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2008.12.15

オバマ新大統領の誕生に期待は高まるが‥‥

オバマへの期待は日本でも高い。
日本経済が回復するのにもオバマの手腕に期待するしかないのかもしれない。
しかし、オバマは救世主ではない‥‥

●オバマに期待する一方で、アメリカの影響を問題視 
 

 アメリカの新大統領に選ばれたオバマに対する期待は、日本でもとても大きい。あまりに期待が高く、この先のことを考えると少々気の毒なぐらいだ。
 朝日新聞の世論調査ではオバマが当選して「よかった」と思う人が79%、「よくなかった」と思う人はわずか4%。とくに若い世代の支持が高く、20代から40代では「よかった」という人が8割を超したという。
 実際のところ、悪化の一途の経済が立ち直れるとしたら、アメリカ経済が持ち直すしかなさそうだ。麻生首相は、「アキバ人気」で、ネットでは支持があるのかもしれないが、妙に明るくて楽観的ということを除けば取りえがあるとは思えない。経済通という自己評価もほんとうなのかという気がする。
 90年代初めにバブルがはじけるころまでは、誰が首相になろうがたいして重要には思えなかった。だいたいの人は、政治とは無縁の世界に生きていた。経済全体が上り坂だったから、政治家が何をやろうともそれほど関係なく生きていくことができた。ところがいまはまったく違う。政治に信頼はできないけれど、だからといって、関係ないといってすますこともできない。日本の政治家に期待を抱けないならば、日本の「盟主」アメリカの新大統領に期待するしかない。

●米大統領選に関心あるけど、どうせ何も変わらない?

 継続的に国際調査をやっているピュー・リサーチセンターは、アメリカが自国にどれぐらいの影響をあたえていると思うか24か国で尋ねている。最新の今年6月の発表では、日本では「大きな影響がある」と「かなり影響がある」をあわせると93パーセントの人がアメリカの影響を認めている。24か国のなかで韓国と並んでもっとも多い。しかも、「大きな影響がある」と答えたのは韓国では47パーセントだが、日本は63パーセントで、これは他国に比べて突出して高い。経済に関しても95パーセントの人が影響を認めている。アメリカの影響をもっとも強く感じている国ということになる。
 こうした影響が肯定的に見られているのであれば問題はないが、やはりそうではない。アメリカの影響を「いい」と答えた人は17パーセント。43パーセントが悪いと答えている。経済的影響についても、67パーセントの人が否定的に見ている。

 この調査でおもしろいのは、アメリカ大統領選挙への日本の関心だ。大統領選挙のニュースにどれぐらい関心があるかという問いに、「とても関心がある」と「まあまあ関心がある」と答えた人は83パーセント。アメリカは80パーセントで、本国アメリカを上まわっている。
 こんなに関心がある人が多いのに、選挙のあとアメリカ外交がいい方向に向かうと思うかという質問には、67パーセントの人が「たいして変わらない」と醒めた見方をしている。他国に比べてダントツで多い。「いい方向に変わる」と期待している人の割合は、フランスの68パーセントを筆頭に西欧諸国では高いが、日本は20パーセント。パキスタンと並んで下から2番目の期待度の低さである。
 私も尋ねられれば、こうした答えをしたかもしれないが、しかしこうした集計を見ると、「日本人は大統領選挙にほかの国以上に関心があるのに、期待はまったくしていない。何とも変わった国民‥‥」という気がしてくる。同センターのレポートは淡々と数字を紹介しているだけだが、おそらくこの調査をした人たちもそう思ったにちがいない。
 ただ、この調査は、いずれの国についても3月から4月にかけて行なっている。共和党の候補者はマケインに決まっていたが、民主党はまだオバマとヒラリーが争っていた。誰が大統領になるかわからないから醒めた見方をしていた、ということはあったかもしれない(もっともそれはいずれの国も同条件なので、このようなとき醒めた見方をするというのが日本人の特徴的な態度なのだろう)。

 主要国のトップやトップ候補が「世界の関心事について正しい判断をすると思うか」という問いには、回答した日本人の72パーセントが、オバマは正しい判断をすると答えている。ヒラリーは47パーセント、マケインは37パーセント、ブッシュは25パーセントといった具合で、この調査をした今年春の時点で、すでにオバマは日本でも群を抜いて支持されていた。期待を寄せていたオバマが当選し、将来に対する見方が大きく変わったということはありそうだ。
 実際、先の朝日新聞の調査でも、オバマの当選によって世界がよい方向に向かうと答えた人は60パーセントにのぼっている。オバマの当選によって醒めた見方が一変したわけで、日本人のオバマに対する期待の大きさがわかる。

●「人類にとっての大きな一歩」と書いたイギリスの新聞

 オバマに期待しているのはほかの国も同様だ。ピューの調査では、ヨルダンだけがわずかにマケインのほうが信頼度が高いが、ほかの国はいずれもオバマが信頼を集めている。ブッシュを信頼できると答えたのが5割を超えたのはインドだけで、スペイン、パキスタン、アルゼンチン、ヨルダンは1桁、西欧は10パーセント台と軒並み低支持だ。早く大統領を替わってもらいたいという気持ちが現われている。
 オバマの当選に各国のメディアはおおむね好意的と同センターは伝えているが、とくにイギリスの新聞は、自分たちのトップが決まったかのような喜び方だったらしい。サン紙は、カメラのほうに走ってくるオバマの写真の下に、月着陸のときにアームストロング船長が言った「人類にとっての大きな一歩」という見出しを打ったそうだ。
 またインドの新聞は、オバマとブッシュはまったく対照的なイメージで、ブッシュが海外で軍事的冒険をし、好戦的で弱い者いじめをするスーパーパワーのイメージであるのに対し、オバマは、移民を歓迎し、人種や血筋よりも功績と才能を重視する希望と機会、開かれた社会の国をイメージさせると書いたという。さらにオーストラリアの新聞は、「白人が多数派を占めるほかのどの裕福な大国が、人種的な少数派を政府のトップなどにしただろうか」とアメリカの民主主義を賛美する記事を書いたそうだ。オバマの当選は、ブッシュ政権下で低落したアメリカの評価を一気に高める働きをしたわけだ。

 しかし、こうした賞賛の嵐を見ると、イタリアの新聞記事の見出しの言葉のほうが印象に残る。ジョルナーレ紙は、こうした熱狂に水をかけるかのようにこう書いたという。

「彼はただの大統領だ。救世主ではない」。

 たしかに。アフリカ系の大統領が誕生したことは画期的なことではあるが、経済混乱は深刻だし、テロの危機も去ってはいない。アメリカ大統領の仕事が自国の利益を守ることであり、他国が好ましいと思うことをするかどうかもわからない。世界中で歓喜の声があがるなか、こうした見出しを打ってみせる新聞には凄みも感じる。

afterward
次回は、オバマの当選でアメリカが変わったかどうかについて。若い世代を中心に、どうやらアメリカの有権者の思想傾向が変わってきたようだ。

関連サイト
●オバマ当選に対する各国のメディアの反応を伝えるピュー・リサーチセンターの11月13日のレポート「Global Media Celebrate Obama Victory -- But Cautious Too」(http://pewresearch.org/pubs/1033/global-media-celebrate-obama-victory-but-cautious-too)。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.561)

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