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2007.05.18

未来のテレビ広告

ネットにつながったテレビは、いずれ映像の背後に
巨大なデータベースを抱え持つようになるだろう。
そうなったときに、テレビ広告はどう変わるのか。

●テレビとブロードバンドをつなぐビジネスが次々と

 大手動画配信サイトの「ギャオ」は、そのコンテンツをテレビでも見れるように、インターネット回線とテレビをつなぐ装置をすでに売り出しているが、3千円台後半の月額料金で有料動画配信も始めるという。
 衛星放送やケーブルテレビ、オンデマンドビデオなど、セットトップボックスを配ってテレビにコンテンツを送るサービスは競争がますます激しくなっていくだろう。
  前回書いたように、地上波デジタルはブロードバンドで再送信され、セットトップボックスを介してテレビに映し出せるようになる。つまり通信事業者も地上デ ジタルをコンテンツとして使える。NTTやKDDI、ソフトバンクといった大手通信事業者がネットを使った地デジの再送信を始めるのは確実で、トリプル サービス(電話+ブロードバンド接続+多チャンネルテレビ)やクアトロサービス(上の3つ+携帯電話)に地デジも加わる。ギャオ(USEN)もネット接続 事業をしており、地デジを加えて、セットトップボックスを使ったサービスを展開することも視野に入れているのだろう。
 テレビへのコンテンツ配信 は、さしあたり映画などをオンデマンドで好きなときに視聴する「DVDレンタルの代わり」だが、地上波デジタルの再送信も加われば、より強力なサービス展 開ができる。テレビメーカーが共同で始めた共通ポータル事業などもセットトップボックスを使った有料配信をいずれ始めるつもりのようだし、競争はますます 激化する。価格ばかりでなく、魅力的なコンテンツをどれだけ提供できるかも勝敗を決める重要な要素になっていくだろう。

●ネット・ポータルとしてのテレビ映像

 まえに、インターネットは21世紀のメディアの王者であることはまちがないが、固定した出力装置がないのが特徴だと書いた。テレビがブロードバン ド回線につながることがあたりまえになれば、ネットのコンテンツが、テレビにも表示されるようになる。逆に言えば、テレビが、インターネットという巨大な データベースにつながる時代がやってくることになる。
 現在のテレビはストリーミング放送で、録画しないかぎり止まらずに流れ過ぎていく。しかし、ネットと融合した未来のテレビは、画面をクリックすると、より詳しい情報が現われるといった仕組みになっているにちがいない。
  寝そべってものぐさ受動視聴をしていたければストリーミング放送だけを見ていればいい。しかし、ストリーミング映像の裏に情報が存在し、視聴者が求めれば 現われる。ストリーミング映像は、背後に存在する膨大なデータにアクセスする入り口(ポータル)的な機能を果たすようになっていくのではないか。

 たとえば、ストリーミング映像の背後に広告情報のデータベースをリンクさせる、といったことがまず行なわれるだろう。ドラマの女主人公が着ている 服の上でクリックすれば、そのファッションについての情報が現われ、どこの製品でどの店で売られ、いくらかもただちにわかる。もう一クリックすれば、販売 サイトに飛んで購入できるといった仕組みだ。ドラマなどを見ている途中でほかのページに飛ぶのはやりたくないだろうが、クリックひとつでマーキングでき、 あとで関連ページに飛べるようにすることもできるはずだ。
 こうした広告の仕掛けは、収益につながるのでまず第一にやられそうだ。もちろん、ク リックして情報が現われるのは洋服以外にも、番組で使われているバッグやクルマ、あるいは登場人物の住んでいる家でもいい。レストラン、ラーメン屋、 ファーストフード、旅先のリゾートなどなど、何らかの商品やサービスであるかぎり、広告と結びつけることはできる。

 販売サイトばかりでなく、IPアドレスや視聴者の登録情報を使って、その商品をあつかっている地元の店の広告を表示させてもいい。広告はテキストでもいいが、動画広告であればもっとインパクトがあるだろう。
  スポンサー側は、こうした情報データベースが利用され、実際に商品が購入されたときだけ広告費を払えばいい。いまのネットの検索連動広告やコンテンツ連動 広告と同じだ。ネットのこれらの広告と同じく、小額の広告費から利用できるようにすれば、地方の小さな企業でも広告を出せる。現在のテレビ広告よりリーズ ナブルで、広告効果もわかって、スポンサーには納得感があるテレビ広告(あるいは動画広告)になる。

 クリックして現われるのは、広告ばかりではない。タレントの顔の上でクリックすれば、タレントのデータページにもアクセスできる。経歴がわかり、関連記事を購読でき、そのタレントが出演していた映画や番組のリストを見て、オンデマンドで視聴するといったこともできる。

 こうした仕組みはまったく意外なものではない。ウェブというのは、リンク構造を持ったデータベースである。テレビがウェブと融合すれば、当然このように重層的な構造になるはずだ。
  デジタル放送で表示されるデータ放送はこうした仕組みに近いが、いまのデータ放送はウェブのコンテンツをそのまま使うことはできない。また、データ放送は リモコンを操作しなければ表示されない。さらに、画面を区分けするので、映像が小さくなってしまう。映像から目を離して、データ放送を見るというのも厄介 だ。映像そのものが背後のデータへの入り口になっているほうが自然だろう。そして、ウェブのコンテンツをそのまま使えるのであれば、データ放送用のコンテ ンツをわざわざ作る必要もない。

●ビデオ・ハイパーリンク

 動画の映像から飛ぶこのような広告の仕組みは、じつは米マイクロソフトが、同社の広告実験サイトで「ビデオ・ハイパーリンク」という名前を付けてデモを作って見せている。
  ホテルのラウンジの映像で、男性にマウスを置くと、どこそこのジャケットで95ドル、着飾った女性にマウスを置くと、ペンシル・ドレス35ドルなどと文字 が現われて、「あれ、このドレス、意外に安物」などといったことがわかる。さらにクリックすれば、その商品を売っているサイトに飛ぶ、といった仕掛けに なっている。
 検索連動広告やコンテンツ連動広告でグーグルに遅れをとったマイクロソフトは、何とか挽回しようと必死だ。ついに米ヤフーと合併交渉をしていたという話まで飛び出した。
  マイクロソフトの広告担当上級副社長は、マイクロソフトのイベントで、利用者がコマーシャルを飛ばそうとしたときに、30秒まるごとは飛ばせず、5秒だけ 見せる仕組みにするといったテレビ広告についてのアイデアを語っている。その5秒がおもしろければ巻き戻して見る人もいるはずで、簡単に戻れるようになっ ていれば便利だろうなどと話している。
 デジタルビデオレコーダーの普及でテレビ・コマーシャルは飛ばし見される運命だが、アイデアしだいでまだやりようはいろいろある、というわけだ。

関連サイト
マイクロソフトの広告実験サイト『アドセンター・ラボ』の「ビデオ・ハイパーリンク」『アドセンター・ラボ』には、検索やウェブページの利用者の購買意欲を算出するツールだとか、その検索語で検索する人、あるいはそのサイトにアクセスしてくる人の男女比や年齢層を解析するツールなどいろいろ公開されている。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.483)

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