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2007.06.08

グローバリズムは歓迎? それとも反対?――オンライン国際調査

グローバリズムによって仕事を奪われる国がある一方、
栄える国もある。
危機感を抱きながらも逃れられない
グローバリズムにたいする複雑な感情が見えてきた。

●海外の情報や娯楽を楽しむ国・それほどでもない国

 「オフショアリング」と呼ばれる業務の海外移転が英語圏の国を中心に進んでいる。雇用を守れと外国人労働者の流入を防げば、企業は仕事を国外へ移 すだけ。グローバリズムの進むスピードは一律ではないが、いずれの国もこうした流れからは逃れられない。先進国の労働者にとっては不幸な事態だが、後進国 の労働者のなかには仕事や収入が増える人たちもいる。働く人びとの賃金はいずれ世界的規模で平均化していくにちがいない、などと前回書いた。
 調 査会社のACニールセンによるグローバリズムについての国際調査が昨年8月に発表されている。一昨年秋、世界42の国・地域の23500人にオンラインで 尋ねたものだ。それを見ると、グローバリズムにたいする先進国、発展途上国それぞれの国民感情やお国柄がわかっておもしろい。
 グローバル企業が 世界のニュースや娯楽・情報を提供してくれているかという質問に、「そう思う」と答えた人がもっとも多かったのはマレーシア。次がシンガポール。それぞれ 88パーセント、84パーセントもの人が賛成している。マレーシアは90年代後半から「マルチメディア・スーパー・コリドール」と銘打った国家プロジェク トを推進し、国をあげて先端都市作りを進めてきた。そうした実績も反映しているのだろう。
 この問いに「そう思う」と答えたトップ10は、フィリピン、香港、台湾とアジアの国が半分を占めている。地域別でも、アジアは70パーセントの人が「そう思う」と答え、75パーセントのラテンアメリカに次いでいる。
  「世界で利用されている商品やサービスをグローバル企業が提供してくれている」と実感している人が多いのもやはり新興国で、81パーセントが賛成した南ア フリカを筆頭に、インド、フィリピン、シンガポール、マレーシアといったアジアの国がいずれも75パーセント前後の高率になっている。
 反対に、 「グローバル企業が世界のニュースや娯楽、情報を提供してくれている」と思う人がもっとも少ないのは北米だ。過半数は超えているものの、53パーセントに とどまっている。アメリカはグローバル企業の手を借りなくても情報があふれているし、国内の情報や娯楽で満足している人も多い。「世界中のニュースや娯 楽、情報」にそもそも興味がない人もけっこういるのだろう。

●グローバル化でハッピーな人の多いインド

 「グローバル企業は仕事やキャリアを増やしてくれる」ということに、賛成する人がダントツに多いのは、案の定インドである。8割近くが賛成してい る。英語が使える人が多いインドには欧米企業がさかんに進出し、また欧米企業の仕事を請け負うオフショアリング企業も生まれている。新興国のなかでグロー バル化の恩恵をもっとも受けている国だから、当然の結果だ。2位がフィリピン、3位が中国、以下、南ア、マレーシア、ブラジル、シンガポールと続く。
 高成長しているブラジル、ロシア、インド、中国はまとめて「BRICs」と呼ばれている。「BRICs」の最後のsは複数形のsだったが、このところ成長著しい南アフリカを指すともいわれたりしている。こうした国が順当に上位に入っている。
 「グローバル企業は仕事やキャリアを増やしてくれる」と答えた人が多いほかの国々も、いずれも先進国企業のオフショアリング先の上位ランキングに入っている。

●「グローバル企業は仕事を奪う」と考える日本人

 「日本は出てこないけれど、調査対象になっていないの?」と思うかもしれないが、そんなことはない。トップ10しか公表されていないので、これまでのところでは出てこなかっただけである。
  「グローバル企業が仕事やキャリアを増やしてくれるとは思わない」と答えた人がもっとも多い国のひとつがじつは日本である。34パーセントの人がそう答 え、トップのオーストリアとコンマ以下の違いで2位である。グローバル化は自国の労働者にとってハッピーではないと思っている人が、日本は、他の国より多 いというわけだ。
 働くうえでグローバル化はデメリットと思っている人が多いのは、オーストリアや日本に続いて、フィンランド、フランス、アメリカ、スイス、オーストラリア‥‥。トップ10に並んでいるのは先進国ばかりだ。

●「グローバリズム嫌い」の国々

 こうした数字からも、「グローバル化は後進国の労働者には幸いだが、先進国の労働者にとっては不幸」と見られていることがわかる。
 「グ ローバル企業が仕事やキャリアを増やしてくれるとは思わない」と答えた人が多いトップ10にはヨーロッパが6か国も入っている。移民が仕事を奪っているな どと、グローバリズムが社会問題化している地域の事情が見てとれる。なかでもトップのオーストリアは、外国人排斥を訴えるナチ・シンパの党首率いる極右政 党が政権入りしたこともあるお国柄だ。
 「ローカルな伝統や文化がグローバリゼーションの拡大によって脅威にさらされている」という質問にも、 オーストリアは62パーセントの人が賛成し、2番目に多い。この問いに「イエス」と答えた人が多いのも圧倒的にヨーロッパの国々で、トップ10のうち8か 国を占めている。ヨーロッパは、社会主義の崩壊やEU拡大といったことが続き、グローバル化の最前線に位置している。
 この8か国には、つい最近、大統領選挙のあったフランスも含まれている。サルコジ新大統領は、移民に厳しい発言を繰り返して辛くも勝利をおさめた。グローバル化にたいする警戒感が強まっている国民感情がこの調査からも見てとれる。
  しかし、ローカルな文化にたいする脅威を感じていると答えた人がもっとも多かったのは、ヨーロッパの国ではなくて、タイである。インドや中国、あるいはマ レーシア、シンガポールなど周辺の国々はグローバル化の恩恵を受けていると感じている人が多いわけだが、タイの人びとはその狭間にあって、グローバリゼー ションにたいする警戒感を募らせているということなのだろうか。
 タイを除けば、ほかのアジアの国は、グローバル化に好意的にも見える調査結果だ が、オンラインで行なわれた調査だということは気にとめておく必要があるだろう。つねにネットにアクセスできる環境の人だけが回答している。裕福な「勝ち 組」が調査対象になっている可能性が高い。
 グローバル化は、発展途上の国に、先進資本主義国以上の格差をもたらす。調査対象になっていない層には、グローバル化の恩恵を受けていない人がたくさんいるはずで、そうした人たちも含めて調査をやれば、結果はまた少し違うかもしれない。

afterword
アメリカ文化が席巻し、いまや世界中がアメリカ化しつつあるとも言えるわけだが、おもしろいことに、それでも38パーセントのアメリカ人が、グローバル化によって伝統や文化が破壊されると感じているのだそうだ。

関連サイト
ACニールセンのオンライン調査「グローバリゼーションにたいする消費者の意見」(PDF)。年に2回オンラインで世界各国の消費者にさまざまな事項について尋ねている。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.486)

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