« テレビの電波はじつは余っている? | トップページ | タッチパネル・リモコンでテレビを操作する時代が始まる? »

2007.06.30

いまのテレビで見ることのできないBSデジタルが始まる

新技術が導入されて、購入した機器がたちまち
古くなることは避けられないこの時代。
新たな難題がまたひとつ出てきた。

●新方式のBSデジタル放送が始まる。

 こんど出した『ネットはテレビをどう呑みこむのか?』という本では、テレビがネット端末のひとつになり、ネットのコンテンツがどっと流れこんで多チャン ネル化するという話を書いた。しかし、ネットのコンテンツが流れこまなくても、テレビは多チャンネル化する。それもスカパー!やケーブルテレビといった有 料放送ではなくて、無料の放送で、だ。

 BSデジタルでNHKは、アナログBSと同じ内容の2チャンネルのほかハイビジョンのチャンネルを持っている。これらはもちろん受信料が必要だが、在京 キー局系の5チャンネルは無料放送だ。また、9月に停止するアナログハイビジョン放送に代わり、今年の12月からは3つのチャンネルがBSデジタルでス タートする。ひとつは有料のスターチャンネルのハイビジョン放送だが、あとのふたつは無料放送である。

 さらに、地上波のアナログ放送と同じく2011年に終了する予定のBSアナログの3チャンネルも、デジタル放送に使われる。それに加えて4チャンネル分 の周波数が国際会議で日本の衛星放送に割りあてられている。これらのチャンネルが、11年以後に放送開始になる。どんな放送になるかはまだこれからで、昨 年10月にまとめられた総務省の「衛星放送の将来像に関する研究会」の報告書では、ビデオオンデマンドや立体テレビの実験に使う可能性まで触れられてい る。

 立体テレビはともかく、この報告書によれば、11年以後開始するチャンネルは、現在のBSデジタルチューナーでは受信できないものになる可能性が高い。 薄型テレビやハードディスク・レコーダなど、地上波、BSデジタル、110度CSの3波共用受信機を買った人などから「エェー!」という声が聞こえてきそ うだが、結論から言ってしまうと、どうやら、それが「時代の流れ」ということらしい。

●テレビを買うのはまだ待つべき?

 チャンネル数が増えるなどと書いたけれど、じつは今年の12月に増える3つのチャンネルは、いずれもいまのアナログハイビジョンが使っている9チャンネ ルを使う。何のことやらわからなくなってきたかもしれないが、いまのBSデジタルでは「トランスポート・ストリーム」といって、複数の放送をひとつにまと めて送っている。より高度の圧縮技術を使って放送すれば、もっと効率的にたくさんの番組を送ることができる。さらに多くのテレビ放送を始められ、「電波の 希少性」が緩和されるというわけで、11年以降そうした新しい方式の放送が行なわれる可能性が高い。

 受信できない放送が始まるのは困るが、こうした理由を聞くと、それはそれで仕方がないような気もしてくる。でも、まだ買っていない人、あるいは2台目を 買おうという人が、「じゃあ新しい圧縮技術に対応した受信機の発売を待つか」と考えるのは人情というものだ。実際、この報告書には、「それではデジタル・ テレビへの買い換えが阻害される」と反対意見が出ている。

●次々と新技術が導入される時代の賢い買い方

 もっとも、そんなことで驚いていたら、この時代、新しいテレビは買えない。次から次へと新しい技術やサービスに対応した製品が登場し、あとになればなるほど新たなコンテンツにアクセスできたり、新たなサービスを受けられる。

 そうしたことはBSデジタルに限ったことではない。以前とりあげたデジタル放送録画が「移動」しかできない「コピーワンス」の問題についても、もう少しすれば制限が緩和される可能性が高い。そうなれば、それに対応した機器が出るだろう。

