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2007.07.13

テレビは通販依存を強めていく?

テレビ放送が広告で成り立つ時代から、
通販によって成り立つ時代に変わり始めている?
テレビ通販のパワーはそんなことさえ感じさせる。

●驚くほど伸びているテレビ通販

 TBSの株主総会で、楽天排撃のための買収防衛策が大差で可決された。楽天の野望は打ち砕かれたかに見えるが、今後テレビ・ショッピングは、テレ ビのだいじな収益源になっていくのではないか。楽天がTBSにことのほか執着しているのも、テレビ局のこうした変化の方向を感じとっているからだろう。

 平日の午後や深夜に延々とやっているテレビ通販について、「見ている人がいるんだろうか」と何回か前に書いた。しかし、実際のところテレビ通販はかなり儲かっている。
  日経流通新聞によれば、05年度のテレビ通販企業24社の売上高は2545億円で、前年度比24・9パーセントの大幅増。上位陣の伸びはとくに著しい。 761億円の売り上げで業界トップのジュピターショップチャンネルは51パーセントの増加、582億円の売り上げで2位のQVCジャパン、3位のジャパ ネットたかたも3割前後伸びている。
 スカパー!やケーブルテレビでもテレビ通販専門チャンネルはいくつもあるし、地上波だってやっている。とくに地方局ではテレビ通販の番組枠はかなり大きい。いろいろな放送を使って、売り上げも増大しているのだから、買う人もそうとういるわけだ。

 何年か前のテレビドラマで、キムタクがジーパンをはいた検事らしからぬ検事の役をやっていた。テレビ通販にはまっているという設定で、健康器具な んかを「これはすごい!」と言われるとつい買ってしまうという役どころ。そうした器械を使って、キムタク検事がくねくね身体を動かしていた。
 し かし、テレビ通販のメインの顧客は、やはり検事というわけではなくて、中高年の女性だ。夫や子どもを送り出したあと買い物する彼女たちがもっともいいお客 さんだと、つい最近その手の業種の人からも聞いた。テレビ通販のなかでもそれぞれカラーがあるらしく、深夜の12時から1時がもっとも売れるところもある という。この時間帯に買うのはおもに昼間働いている女性で、ほかのピークは朝10時と夜10時から。この時間帯は、家事や育児が一段落した主婦層だ。

 テレビ通販の売上高の増大は、ひとつにはネットと連動することで相乗効果が出たからだ。もうひとつは、大手が24時間生放送を始めたことにある。 「誰が見ているんだか」といよいよ思う夜中の3時や4時に生放送するのは無駄な気がするが、「あと何台で売り切れ」などと迫る効果は大きいようだ。「こ れ、よさそうだな」とか「これ、安いな」と思っているときに「あと何台限り」などと絶叫されると、それが最後の一押しになって注文してしまう、などという ことは、キムタク検事でなくてもたしかにやりそうだ。また、反響が良ければ延長して売るといった芸当も、リアルタイムならばできる。

●録画視聴されないテレビ番組

 こうしたテレビ通販についてあれこれ調べていると、テレビにたいする見方も変わってくる。
 ハードディスク・レコーダーを使っている人 も、ニュースとスポーツ番組は比較的リアルタイムで視聴するというレポートを、アメリカの調査会社が発表している。このレポートでは触れられてはいないも のの、もうひとつリアルタイムで見られるのは、生放送をしているテレビ通販だろう。「何台限り」などと時々刻々変化していく生放送を録画して見ても仕方が ない。
 こうしたテレビ通販は見られているだけではダメで、購入してもらえなければ話にならない。逆に言えば、見てくれる人が少なくても、購入し てくれる人が高い割合でいればそれでいいわけだ。テレビ番組の価値基準は視聴率と言われるが、テレビ通販では視聴率よりも、商品を購入してくれる広告達成 率(コンバージョンレート)のほうが重要だ。売り上げがコストを上まわればとりあえず成果はあったわけで、視聴率とは少し異なった価値基準が働いているこ とになる。

●追い風のテレビ・ショッピング

 ネット広告と比較したときのテレビ広告の弱点は、広告効果を示すのがむずかしいことにある。広告の担当者が、「ブランド力があがります」などとお 偉方に説明しても、「ほんとうに投資に見あっているのか」と問われると数値を示しにくい。しかし、「物売り」に直結したテレビ通販の場合は、放送の効果は 一目瞭然だ。だから、ふつうのテレビCMまでもテレビ通販のようになっていく可能性は高いと思う。もっぱらテレビCMで売っている化粧品や健康食品はすで にいくつもあるが、テレビ通販もどきのこうしたCMは、広告効果がはっきりしているだけに増えていくのではないか。
 多チャンネル化し、オンデマ ンド放送など、テレビをディスプレイとして使うコンテンツが増えれば増えるほど、テレビ放送の一番組あたりの視聴者数は減っていく。一方で、デジタル放送 やワンセグなど双方向的なテレビの仕組みが出てきて、番組を見ながらただちに購入することもできるようになってきた。それだけにテレビ通販はなおさら有望 な資金源である。
 テレビ通販がテレビ局の収益の柱になっていくことは十分に考えられる‥‥というよりも、そうしたことはすでに始まっている。

●商社のテレビ戦略

 今年12月からBSデジタルの12チャンネルでハイビジョン放送を始めるワールド・ハイビジョン・チャンネルは、テレビ通販ありきでビジネスモデルが組み立てられている。放送時間の半分ほどはアメリカ最大のテレビ通販会社QVCの日本法人のテレビ通販番組になるようだ。
 このチャンネルは、三井物産が百パーセント出資したテレビ会社によって提供される。三井物産は、QVCジャパンにも出資しており、QVCの売り上げを伸ばすための戦略の一環としてBSデジタルに進出したと思われる。
 商社のことを企業相手のビジネスをする貿易会社のようにのみ思うのはもはや完全に時代遅れで、最近の商社は、メディアを動かし、消費者の近くで仕事をする会社に変貌している。
 テレビ通販だけでは魅力的なチャンネルにはならないから、FOXやMTV、ディズニー、ナショナル・ジオグラフィック・チャンネルなどの無料放送もし、もちろん広告も取る。しかし、テレビ通販の収入があるので、それほど広告が入らなくても黒字化できるらしい。
 スカパー!やケーブルにもテレビ通販専門チャンネルはあるし、テレビ通販会社に番組の枠を売るということは地上波でもやっている。しかし、いよいよテレビ通販を収益の柱にした無料全国放送のチャンネルがスタートするわけだ。
 キー局もすでに直接テレビ通販を手がけている。テレビ広告市場があやうくなっていけばいくほど、テレビ通販に頼る傾向は強まっていくにちがいない。

afterword
 30歳以上の女性がメインターゲットのテレビ通販に対し、若い男性が多いネットは、テレビ通販とはまた違う顧客がねらえるメディアだ。テレビ通販会社はふたつのメディアをうまく使えば、大幅な売り上げ増が期待できる。

関連サイト
●テレビ通販首位のジュピターショップチャンネル。いずれのテレビ通販会社もネットに力を入れ、リアルタイムの放送をネットでも流しており、一足早く「放送と通信の融合」を進めている。
●業界2位のQVCジャパン。今年12月からBSデジタルのハイビジョン放送に進出することで、ケーブルやスカパー!で力を持ったジュピターを抜き、首位に躍り出ることができるだろうか?

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.491)

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