有料ブログはウェブにとって善か悪か?
リンクをクリックしてアクセスしたら有料のブログだった。
そんなことになったらイヤだなと思うだろうが、
そうしたブログの誕生にも、少しばかりの理はあるように思う。
●ブログのレベルは上がっているのか下がっているのか
日本のブログの水準は上がっているのか下がっているのか。
「ブログがどんどんつまらなくなっている」といったことを書いて、炎上まがいの
騒ぎになったブログがあった。自分たちは楽しんでやっているのに「つまらなくなった」などと言われれば、熱心にブログを書いている人たちは不愉快だろう
し、実際のところ、膨大な数にのぼるブログのレベルが全体として上がっているのか下がっているのかは誰にもわからないだろう。
ただ、しばらくぶりにアクセスしてみるとつまらなくなったと感じる有名ブログはよくある。
有名になりすぎて、以前のように好き勝手なことを書けなくなってしまったと思われるブログもあるし、有名になり原稿依頼が来てブログを書く時間がとりにく
くなってしまった人もいるだろう。もともと仕事ではないのだし、書き続けようがやめようが自由だが、読者としては残念であるにちがいない。
ブロガーにとっても読者にとってもいいのは、言うまでもなくブログを書くことで報酬を得られ、有名になればなるほど精力を注げるようになることだ。
アメリカではそうした好循環も生まれ、プロ化しているブロガーが出てきているが、残念ながら日本はそうはなっていないようだ。経済が混迷し、ネット広告の
伸びが小さくなってきて、そうしたことはいよいよ期待しにくくなっている。そのためもあるのだろうが、有力な書き手が有料メルマガを出すという流れが起き
ている。
しかし、有料化するのだったら、ほんとうはメルマガではなくて、ブログを有料化するべきなのではないか。
前回書いたように、メルマガは個人メディアの色彩が強い。何を書いているかだけでなく、誰が書いているかが重要だ。有料でも無料でもこの人が書くのだったら読もうといったことで講読されるのが普通だろう。
ブログはかならずしもそうではない。もちろん「お気に入り」やRSSリーダーに登録して特定のブログを定期的に読んでいる人もいるけれど、検索やリンクを
たどってやってきて、その日の記事だけ読む人も多い。その人が書いているからということだけではなくて、書かれている内容によっても読まれている。
たとえば私のブログの場合、ここ4か月でアクセスしてくれた人のうち2分の1はブックマークなどからだが、5分の1は検索エンジン経由で、残りが他のサイトからのリンクだ。検索やリンクによって記事を読みにきた人は、メルマガだったら読んでいなかったはずだ。
こうした利用の仕方を見ると、有料化するのであれば、ブログそのものをしたほうがいいのではないかという気がしてくる。
●似たりよったりのブログ・サービス
そんなことを思って、有料ブログを提供しているプロバイダーを探してみて驚い
た。ネット接続業者やポータルサイト、ネット広告会社といろいろなところがブログ・サービスを提供しているが、ブログを課金できるようにしているところは
見あたらない。提供しているオプションも似ていて、意外なほど差別化されていない。
たしかに、読者一人一人について小額のクレジットカード決済
するのは厄介だし、ネット越しに不特定多数の人を相手にするとなればトラブルもあるだろう。独自なシステムの開発も必要だ。しかも、ブログは無料で読める
のが当たり前になっているから、有料化して応じてくれる読者はそうとう少ないと思われる。そうしたことを考えれば、どこもやっていないのは当然なのかもし
れない。有料ブログを見かけないわけだ。
そう思いながら探しまわってみると、ひとつだけ有料ブログを作れるようにしているところがあった。
●誰でも情報発信はできるようになったけれど‥‥
メディアインデックスという会社が運営している「レジまぐ」だ。メルマガやデジタル商品のダウンロード配信などもやっており、有料ブログも作れるようにしている。
「レジまぐ」のブログ一覧を見ると、07年1月に開設した人がいるからもう2年以上やっているようだが、並んでいるブログは驚くほど少ない。20個しかない。オークション必勝法や「証券マン集団による急騰銘柄情報」とか「楽々アフィリエイト術」などが並んでいる。
参加ブログがこれだけで採算があっているのか心配になってきたが、その一方で、有料のコンテンツ配信をするのであれば、やはり記事ごとの内容が多少はわかるようにもできるブログ型のほうがいいように思われる。
読み手にすれば、有料化するぐらいなら広告を載せて無料でいてくれたほうがいいと思うだろうが、商品に関係していない内容の記事を書いて広告モデルで運営するのは、少なくともいまの日本ではかなりむずかしい。そうとうアクセスを集められるサイトでなければ無理だ。
誰でも不特定多数の人に向けて簡単に情報発信できるようにはなったけれど、日本のブログに関して言えば、その先プロ化していくことはむずかしい。有料ブロ
グが広がってくることで、広告がクリックされにくい内容を書いていても収入を得られ、ブログにもっとエネルギーを注げるようになったり、またプロの書き手
がいま以上にウェブに参入するようになったら、ウェブはよりいっそう充実するはずだ。
実際のところ、プロの物書きというのはどんどん成り立たな
い職業になってきている。雑誌の休刊が相次いで、こうした状態が続けばもはや書き手は食べていけず育ちもしないだろうといわれている。「おもしろい文章を
書いてもどうせ食べられないしな」と思っていい書き手が現われなくなっていくよりは、有料ブログという選択肢があったほうがいいのではないかという気もす
る。
●有料ブログもひとつの選択肢?
もちろん、有料ブログがありかどうかは議論の余地があることだろう。「ウェブやブ
ログはそもそもそういうものではない」という原理的な批判もあるだろうし、検索して出てきたブログに飛んでみたら、お金を払わないと読めないというのでは
鬱陶しくもある。そんなブログばかり出てきたらウェブが機能不全になるのではないかという批判は一理あると思う。
ただそうした意見には、「有料ブログがダメなら有料サイトだって同じじゃないか」といった反論もありうるだろう。「有料サイトはけしからん」と言っている人はそれほど見かけない。
目につくようになってきたら、いろいろな議論が起きそうだが、少なくともいまのところは有料ブログはほとんどないし、やってみる価値があるのでは、と思う。
私がやってみたからといってどうなるものでもないだろうけど、ある大学で講義を受け持った関係で、プロの書き手にとってのネットの可能性を考えなければならなくなったので、自分のブログを有料化して試してみることにしたい。
afterword
たいていの人にとっては、プロの物書きが減っても困りはしないだろうが、どのメディアを見てもつまらない文章しか載っていないというのはイヤだろう。来週は、「ブログを有料化するその理由」。
関連サイト
課金できる数少ないブログ・サービス「レジまぐ」(http://regimag.jp/)。ほんとうに収益を得るには、内容を絞りこむなど工夫が必要だろうが、簡単に有料ブログを始められるこうしたサービスがもっといろいろ出てくるといいと思う。
追記
原稿を書いた後、会った人に、FC2のブログ「ブロマガ」も課金できるようになっていると教えてもらった。
もうひとつ、ソフトのダウンロード販売などをやっているベクターのブログ・サービス「maglog」も有料課金できることを発見した。探すとけっこうあるのかもしれない。目下のところ、これが移行の最有力。
(週刊アスキー「仮想報道」Vol.584)
追記その2
少しいろいろな「実験」をしようと思っています。
上に書いたように、このブログに掲載している週刊アスキーの記事のかなりの部分を有料化して、このブログは、ふつうのブログのようにしようと思い始めています。
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