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2008.12.22

オバマの当選で、アメリカは変わったか?

オバマ陣営は、かつてないネット選挙を繰り広げたが、
その中心になったのは若者たちだった。
彼らの思想傾向はどのようなもので、
アメリカをどう変えるのか

●アメリカの若者の変化 

 こんどのアメリカの大統領選挙は、ひと言で言えば、若者が中心になって草の根的な支持組織を作り、有権者に働きかけ、オバマを当選させた。そして彼らアメリカの若者たちは、上の世代とは異なった考え方をし始めている。出口調査の結果などからはそんなことがわかってくる。
 ピュー・リサーチセンターが11月12日に発表したレポートによれば、18歳から29歳まで投票した人のうちオバマに入れたのは66パーセント。マケインは32パーセントで、倍以上の差がついている。しかし、年齢が高くなるほど票差は縮まる。45歳から64歳は同率、65歳以上になると53パーセントがマケインに投票し、逆転している。

 こうした結果になったのは、人種構成も関係している。投票した人のうち29歳以下の白人が占める割合は62パーセント。年齢層が上がるほど白人の割合が高い。65歳以上では84パーセントが白人だ。残りが有色人種というわけだが、29歳以下の世代でオバマに投票したのは、黒人が95パーセント、ヒスパニックが76パーセント。それに対し、30歳以上の白人層では、マケインに投票した人が57パーセントと多数派だ。
 ところが29歳以下の白人層では、オバマ票がマケイン票を10パーセントも引き離している。つまり、若い世代でオバマ票が多かったのは、人種構成のためばかりではない。
 80年以降の大統領選挙で若者層は、有権者の平均よりも民主党に投票する傾向があるが、今回は、飛び抜けて民主党に投票している人が多い。平均よりも13パーセントも多く、前回の大統領選挙と比べても12パーセントも多い(下のグラフ)。10311

 オバマ支持の若者が増えたのは、政府に対する考え方が変わったためでもあるようだ。問題解決のために政府がもっと仕事をすべきだと考える人が、上の世代よりもずっと多いのだ。18歳から29歳の69パーセントがそう考えている。けれども30歳以上でそう考える人は5割を切り、上の世代になるほど、民間にゆだねたほうがいいという考えになっていく。

 イラク戦争についての賛否も30歳を境にかなり変わっている。若い世代は77パーセントが反対だが、30歳以上は6割前後にとどまっている。

 このように個々の問題について見方が違う背景には、若者層の基本的な政治志向が変わってきたということがあるようだ。
 投票した人のうち34パーセントは自分のことを保守に分類し、リベラルと認識している人は22パーセント。しかし、18-29歳はリベラル派がほかの世代に比べて10パーセント以上多いのだ。

●アメリカ社会は2局分裂がさらに強まる兆し 

 民主党はリベラル派が、共和党は保守派が以前より増え、党による思想傾向の違いが大きくなっている。民主党支持の29歳以下の若者は42パーセントがリベラル派と思い、保守派は2割どまりだ。一方、同世代の共和党支持の若者は62パーセントが保守と答えている。そして民主党員は今後、民主党が中道もしくはリベラル傾向を強めるべきだと考え、その一方、共和党員の6割は、共和党が保守傾向を強めるべきだと考えている。

 若者層は、オバマに投票しただけでなく、選挙運動でも積極的な役割を果たした。激しい争いになった州の若い有権者の28パーセントが選挙のイベントに参加した。お金のない若者は上の世代より寄付をする人が少ないものの、それでも10人に1人近くが選挙資金の寄付をしている。
 いずれの世代も、投票した人の4人に1人がオバマ陣営からの電話や訪問などを受けている。マケイン陣営からよりも多い。とくに若者層は差が顕著だ。オバマ側からのコンタクトがあったという人が25パーセントあったのに対して、マケイン側からは13パーセントにとどまっている。
 この数字は全国平均だが、激戦区のペンシルバニアやネバダでは、投票した人の2人に1人がオバマ側からのコンタクトがあったと答えている。29歳以下に限ればネバダでは投票者の61パーセントがコンタクトされたと答え、マケイン側を大きく引き離している。激戦区の若者層では、どこの州でもオバマ側からのアプローチがあったという答えがマケイン側よりも10-20パーセント以上多い。こうした結果になったのは、オバマ陣営がインターネットをたくみに使って若い支持者を組織化したからだ。
 オバマのサイトでは、電話部隊や訪問部隊のボランティア登録を受けつけていた。協力を申し出た人々には、誰に投票するかまだ決めていない近所の有権者や電話をかけるべき人のリストとマニュアルが提供される。それにしたがって行動し、その結果をサイトで報告する。このようにしてデータベースが更新され、また次の支援者の活動に役立てられる。インターネットを使ってこのような「データベース選挙」が繰り広げられ、激戦区の有権者に対してアクティヴな選挙運動が展開された。

●オバマへの期待

 激しい選挙運動が繰り広げられたわりには、オバマ大統領に対する期待でまとまっているというのがいまのアメリカのようだ。オバマ政権が成功すると思っている人は67パーセント。出口調査でオバマに投票したと答えた人は53パーセントだから、それを大きく上まわっている。戦いが終われば新大統領に期待し好感も持つというのがアメリカの有権者心理で、CNNの調査では75パーセントもの人がオバマに好印象を持っていると答えている。
 オバマに対立していた共和党支持者の68パーセントは新政権を不安に思っているというものの、怒りを感じていると答えた人は、3月には37パーセントいたのに、選挙後は17パーセントに減ってしまった。強い反発を感じる人が少なくなったわけだ。

●そして、2012年の選挙は?

 早くも2012年に行なわれる次の大統領選挙についての調査も行なわれている。
 投票日直前の10月末から11月始めにかけて、CNNは、オバマが当選せず、次の選挙でヒラリーが出馬したら支持するかどうかを尋ねている。6割が支持すると答え、とくに民主党支持者は9割が賛成、無党派層も58パーセントが支持すると答えている。今回、共和党の副大統領候補になったペイリンは不支持が6割近くと厳しそうだが、女性大統領誕生の気運は確実に高まっている。生きているうちに女性大統領が生まれると思うと答えた人は何と85パーセントにのぼっている。
 アメリカの人気ドラマ『24』は黒人大統領に続いて次は女性大統領を登場させ、女性大統領誕生のムード作りに貢献するかもしれないと数号前に書いた。このドラマは、9・11後の愛国ムードに乗って視聴率を獲得したものの、時代の流れが変わって視聴率が落ちてきたが、世の中のムードをつかむツボは、やはりはずしていないようだ。

afterward
 どの政党を支持するかによって、選挙情報を入手するテレビ局が違うということも起こっている。保守的な傾向のフォックス・ニュースを主要なニュース媒体にしたと答えた半数以上は共和党支持者。民主党支持者は17パーセントしかいない。CNNとMSNBCは反対に民主党支持者が多数派。

関連サイト
●ピュー・リサーチセンターの11月12日のレポート「Young Voters in the 2008 Election」(http://pewresearch.org/pubs/1031/young-voters-in-the-2008-election)。
●オバマ新政権移行のためのサイト「Change.gov」(http://change.gov/)。オバマのメッセージ動画が公開され、スタッフの任命など新政権樹立に向けて新たな動きが伝えられ、質問なども受けつけている。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.562)

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