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2007.07.06

タッチパネル・リモコンでテレビを操作する時代が始まる?

いまのリモコンは旧時代の遺物と書いたら、
思わぬ反響があった。
その結果、ネット時代の弱点と
新たなサービスの可能性に気がついた。

●すでに出ていたディスプレイ・リモコン

 本欄の原稿がきっかけで、ふたつの講演依頼が来た。ひとつはケーブルテレビのイベントで、もうひとつはネット系のシンポジウムだったが、こちらは タイミングが悪くて引き受けられなかった。週刊アスキーの1回のコラムでふたつの団体からすぐに講演依頼が来たのは初めてだったので、びっくりした。
 そのとき書いた原稿はこんど出した本に も収録したが、テレビ番組やネットの動画コンテンツを横断的に検索し、居間の大画面テレビで映し出す未来生活を予想した。そして、細かい電子番組表はテレ ビに表示するよりも、手もとのディスプレイに表示したほうが見やすいのだから、ディスプレイ付きのリモコンにしたらいい、と書いた。こうした装置でネット にアクセスできれば、テレビを見ながらウェブをブラウズすることもできる。さらに電子新聞や電子書籍を表示できるようにしたら、いよいよ電子新聞・電子書 籍の時代が来る、というわけだった。

 デジタルのテレビやレコーダーはかつてとは比べものにならないぐらいに操作が複雑になっている。だから、「せめてリモコンをどうにかしろよ」と思っている人は多かったようだ。
  毎回楽しみに読んでいるという読者の方からもメールをいただいた。こうしたリモコンは現実にできると思ったとのことで、カラオケ屋の端末にはそれに近いも のがあると教えていただいた。さっそくそのサイトにアクセスしてみると、下欄のような小型ディスプレイが現われた。検索はできるし、歌詞はもちろんアー ティスト情報や占い・ダイエットなどのエンターテイメントも表示できるそうで、なるほどこれを改良してテレビのリモコンに仕立てれば、もっと容易にテレビ を操作できるだろう。こうしたリモコンの登場は近いかもしれない。そんなふうに思っていたところ、やはり考える人はいるものだ。こうしたリモコンが世の中 にすでに出ていることを発見した。

●タッチパネル・リモコンで広がるテレビの用途

 総務省の「2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会」が、つい最近、報告書を出した。講演の前に少し勉強しておこうと、この研究会の 議事録を読んだところ、第五回で、東北ケーブルネットワークが日本テクトと開発した「楽ねっとテレビ」という規格で、タッチパネル式のリモコンを使ってい ると言う。サイトの写真を見ると、大型のテレビのわきに、ちょこんと小型のディスプレイが置かれている。

 ホームページ情報によれば、日本テクトは従業員数25名の会社とのことだが、タッチパネルのディスプレイやシステムを開発しているらしい。東北ケーブルは、研究会で次のように説明している。
  いままでもテレビを利用してインターネットができるサービスはあったけれども、リモコンが使いにくく普及しなかった。新たに開発したタッチパネル・リモコ ンでは、ポータルページを作って、それをクリックすることで近くのコンビニやスーパーから買い物でき、印鑑証明や住民票をとるといった行政サービスもでき るようにしたい。東北は過疎で高齢者の多い地域だが、こうしたタッチパネルなら誰でも簡単に操作でき、出かけにくい人の役に立つとのことだ。

 たしかに、冬の東北の一人暮らしの老人世帯などは、こうした装置があればずいぶん重宝するだろう。リモコンに代わって、誰にも使いやすいこのような装置にするだけで、テレビの用途はかなり広がってくるわけだ。

●「ネットで全国一律サービス」時代の地域密着の強み

 講演をすることにはなったものの、じつはケーブルテレビの将来に明るい展望があるとはあまり思えなかった。
 こんど出した本でもさかんに 書いたように、ネットの無料動画コンテンツはテレビでどんどん見ることができるようになる。BSデジタルでも無料放送が増えそうだし、ビデオ・オン・デマ ンドのサービスも本格化していく。また、ハードディスクプレーヤーを買えば、広告を飛ばして見ることのできる無料コンテンツが、見きれないぐらいに溜ま る。ネットにケータイ、音楽プレーヤーと多メディア化して「テレビ離れ」も語られるなか、ケーブルテレビやスカパー!のようなストリーム型の有料映像サー ビスにそれほど需要があるとは思えなかったのだ。
 もっともケーブルテレビは高速インターネット接続事業をやったこともあって、業績は伸びている。そうした経営上の数字もさることながら、この研究会の議事録をあれこれ読んで、ケーブルテレビの可能性についての考えが少し変わってきた。

 たしかに、ケーブルテレビのライバルになるようなサービスは次々と出てくる。ただ、それはほとんど、ネットや電波を使って、全国一律にぱっとコン テンツを送って終わり、である。効率はいいが、ほしいもの、見たいものが、自分の行ける範囲のどこにあるかといったことは、全国一律サービスではフォロー されない。地図検索によって情報を見つけることができるといっても、利用者側が積極的に情報を引っ張り出す必要があるし、少なくともさしあたりは動画付き の情報が得られるわけでもない。県単位の地上波地方局などよりももっと狭い範囲の情報を密度濃く提供してくれるサービスには一定の需要があるように思われ る。遠くのニュースのできごとでなく、いま地元で起こっていること、たとえば週末とか今晩どこに行くとおもしろいかを教えてくれれば役に立つ。

 また前回書いたように、次々と新たな技術やサービスが生まれ、買った機器はたちまち古くなる。いまは、レンタルのほうが経済的かもしれない。全国 のケーブル局をネットワークしているJCOMは、ハードディスク・レコーダーのレンタルを月800円でやっているが、こうした事業も有望かもしれない。

 デジタル機器はどんどん複雑になっている。地域密着型サービスを売りにしているケーブルテレビだから、ハイテク機器や今後普及するホームネット ワークなどを、機器の販売やレンタルと設置サービスこみで提供するという手もある。家電量販店やネット販売が増えたために「街の電気屋さん」は姿を消して いる。「街の電気屋さん」がやってくれていたようなきめ細かいサービスは、高齢者世帯が増えているいま需要があるはずだ。

 電子機器の販売やレンタルだけでなく、扱う商品を増やし「家庭のご用聞き」の役を担い、さらに(健康器具などを売りながら)健康面のサポートもし、いま問題になっている介護までやる「家庭の便利屋さん」的な存在になっていく道さえケーブルテレビにはあるかもしれない。

「ネットで全国一律」というサービスが力を持ったとしても、その一方で「地域密着」というのは強みになりうる。もちろん、徹底して地域密着をやらなければ強みにはならないが、ケーブルテレビに関する資料をあれこれ読んでいたら、そんな可能性があることに気がついた。

afterword
 総務省の「2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会」第5回で説明されている米子の中海テレビは、地域密着型ケーブルの模範例になっている。この議事録はネットで公開されているので、興味のある人は読んでみてください。

関連サイト
●ハイテク・カラオケ・システムを提供してるジョイサウンドの「キョクナビ」。「未来のディスプレイ・リモコン」の雛形か?
●東北ケーブルネットワークと日本テクトが共同開発した「楽ねっとテレビ」タッチパネル・リモコン

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.490)

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