 また、テレビメーカー各社が共同で、ポータルサイトを通してネットのコンテンツをテレビに表示する「アクトビラ」というサービスが始まっている。いまは 静止画とテキストが表示されるだけだが、今年秋にもストリーム配信が始まる予定だ。それを利用するには対応したテレビが必要だ。さらに翌年度にはダウン ロード配信も始めることが予告されているが、それはそれでまたそれに対応したテレビが必要らしい。毎年、新たなテレビが必要になるというのはあんまりな気 がするが、いずれにしてもそれがいまの時代の宿命のようだ。アナログテレビはそれほど使い勝手が変わらず、長いあいだ使えた。しかし、いまはまさに変わり 目で、新しい機能を追いかけようと思ったら、短い周期で機器を買い換えるしかない。いつまでも待ちたくなかったら、自分がいまほしい機能に絞って割安の機 種を選ぶというのが、賢い買い方のように思う。

●既存テレビ局の悲鳴のなかで

「現在のBSデジタルチューナーでは受信できないものになる可能性が高い」と書いたが、新しい方式が採用されることが決まったわけではない。BSデジタルの研究会の報告書はさまざまな思惑が交錯するなかで作成されたようで、かなりわかりにくい文章になっている。
 先に書いたように、「買い換えが阻害される」などといった反論には、とりあえず「まだ決まってはいないんですよー」とばかりに、「広く提案を募集するこ とが適当」とものすごく曖昧な答えを返している。その一方で、新方式の放送はすでに欧米で始まっていて、「同じ周波数帯域で2~3倍の番組が伝送可能」 で、「周波数の有効利用の上で中核的な技術に発展する可能性がある」し、「新規参入による放送主体の多元化、より多様な放送番組の提供が可能となると考え られる」などと採用するメリットを強調している。この研究会の報告書のとりあえずの結論は、新方式の採用について今年度検討し結論を出すということのよう だが、総務省としては、欧米に遅れをとりたくはないし、新方式の放送を始めたいのだろう。
 前回書いたように、BSデジタルは07年度には全局黒字化する可能性が高くなったものの、NHKを除く民放キー局系5社の累積赤字は、1000億円を超 えている。BSデジタルの受信可能世帯が増え、ようやく広告が入る環境が整ってきたのに、チャンネル数を増やされて広告の奪い合いになったのではたまった ものではない、というのが既存テレビ局の立場だ。
 とはいえ、広告媒体としての魅力が増してくれば、いよいよ参入したい企業は増えてくる。そして、魅力あるチャンネルが増えれば増えるほど、BSデジタル を見てくれる人も多くなる。BSデジタルのチャンネルの増加は、地上波と食いあいになるキー局にはありがたくないだろうが、新規参入も含めたほかのBSデ ジタル局にはマイナスとは限らない。
 希望する企業には参入させて競争状態を作りだし、いい番組を作ったところが生き残るようにすべき、という考え方ももちろんあるわけで、総務省の研究会がまとめた報告書がさしあたり示しているのは、そうした方向のようだ。

afterword
 複雑になったデジタルのテレビやレコーダーを操作するのには、いまのリモコンでは不十分だ。ディスプレイをつけたリモコンにすべき、と前に書いたが、そうしたリモコンを見つけた。次回はその話を書く。

関連サイト
 今年12月1日からハイビジョン放送としてスタートするふたつのBSデジタル放送。
●ビッグカメラなどが出資している日本BS放送の「BS11(イレブン)デジタル」。中国の歴史物の大河ドラマのシリーズが売り物のひとつだそうだ。
●三井物産が出資しているワールド・ハイビジョン・チャンネルの「TwellV(トゥエルビ)」。FOXやMTV、ディズニー、ナショナル・ジオグラフィック・チャンネルなどアメリカのテレビ局の番組も流すらしい。このチャンネルについては、次々回でもう少し詳しく取り上げます。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.489)

« テレビの電波はじつは余っている? | トップページ | タッチパネル・リモコンでテレビを操作する時代が始まる? »

デジタルとテレビ」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/56597/15601724

この記事へのトラックバック一覧です: いまのテレビで見ることのできないBSデジタルが始まる:

« テレビの電波はじつは余っている? | トップページ | タッチパネル・リモコンでテレビを操作する時代が始まる? »

2014年8月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31