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2008.02.15

誕生した大手3新聞社の連合サイトの運命はいかに?

朝日、読売、日経の3紙が事業組合を結成し、
連合サイトをオープンした。
いろいろな思いが交錯しているのが見てとれておもしろい

●今年は、ニュース・サイトが熱い?

 ニュース・サイトをめぐる争いが活発化している。
 1月1日にヤフーのトップページが一変したのには、びっくりした人も多いだろう。
 アクセスすると、トップページ上部の中央に、ニュースの特集サイト「トピックス」の見出しがどんと現われるようになった。

 それまでは、オークションやショッピングなどヤフーの自前のサービスへのリンクがトップページ最上段の「ひな壇」に置かれていた。「自前のサービスを利用してお金を落としたり広告を見たりしてよね」というレイアウトだったわけだから、これは大転換だ。
 ヤフーにアクセスするといつも同じ各種サービスへのリンクが目に入るというのではおもしろくない。リニューアルにあたってヤフーは、「一日に何度も訪れたくなるトップページを目指す」と言っていたが、そのためには、時々刻々変わるニュースが最適だと思ったわけだ。

 ヤフーのようなポータルサイトにおけるニュースの重要性が認識される一方で、皮肉なことに、記事を提供する新聞社のほうは、購読者をネットにとられて不安感が高まっている。
 ネットでも、新聞社のサイトへのアクセスは、ヤフー・ニュースにくらべて大きく劣る。ネットレイティングスが明らかにした2年ほど前のデータでは、全国紙の新聞社サイトへのアクセスは、ヤフー・トピックスの4分の1ほどにすぎなかった。ネットが普及すればするほど、紙の新聞は苦しくなっていく。新聞社は手をこまねいているわけにはいかず、ネットにもっと力を入れざるをえない。

 昨年10月にはMSNが毎日新聞との提携を解消して産経新聞と組み、毎日のほうはオールアバウトと手を結ぶという一大変動があった。1月31日には、日経、朝日、読売の3社が共同で、「あらたにす」というサイトを開設した。
 サイト名は、「新たにする」という古語にかけたのと、「新+S=NEWS」ということなのだそうだが、もう少しましなネーミングはなかったのかという気がする。古めかしいし、そもそも覚えにくい。覚えにくいようでは検索もしてもらいにくい。そんなことも考えなかったのだとしたら先行き明るくない気はするのだが、オープンしたサイトからは、ライバルが手を取りあってひとつのサイトを作ることのむずかしさが見えてきておもしろい。

●他紙の参入障壁のページ・レイアウト

 異なる3社がサイトを作るということになると、まずページ・レイアウトが問題になる。
 当然ながら、トップに表示されるほうがインパクトがある。ヤフー・ニュースなどの場合は第三者であるヤフーがイニシアティヴを持って構成しているのだろうが、ライバル紙のあいだで記事の序列をどうやってつけるのだろうと思って楽しみにしていたら、拍子抜けするデザインになっていた。
 朝日、日経、読売と3列に並んでいるのだ。

 この構成は一貫していて、トップページの新聞一面の比較はもちろん、社会面や社説の比較、「書評」「イベント」「おすすめ企画」「最新ニュース」、これらのページはいずれも3列構成で、そうなっていないのは、中国製ギョーザ食中毒事件やアメリカ大統領選挙などの特集ページと、著名人による新聞読み比べの独自企画ページだけだった。
 なるほどこれならそれぞれの新聞社が独自に構成でき、ケンカにはならない。
 読みくらべできるのがこのサイトの特徴とのことだが、ライバル会社が一緒にサイトを作るには、なるほどこれ以外はないというコンセプトである。

 もっとも、昨年10月の提携発表のときには、3社以外の新聞社の参加も可能とのことだった。しかし、列の数はあまり増やせないだろうから、このレイアウトだと、あまり多くの新聞社が参加することはできない。
 とはいえ、サイトを作ろうとするたびに、「各社相談のうえ」とか、場合によっては「それぞれの会社に持ち帰って」などということになるんじゃないかと思っていた野次馬の期待は裏切られるものになっていた。

