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2008.03.14

ポータルサイトはどこへ行く?

米ヤフーはマイクロソフトに買収されようとしているが、
巨大ポータルサイトに生き残る道はないのか?
広告やオープンIDなどの動きを見ながら考えてみる

●いつまで続く? 地味な3行ネット広告の時代

 マイクロソフトの米ヤフー買収の動きは、グーグルがほんとうに強いということをあらためて感じさせる。マイクロソフトがヤフーを何としても買収したいと必死になっているのは、検索連動広告やネット広告について独力ではすぐにグーグルに追いつく方法がないからだろう。ヤフーも、マイクロソフトの買収申し出をはねかえすだけの説得力のあるプランを株主たちに示すのはむずかしいようだ。グーグルの検索技術の強さが、現在のネット広告市場での優位を導き出している。
 しかし、こうした状態はずっと続くのだろうか。
 
 グーグルの広告はおもに、検索やサイトの内容に応じて表示される地味な数行のテキスト広告だ。重要なネット広告がそうしたものであるという状況が、いつまでも続くとは思えない。
 
 私は、検索やブログの広告はほとんど見ない。しかし、そんな人がいてもかまわない。広告をクリックする人の割合は少なくても、広告がたくさん表示されれば積もり積もってそれなりのクリック数になるというのがそうした広告の理屈だ。けれども、広告収入を得ようとかライバルに無駄な出費をさせようということで広告をクリックする詐欺的な行為が少なからずあるし、ネット歴が長い人が増えてくればくるほど、検索結果に表われた広告をついうっかりクリックするなどということもなくなる。
 
 ところが私も、動画の広告だと、つい見てしまうことがある。おもしろい動画だったりすると、クリックして動画広告を提供している会社のサイトにアクセスし、さらに情報を得ようとしたりまでする。こうしたことは私だけではないだろう。
 ブロードバンドが浸透するまでは、文字や静止画の広告が中心にならざるをえない。
 そもそも広告は、20世紀前半までは文字や静止画が中心だった。しかしテレビが登場すると、動画広告が稼ぎ頭になった。
 それと同じく、いまは新聞や雑誌の広告がネット広告と競っている状態だが、ブロードバンドの時代がいよいよ進み、もっとネットで動画を見るようになれば、こんどはテレビ広告との競争になり、動画広告が高いシェアを占めるようになる。
 新聞の倍以上あるテレビ広告の売り上げがネット広告へと本格的に流れこめば、ネット広告はこれまで以上の伸びを示す。こうした時代が来れば、多様なコンテンツやサービスを提供しグーグルにまさるアクセスを集めているヤフーは、その強みが生きる。

●動画広告の時代とポータルサイト

 グーグルは、コンテンツをたくみに集め一覧表示することはうまいが、おもしろいコンテンツをみずから作りだしているわけではない。ユーチューブのようにグーグルが「買ってきたサービス」は別として、おもなサービスは検索だから、グーグルは、いわば「通過するため」に使われている。
 そうした役割のグーグルが、数行のテキスト広告ならばともかく、検索結果の横や他人のサイトに派手な動画広告を出せば、利用者やサイト運営者にいやがられる可能性がある。

 たとえサイト運営者が受け入れたとしても、ブランド価値を守りたい大手企業は、どこに広告が出てもいいとは考えない。そうした企業には、アクセスが多く、内容が安心できるポータルサイトのページは魅力的だ。動画広告の時代には、ブランド価値がありアクセスもあるポータルサイトの価値は高まるだろう。

 検索連動広告では、グーグルを超えないかぎり、グーグルと競争するのは難しい。同じ土俵で戦ってもうまく行くとは思えないが、動画広告という新たな土俵では、強力なポータルサイトが盛り返すチャンスはある。
 
