« ネット広告の近未来はどのようなものになる? | トップページ | ミクシィの秘密――あるいは、ミニブログはなぜ人気があるのか »

2008.02.01

ウェブが機能しなくなる危機が迫っている

ウェブが機能しなくなるなどということは
いまさら考えられない、と思うかもしれないが、
じつは、ウェブを壊すのはけっこう簡単かもしれない

●ウェブを破壊する方法

 ネット広告の進展についてあれこれ見てまわっているうちに、恐ろしいことに気がついた。ウェブを機能させなくするのはけっこう簡単で、もしかするとすでにそうした方向に向けて少しずつ動いているのではないか。

 ネットのツールを役に立たなくさせる所業は、すでにいろいろとある。迷惑メールを山のように送れば、メールが機能しなくなるし、最近は、ブログのトラックバックなどでもスパムが増えている。ちょっと注目度の高いブログなどでは、開設者がスパムを排除しなければ、内容に関係のない宣伝のためのトラックバックがずらっと並ぶ、ということになってしまう。
 ウェブは、いうまでもなくリンクで成り立っている。リンクが機能しなくなれば、ウェブという構造物の最大の特徴がなくなるが、実際にそうした危機が迫っているように思われる。

 グーグルは、リンク広告をクリックされたときに広告費を払うクリック課金広告を採用して、大成長を遂げた。しかし昨年、購入や登録、サービスの申し込みなど具体的な成果があったときにだけ広告費を払うペイ・パー・アクション(PPA)広告を始めた。じつはこのときグーグルは、もうひとつ新たな広告の試みを同じプレスリリースで明らかにし開始している。リンク広告を本文に埋めこめるようにしたのだ。

 これまでのグーグルの広告は、ブログ本文などとは別に、「Ads by Google」と表記し広告とわかる形で表示している。ところが、グーグルのこの新しいリンク広告は、本文に埋めこまれ、一見しただけではわからない。
 グーグルのサポートページでは、このリンク広告について、 「サイト内に広告を自然に表示して商品を宣伝できるよう」テキスト中にリンクを掲載できると、次のような例を示している。

「このツールは便利です。 高機能のツールを今すぐ買うようみなさんに自信を持ってお勧めします」

 傍線部分がリンク広告文だ。マウスを置くと、「Ads by Google」と表示され広告だとわかるようになっているとのことだが、逆に言えば、マウスを置かなければ広告だとは気がつかない。
 グーグルは、この広告の利用を、過去30日間に広告目的が500回以上達成できた広告主だけを対象にするなど限定しており、こうした広告を目にする機会はさしあたりあまりない。だから、この広告を問題だと気がつく人はまだ少ないと思われる。

●広告だとわかってトクすることはない?

 グーグルはこうした広告キャンペーンを効果的に行なうためには、リンク広告文に「購入」「注文」「購買」などの行動を促すフレーズを使用することや、広告テキストに商品名を含めることを勧めている。たしかにこうすれば、(一目瞭然というわけではないにしても)広告だと感じとりやすくはなるだろう。
 しかし、広告主にとって、それがほんとうにプラスかどうかは微妙である。広告だとわからずにクリックしてもらったほうがトクという考え方もあるからだ。
 ウェブ歴が短い利用者は、よくわからず広告をクリックしたりもするが、ウェブに習熟している人が増えれば増えるほど、広告だとわかればクリックしなくなる。商品名はもちろん、広告だということもわからないような広告文にしてクリックさせたほうがいい、と広告主が考えたとしても不思議はない。

 商品名を入れることを勧めておきながら、じつは上の例でも商品名は入っていない。「高機能のツール」とあるだけだ。クリックしてみると、グーグルの広告のサポート・ページが出てきた。
 便利ですぐ買うように自信を持って勧めているのはグーグルの広告ツールという設定らしいが、この例からして、ただちに広告とはわからない。

 またグーグルは、広告だということがわかるような広告文にすることを勧める一方で、次のような推奨もしている。

「短いリンクはサイト運営者がより多くのサイトやコンテンツで使用できるため、掲載結果がよくなる傾向があります。半角 90文字まで指定できますが、単語数としては5つ以下にすることをお勧めいたします。ブランド名を使用して、サイト運営者が柔軟に使用できるようにすると、なおよいでしょう」