 ただし、この構成でも損得は出る。
 ウェブページのように横書きの場合は左から右へ読んでいくので、左端の朝日の列から読むということになりやすい。また真ん中にある日経もぱっと目に入りやすい。この並び方だと、右端の読売が不利だろう。
 
 とはいえ、このサイトに賭ける度合いは、さしあたり朝日・日経のほうが読売より上のはずだ。読売はまだ超ビッグサイトのヤフーに記事を提供しているが、朝日と日経は手を切っている。毎日はMSNと離れたものの、ヤフー・ニュースとの関係を強化した結果アクセスを増やしたそうで、ヤフーの力は群を抜いている。ヤフーに記事を提供している読売は実際、朝日や日経より月間利用者数が多いようだ。朝日や日経はそのぶん頑張らなければならないわけだ。

●検索結果上位に進出するには3紙連合を組むしかなかった

 オープン初日に、「あらたにす」を検索してみたところ、その結果は興味深いものだった。
 ヤフーでもグーグルでも、検索結果のトップに出てきたのは、当の「あらたにす」だった。
 しかし、ヤフーでの2位は、ニフティの話題のニュース発見サイト「トピックイット」で、以下ITニュースの「CNET」、ポータルサイトの「インフォシーク」のそれぞれ「あらたにす」の記事だった。ようやく5位に読売のサイトの記事が出てきたが、その後もネット系メディアが続き、トップ10に日経や朝日のサイトの記事はなかった。ヤフーの検索結果順位の変動はかなり激しいが、私が初日に検索してみたときにはこんな結果だった。

 グーグルはもっと印象的な検索結果だ。
 2位以下は「ITメディア」「CNET」「インターネット・ウォッチ」「マイコミジャーナル」とネットメディアが上位を占めた。5位に日経、8位に読売のサイトの記事が出てくるものの、6位「ギガジン」、7位「ジャンジャン」とネットメディアに押されている。3紙のサイトは、自分たちのニュースについても検索結果上位を占められず、トップをとるには3社が手を結ぶしかなかったということが実証されている。

 3社が結成した事業組合の理事長は、月間400万ページビューをめざし、3年後にバナー広告で単年度黒字にするとのことだった。しかしこのサイトは、さしあたり各新聞社のサイトへアクセスを呼びこむための仕掛けでしかない。
 記事の見出しをクリックすると、各紙のサイトへ飛ぶ。つまり「あらたにす」の多くのページはリンク集にすぎず、本文はこのサイトにないのだ。ユーザーがサイト内に長時間とどまる作りにはなっていない。

 サイトへのアクセスを増やすためにライバル同士が手を結びサイトを作るという試みは、テレビが先行してやっているが、ネットでは結局、大手メディアも連合してサイトを作らないと生き残ってはいけない、ということなのだろうか。

afterword
アメリカの新聞サイトへのアクセスは、急増というほどではないにしても、増えてはいる。米新聞協会の調査では、04年12月からの3年で、ユニークユーザーでほぼ1・5倍、ページヴューで2倍になっている。

関連サイト
●1月31日に朝日、読売、日経の3紙が立ち上げたサイト「あらたにす」(http://allatanys.jp/)。紙面の比較をするというのなら、どうして紙面そのものを見せないのだろうか。各新聞社のサイトへアクセスを導くことだけしか考えていない、と思われても仕方がない。春に増強の予定とのことだから、そのときにはこうした機能も盛りこまれるのだろうか。
●それぞれのサイトへのアクセスを増やすために、ライバルである日本テレビ、TBS、フジ、テレビ朝日、テレビ東京と在京キー局がそろって06年に「ドガッチ」というサイトを作っている(http://dogatch.jp/index.html)。このサイトも各テレビ局のコンテンツへの呼びこみ役といった性格が強かったが、このところ充実してきた。とはいえ、主要テレビ局のサイトの利用時間はこのところ増えていないらしい。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.520)

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