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2008.01.18

クリック詐欺対策に関する詳細なレポートを読んでみた

ネット広告費の過大な請求が行なわれているのか。
関係者の立場によって言うことは大きく異なっている。
もっとも信頼できそうな調査報告書を読んでみると‥‥

●グーグルの広告についての詳細なレポート

 クリック課金広告で急成長を続けるグーグルは、クリック詐欺を含めた無効なクリックについて、過大請求している割合は0・02パーセント以下にすぎない、と主張している。一方、調査会社ははるかに多い数字をあげ、クリック詐欺はますます増えていると言っている。

 先月も、「クリック・フォレンシクス」という会社が、クリック詐欺の割合は前年より10パーセント上がり28パーセントになったと発表している。4回のクリックのうち1回以上がインチキなクリックだというわけだ。
 泥仕合のようなそんな議論が繰り広げられているあいだにも、「クリック詐欺対策産業」は着実に成長している。クリック詐欺を摘発するツールが開発され、コンサルティングを行なう企業が続々と生まれている。クリック詐欺が増えてもらったほうがありがたい、少なくとも増えたという調査結果を求める企業グループが確実に存在している。

「クリック・フォレンシクス」も、調査結果を明らかにした10日後、クリック詐欺をフィルタリングする新しいソフトを出している。
 調査と対策ビジネスがカップリングしているのを見るにつけ、これらの調査結果は自分たちの商売のために過大な数字を上げているというグーグルの批判もまんざら根拠がないとは思えなくなる。しかし、調査自体が疑わしいとなれば、何を信じればいいのだろうか。

 グーグルは、これらの調査結果を正しいとは認めないものの、広告主たちに訴えられた裁判では、最大9000万ドルまでの支払いに応じることで和解しているが、この裁判の過程で、第三者の専門家がグーグルの広告事業について調査することを受け入れた。その調査結果が公開されている。

●グーグルのクリック詐欺対策の詳細

 調査にあたったのは、情報システムを専門とするニューヨーク大学ビジネススクールの教授だ。47ページもあるレポートだが、さしあたり、この問題に関してもっとも信頼できそうな文献だ。グーグルの広告やクリック詐欺対策の歴史、クリック詐欺にどう対処しているかなどがかなり具体的に記述されている。
 グーグルは、自分たちの検索や広告の技術的な詳細を明らかにすると、その裏をかく技術が開発されてしまうということで、この手の調査をいやがってきた。だからこうしたレポートはめずらしい。

 グーグルは公式ブログで、「これは独立したレポートなので、われわれが完全には同意できないいくつかの点はあるものの、われわれが言ってきたことが認められている」とコメントし、レポートを掲載している。そうしたことからもわかるとおり、このレポートは、総じてグーグルに軍配をあげており、結論は、「クリック詐欺にたいするグーグルの努力は理にかなったものだ」となっている。

 とはいえ、この教授が、調査にあたってそうとうな戸惑いを感じたこともレポートからはうかがえる。というのは、グーグル自身認めているように、そもそもどのクリックがインチキなのかがはっきりしないのだ。クリックした人の心のなかを覗くことができない以上、インチキかどうかは推測するしかない。このレポートによれば、次の3つの方法でグーグルは無効なクリックを推定しているという。

① 統計的に見て異常なクリックがなされた場合。
 
たとえば、週4回のクリックが平均であるリンク広告を、特定の人物が100回クリックすればそれはおかしいということになる。しかし、この方法も完璧ではありえない。ノーマルなクリックをどう決めて、どれぐらい逸脱していれば「おかしい」と判断するのか。レポートはこうした問題があることも指摘している。

② ルールを決めて無効なクリックと見なす方法。
 たとえば、リンクをクリックするときに、必要がないのにダブル・クリックする人がいる。二度目のクリックは無効と判断する、といったぐあいだ。ダブル・クリックは単純でわかりやすい例だが、何をダブル・クリックとするかはかならずしも明確ではない。つまり、最初のクリックからどれぐらいの時間内にクリックされたものをダブル・クリックと見なすのか。結局、この場合も、明確に定義できないものを無効なクリックと判断しなければならないという問題がある。
 さらに、ダブル・クリックを請求しないとグーグルが決めたのは05年3月のことだという。何でそんなに時間がかかったのかとも教授はいぶかっている。

③ 過去のデータを使って判別するということもグーグルはやっているそうだが、これは先のふたつの方法に比べてはるかに適用例が少ないという。

●レポートの信頼度

 さて、これらの方法で発見されず、広告費が請求されてしまう割合はどれぐらいなのか。広告主が一番知りたいのはそれだろう。それによって賠償額も変わってくる。
 肝心な点だが、しかし、このレポートははっきりとした数値をあげていない。そんなぐあいで、グーグルがやっている対策がうまくいっているとどうして言えるのか。じつはグーグルが正しいというのは、推論の結果でしかない。
 グーグルは、右の3つについて、まずリアルタイムでフィルタリングし、次にオフラインでソフトや人力でやっている。前段階を通り過ぎて次の段階で発見される無効なクリックが少ないので、前段階のチェックはかなりうまくいっているのだろうと推論する。先のような結論を導き出した第一の根拠はこうした方法によっている。

 また、グーグルは新たなフィルタリング・ソフトを導入してみたものの、それで見つかる無効なクリックもほとんどなかったという。だから、現状の仕組みはうまくいっていると考えるしかない、という推論もしている。

 もちろん教授は、これが完璧な結論だとは思っていない。「科学者としては、方法やアプローチが妥当かどうかについて、たいていはもっと直接的で客観的、決定的な証拠を見つける」のだが、この場合はほかに方法がなかった、しかし、右のような形で判断すると、グーグルの無効なクリックの排除がうまくいっているという結論になる、といったふうに述べている。

 さらに広告主が困惑するようなことも書かれている。グーグルがうまくやっているというのは、あくまでも統計的に見てのことであり、特定の広告主が甚大な被害を受けていないということを意味しているわけではないというのだ。こうした被害は統計的数字の中に埋もれている可能性があるというわけだ。
 かなりの量のレポートのなかの10行ほどに書かれていることなので、結論だけ読んだ人は気づかないかもしれない。しかし、広告主としては、「統計的に妥当」かどうかではなく、「うちの会社の広告がちゃんと機能しているのか」を知りたいわけだから、このくだりを読めば、不安を感じずにはいないだろう。

afterword
 クリック詐欺についてあれこれ書いてきたが、結局のところ、クリック課金広告はどうなるのか。急速な市場拡大をしているが、このまま急成長を続けるのか。次回はそれについて書くことにしよう。

関連サイト
●クリック課金広告の過大請求があるのかについて、第三者の立場で調査したレポート(http://googleblog.blogspot.com/pdf/Tuzhilin_Report.pdf)と調査したニューヨーク大学教授アレクサンダー・チュージリンのサイト(http://pages.stern.nyu.edu/~atuzhili/)。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.516)

p>★あれこれ試してみるために、アドセンスを導入してみることにしました。

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