 意地悪い言い方をすれば、短いリンク広告文のほうが、サイトの開設者がより自然にかつ柔軟に(つまり広告とはわからないように)文章にとりこみやすい。
 
 クリック課金の場合は、クリックされれば出費をともなうので、広告主は具体的な成果があがるよう努力する。しかし、成果報酬型(PPA)広告はクリックされただけでは広告費が発生しないから、アクセスがただちに成果につながらなくても困らない。
 たくさんの人にクリックしてアクセスしてもらい、そのうちわずかでも広告目的を達成してくれればそれでいい、という発想になりがちだ。
 広告主としては、クリックしたリンクが広告だとわかろうがわかるまいが、自分のサイトに多くの人を呼びこんでコンテンツを見せたほうがトク、ということになる。できるだけ多くのウェブページにリンク広告をばらまいておきたい、とも考えるだろう。

●「またこのリンクは広告かも?」と思い始めると‥‥

 PPA広告を設置するサイト運営者たちのほうは、どのように考えるだろうか。次の2通りの考え方がありうるだろう。

 具体的な成果がなければ設置した広告の報酬を得られないので、成果を期待しやすい広告に絞って載せるサイト運営者。やたらにリンク広告を載せれば、せっかくアクセスしてくれた閲覧者を逃してしまうことになるから、成果につながるリンク広告だけに絞ろうというわけだ。
 
 しかし、絞るためには、それなりのノウハウがいる。
 広告初心者や広告収入目的でサイトを作っている運営者などは、数打てば当たる方式で、リンク広告を満載することも考えられる。
 使えるリンク広告をすべて張り、広告主のサイトに飛んでいった人のうちわずかでも広告主の設定したターゲットを満たしてくれればそれでいい、と考える。

 そういうサイトがぽつぽつとでも出てきて、かなりの割合でリンクがじつは広告だということになってくると、ウェブ閲覧者は、「また広告かもしれない」と思って、マウスを置くことがだんだんと面倒に感じられてくる、ということはきわめてありそうだ。
 また、マウスを置いても広告とはわからないようなネット広告を始める会社も現われるかもしれない。さらに、サイトの文章に合致したリンク広告を自動で張る仕組みなどというのもできるはずだ。

 こうしたことが広まれば、リンクの有用性はどんどん低下する。
 本文に広告を入れるというグーグルの新たなやり方は、このようにウェブの最重要な仕組みに深刻なダメージをもたらしかねない。グーグルのように影響力のある会社は、その仕組みをちょっと変えるだけで、ウェブに信じられないぐらいの打撃を与えることができるのだ。
 ますます増えていく広告といかに折り合いをつけるかが、これからのウェブの大きな課題だろう。

afterword
最後に書いた自動リンクで思い浮かべたのは、「はてなダイアリー」だ。キーワードに自動リンクが張られ、ほかの人とつながることができるいい仕組みともいえるが、初めて見たとき私はいやな感じがした。自動的にたくさんのリンクが張られると、リンクが無意味化してしまうからだ。

関連サイト
●昨年6月(米国では3月)に導入されたグーグルのテキスト・リンク広告についての説明ページ(http://adwords.google.co.jp/support/bin/answer.py?answer=62485&topic=11637)。
●文章内に溶けこませるリンク広告の問題を指摘しているサイトがあるかと探してみたが、見つかったのは、Techdirtのこのブログぐらいだった(http://www.techdirt.com/articles/20070320/162511.shtml)。PPA広告と埋め込み式のリンク広告には直接的な結びつきはないのに、あえてひとつのプレスリリースで発表したのは、インパクトの強いPPA広告で、新しいリンク広告への批判を回避するためではないかと疑っている。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.518)

【追記】
 これは、グーグルが始めたリンク広告とほぼおなじだ。
 このページの説明によれば、自動リンクも張られるらしい。
 このページで、サンプルを見ることができる。

 

« ネット広告の近未来はどのようなものになる? | トップページ | ミクシィの秘密――あるいは、ミニブログはなぜ人気があるのか »

グーグル」カテゴリの記事

広告」カテゴリの記事

2014年8月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31