●「オープン化」がめざすもの

 それ以外にも、ヤフーのようなポータルサイトが強みを発揮できるところがある。
 いろいろなネットのサービスを使うたびに、それぞれのサイトでIDやパスワードを登録しなければならないのはわずらわしい。つい同じIDやパスワードを使い回ししがちだが、信用できるかどうかわからないサイトでそんなことをするのは考えものだ。
 ヤフーは、自分たちのIDを「オープンID」として利用可能にしている。ヤフーのIDをオープンIDに設定しておけば、対応サイトでログインできる。ヤフーのほか、グーグル、マイクロソフトといった大手や、ベリサインのような認証技術をもつところがこのプロジェクトに加わることを表明し、オープンIDの活動に弾みがついてきた。

 日本のヤフーは、この「オープンID」以外にもオープン戦略を進めている。たとえば課金についても、ヤフーでクレジット番号などを登録していれば、ヤフーのほうで処理をすることを考えているそうだ。
 よく知らないサイトでクレジットカード番号などを入力するのはためらわれるが、大手の信頼できるサイトがそうした面倒を見てくれるというのであれば、利用者はありがたい。
 また中小のサービス提供者も、個人情報の管理や課金などを大手サイトがやってくれれば、おもしろいサービスを作ることだけに専念できる。
 利用者にとっても新たなサービスを始めようとする企業にも都合がいい。

 ヤフーとしては、広告を表示する媒体を増やすためにも、自分たちと協力関係にある外部サービスのネットワークを拡大していきたいようだ。
 ネット広告では、利用者がどのようなサイトへアクセスし購入などの行動をしたかという履歴に応じて広告を出す行動ターゲティングと呼ばれる広告が次世代の技術として注目され、ヤフー・ジャパンも採用している。
 この広告は、利用者の行動をできるだけ広範にフォローし、どういうことに関心を持っているかをつかんだうえで広告を出すのが効果的だ。広いネットワークを持っている広告提供者が有利になる。
 ヤフーがオープン化を進めるのは、「時代の流れ」というだけでなく、こうした広告のためでもある。

 何ごとにも光と影はつきものだが、ヤフーがオープンIDへの対応を始めたといっても、IDの提供者としてであり、少なくともいまのところは、たとえばグーグルのIDでヤフーの認証が通るわけではない。大手サイトは、自分のところのIDを他のサイトで使えるようにはするが、他のサイトのIDを自分のところで使えるようにはなかなかしない。
 信用度の低いサイトの認証を利用して入ってこられても困るということはあるだろうが、広告や課金技術などとあわせて、ウェブサイトがヤフーやグーグル、マイクロソフトなど巨大ネット企業を中心に色分けされていく可能性もある。巨大グループのいずれかのネットワークに入らないと、ほかのサイトのサービスは、利用者のアクセスや広告効果の面で不利になり、生き残りにくい‥‥などということになっていくとしたら、それはかなり息苦しい。

afterword
「オープンID」は一見いいことずくめのようだが、それひとつであちこちのサイトやサービスにログインできるので、フィッシングなどによって詐取されると被害は大きい。そうした懸念がどこまでなくなるかが普及のカギだろう。

関連サイト
●ヤフー・ジャパンのOpenIDのページ(http://openid.yahoo.co.jp/)。ヤフーのIDをOpenIDに設定すれば、対応サイトで、新たなIDやパスワードを登録する必要がなくなる。もっとも対応しているサイトはまだそれほどはない。
●2月8日、マイクロソフト、ヤフー、グーグル、IBM、ベリサインがOpenIDファウンデーションの理事になることが発表された(http://www.microsoft.com/presspass/press/2008/feb08/02-07MSOpenIDPR.mspx)。
●2月28日、テクノラティジャパン、ニフティ、ミクシィ、ヤフー、ライブドアなどが加わって、OpenIDファウンデーション・ジャパン(仮称)が設立されることが発表された(http://openid.net/foundation/chapters/japan/)。
●オープンIDも含めたヤフー・ジャパンの「オープン戦略」については、井上雅博社長のこのインタヴュー【http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20080212/147022/】が参考になる。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.524)

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