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2008.01.11

言いたくても言えず疑惑を招いている板挟みのグーグル

ニセのクリックによって広告費を増大させている、
という非難に対処することをグーグルは迫られた。
ちゃんとやっているのかそうでないのか、はたして‥‥?

●グーグルはクリック詐欺を放置している?

 このところ、ウェブサイトの広告に関心もないのにクリックし、利益誘導をねらうクリック詐欺について書いている。
 検索やウェブサイトの内容に応じて表示される広告は、1クリックいくらといった具合に課金される。クリックされればされるほど、ネット広告会社は儲かる仕組みだ。グーグル始めネット広告をやっている会社は、詐欺的なクリックに対する防止策をちゃんととっているのか――ということが、アメリカのネットでホットな話題になっている。

 そうしたなか、06年夏グーグルのCEOエリック・シュミットの発言をきっかけに、「グーグルはクリック詐欺の問題を軽視している」という批判が巻き起こり、それに対し、グーグルが反論するという事件があった。
 シュミットは講演で、次のようなことを言った。

 もしグーグルがクリック詐欺に対処せず、手に負えなくなれば、広告効果がなくなる。そうなれば、広告主は、広告入札の金額を引き下げるはずだ。このような反応によって、時間が経てば、広告効果に応じた出費に落ち着いていくにちがいない‥‥。

 市場メカニズムにまかせるということで、いかにもグーグルらしい。また一見もっともらしくもある。しかし、このとおりにいくとは限らない。広告主は、広告効果だけで入札金額を決めているわけではないだろう。ライバル企業との競争原理も働いている。たとえ広告効果が乏しいと思っても、ライバル企業が広告を出しているかぎり、そう簡単にオークションから降りるとも思えない。

 この発言をした講演会のビデオは、グーグル自身の手によってグーグルの動画サイトで公開された。公開したときには、グーグルは波紋を呼ぶとは思わなかったようだ。しかし、影響力のあるブログで紹介され、議論が巻き起こった。そして、クリック詐欺であろうと広告をクリックされればグーグルは儲かるのだから、真剣に対処するはずがない、などと批判された。

 私は、いくらなんでもグーグルがこんなセコイことは考えないだろうと思う。信用を失えば、グーグルの収入のほとんどである広告ビジネスは成り立たなくなる。一時、利益が増えたとしても、屋台骨が壊れてしまえばそれで終わりである。そうしたことに気がつかないほどグーグルが愚かだということはありえないだろう。

 案の定グーグルは、スタンフォード大学の経済政策研究所のイベントで、シュミットは、クリック詐欺に対する経済的な解決方法がないかと尋ねられたのに答えたもので、引用は文脈を無視している。グーグルの対応策を説明したのではなくて、仮定の問題に答えたにすぎない。グーグルはクリック詐欺に真剣に対処していると公式サイトで反論した。しかし、シュミットのこの発言は、グーグルがクリック詐欺の問題を甘く見ていた証拠として、アメリカのネットメディアでいまもって引用されている。

●クリック課金広告費が削減され始めた!?

 こうした好ましくない評判が立つことによる「実害」も、すでに起こり始めているようだ。

 06年7月、アウトセルという調査会社が、合計10億ドルほどの広告費になる407のスポンサー企業について調べたところ、16パーセントの企業がクリック課金の広告を完全にやめ、11パーセントが減らし、10パーセントが減らす計画があるとのことだった。つまり3分の1以上の企業がクリック課金広告をすでに削減したか削減する計画があるというわけだ。またスポンサー企業は14・6パーセントのクリックが不正と見ているとのことで、ネット広告会社にとっては恐るべきレポートだった。

 アウトセルは、この広告費の削減によって、クリック課金をしている会社は5億ドルの広告収入を失い、不正なクリックは8億ドル相当と見られるので計13億ドルの損害で、グーグルなどのビジネスモデルの脅威となっている、と言っている。

 まあグーグルの広告収入は伸び続けているから、グーグル自身がさしあたりどの程度、深刻な被害額と感じているかはともかくとして、メディアに書きたて続けられれば、その影響がボディブローのように効いてくることは避けられない。

 こうした情勢のなか、グーグルは、システム内部にかかわるようなことは明らかにしないという原則を少し緩和し、前回紹介したような自分たちの言い分を明らかにするレポートを発表した。そればかりでなく、昨年夏には、クリック詐欺に関する顧客向けサイト「広告トラフィック品質情報センター」をオープンしている。

●グーグルの対応策の詳細

 このサイトでグーグルは、クリック詐欺には、人を雇ってクリックさせる「クリック・ファーム」や、クリックを自動化するソフト「クリック・ボット」、さらに他人のコンピューターを乗っ取って「クリック・ボット」を使う「ボットネット」などの手口があることを紹介したうえで、こうしたクリック詐欺を含む「無効なクリック」に対して次の3段階の対処策をとっていると説明している。

①あらかたの無効なクリックは、リアルタイムで検出しフィルタリングしている。
② 次に、オフラインでソフトと人力を使って分析し排除している。
③ そのうえで、広告主の申し出に従って調べている(この過程で検出されるのは、メディアでさかんに語られることとは違って0・02パーセントに過ぎない)。

 グーグルはこのように述べ、リアルタイムのフィルタリングに「漏れ」があることは確かだが、無効なクリックの数を多く見積もることで、広告主にツケが回らないようにしているとも抗弁している。さらにグーグルは、ユーザーのサイト内の行動を解析するツールやキーワード設定の効果を把握できる仕組みなども提供し、信頼回復に努めている。

 しかし結局のところ、どのクリックが不正と判断しているのかがわからないと、妥当な対処をしているかどうかはっきりしない。問題の根本的な解決のためにはそうした情報が必要だ。けれどもそれは、グーグルがもっとも明かしたくないたぐいの情報だ。どういう判断をしているかを明らかにすると、裏をかく技術が開発されてしまうからだ。

 結局グーグルは、検索結果の順位をめぐる葛藤と同じ問題に直面していることになる。検索結果画面で自分のウェブサイトが何番目に表示されるかは、サイトにとって死活的に重要である。だから、グーグルが検索結果の順位を具体的にどう決めているかを知りたい。しかしグーグルとしては、それを明かしてしまえば不正が行なわれる心配がある。というわけで、グーグルは原理を示すだけで詳しく説明しようとはしない。その結果、検索結果の表示が適正に行なわれているかどうか、ときに疑いの眼を向けられてしまう。それと同じことがクリック詐欺をめぐっても起こっているわけだ。

afterword
グーグルは、無効なクリックは全クリックの10パーセント以下で、これは広告主に課金していないが、広告費としてもし計上したら何十億ドルにもなると言っている。米ヤフーも、12パーセントから15パーセントを破棄しているという。

関連サイト
●調査会社のアウトセルは、昨年7月、3分の1以上の企業がクリック課金広告をすでに削減したか削減する計画があるという調査結果を発表した(http://www.outsellinc.com/press/press_releases/click_fraud_threatens_google)。
●クリック詐欺に関する情報を提供しているグーグルの「広告トラフィック品質情報センター」(http://www.google.com/adwords/adtrafficquality/index.html)。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.515)

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