇ったり、あるいはメリットを感じればほかの小さなメディアと連携したりと規模を拡大していくところも出てくるだろう。
 いきなり大きく始めてしまうと維持するのはむずかしい。新聞社がネットに進出しても利益を出しにくい。市民ネットメディアも、経営的に苦しいのはすでに大きすぎるからなのかもしれない。課金収入の増大にあわせて拡大していくほうが安全だ。

●増えているネットの課金メディア

 さも新たな発見であるかのように書いたが、じつのところこうした動きはもう始まっている。このところまた有名なブロガーなどが有料メルマガを出すようになってきた。メルマガ大手の「まぐまぐ」が有料メルマガの発行を始めたのは01年のことなので仕組みそのものはもうだいぶんまえからあるわけだが、このところブロガーの進出が増えている気がする。

 その理由はさまざまだろうが、広告モデルが見離され始めたということもあるのではないか。
 ブログが人気が出てアクセスを集め、広告収入が増えプロ化していくということは、アメリカでは起こっている。しかし、日本でまとまった収入が得られているのは、プログラムを組んで広告付きの膨大な数のブログを自動生成するといったやり方のものが多いようだ。そもそもアメリカに比べて広告単価がかなり低い日本では、商品に関連した記事を書いているブログでなければむずかしい。
 そのほかの話題を書いているブロガーが、書くことにもっと時間をとりたいということになれば、有料メルマガがもっとも手軽で現実的な選択肢だ。膨大なアクセスを集めるようになったブログであれば、有料メルマガをとってくれるのが利用者の1パーセント以下であってもそれなりに成り立つという計算もできるだろう。

 かくして有料メルマガが増えているのだと思うが、ただメルマガだと個人メディアの色彩が強い。その人のメルマガだからということで講読されるのが普通だろう。個人メディアを超えて、未来のニュースメディアに発展していくという感じがしない。
 それに、言うまでもないことだけど、有料メルマガはあくまでもメールであって、ウェブ上のニュースメディアではない。その点が「MyNewsJapan」などとははっきり異なっている。
 渡邉氏の本を読むとよくわかるが、会員数が少なくても成り立つとはいっても、始めるのは容易ではない。
 渡邉氏は、日経新聞に務めたあとコンサルティング会社に転じ、ビジネスを成功させるプロだった。そうした経験や以前の人脈をもとに、どうすればうまくいくかを周到に考えたうえで立ち上げている。渡邉氏は、追随してくれる人が出てきてほしいということで内情を明かす本を書いたようだが、簡単にまねできることではないだろう。
 ブログを書いたりしている延長上で、もっと敷居の低い形でプロ化していく道はないのか。

 そう思っていたら、そうした方法らしきものが見つかった。もう何年も前からあるネット企業のサービスで、すでに利用している人はいるが、まだとても少ないようだ。自分でも試してみたくなってきた。次号からはその顛末を報告したい。

afterword
 有料個人サイトがウェブ上のジャーナリズムを担っていくのではないかと最初に思ったのは、もう10年以上も前のことだ。その後、市民ネットメディアが相次いで立ち上がり、そうしたことを忘れていたが、時代がめぐって、またこうした有料ネットメディアに注目すべきときが来たのではないか。

関連サイト
●96年に立ち上がった有料のネットメディア「Jnews」(http://www.jnews.com/)。このサイトを見て有料個人サイトがウェブ上のジャーナリズムを担っていく可能性に気がついた。ビジネス情報をあつかっている。
●有料メールマガジン「まぐまぐプレミアム」(http://premium.mag2.com/)。ライターや有名ブロガーの発行が続いている。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.583)




 

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