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2007.04.06

連ドラが増え始めた理由

メディアとのつきあい方が微妙に変わったせいか、
減り続けてきた連ドラ枠がここにきてまた増えている。
連ドラをめぐる家庭内討議の結果、わかったことは‥‥

●正しい連ドラの見方

「連ドラにはまった」と本誌に書いたら、ネットでも、また会った人にもいろいろ言われると書いたが、連ドラ騒動は、家のなかにも波及してきた。
  妻から、「あなたは連ドラの楽しみ方がわかっていない」と土台を揺るがすような疑問が突きつけられたのだ。ハードディスクレコーダーで簡単に録画してまと め見できるのが連ドラにはまった理由だが、妻によれば、そういう見方は邪道で、次はどうなるかなとワクワク一週間待って見るのが、ほんとうの連ドラの楽し み方だというのだ。
 なるほど。そう言われてみると、そのほうが正統的な見方なのかもしれない。
 でもね。たとえば、「24」をそうやっ て見る気がするのか、とおそるおそる反論してみた。よくできたドラマほど、途中でやめるのはつらい。「24」はまったくあざとい作り方で、じつにいいとこ ろで「続きはまた来週」となる。「24」はアメリカでは一週間に一度放映していたのだろうが、東京などでは、夜中に2、3話続けて放映していた。しかし、 いいところで終わる不愉快さと言ったらなかった。ドラマのまとめ見を始めたのも、その不愉快さに耐えられず、「24」をまとめ見したのがきっかけだった。 連ドラも、毎回「続きはまた来週」と不愉快な目に遭いながら一週間に一時間ずつ見る気はしないが、立て続けに見るなら見てもいいし、そうやって見ればおも しろくもあった。
 実際、視聴率が落ちて減っていた連ドラ枠がこのところまた増えているという。私もおもしろいと思った「ハケンの品格」や「華麗 なる一族」などは視聴率もよかったようだ。万人向けのテレビドラマの作り方をやめて、少しマトを絞ってドラマを作ってみたら視聴者がついてきたということ もあるらしい。たとえば、「華麗なる一族」は、鉄鋼マンのロマンをキムタクが熱く演じるドラマだが、日曜夜ということもあっておじさん世代をねらい、さら にキムタクで女性票にもちょっと色目を使ってみました、という作りなのだろう。
 こうして視聴率を獲得できたドラマはDVDや映画、ノベライズと二次利用される。まさに前回紹介したような、ニッチなコンテンツをさまざまな流通経路を使って配布する、これからのメディアのビジネスモデルになっている。
 また連ドラの話かと言われてしまいそうだが、1週間楽しみに待って見るかまとめてみるかというのは、メディア利用の本質的な違いのような気がするので、今回もこの話を書いてみよう。

 妻の言い分に迫力負けして家のなかでは言わなかったが、「一週間楽しみに待って見る」というのは、いま急速にすたれてきているメディア視聴のあり 方だ。連ドラが見られなくなったのも、こうした視聴の仕方が時代にあわなくなってきたということもあるはずだ。いろいろ用事があって、かならず同じ時間に テレビが見れるかどうかわからない生活を送っている人が多くなっているし、気分的にも忙しいのに、一週間前のテレビ番組のことなど覚えてはいられない。そ のときの気分を思い浮かべながらワクワクして待つなんてヒマなうちの奥さん以外できる人間はあまりいない(と面とむかって言わなかったけど、心のなかでは そう思った)。

●能動的な視聴によって連ドラは復活した?

 こうした変化は、新聞小説についてはもっと早く起こっている。新聞に連載小説はいまでも載っているものの、そのインパクトは明治・大正のころとは 大きく違う。これらの時代に生きていた人びとは、次の展開がどうなるか、毎日楽しみに待って新聞を手に取った。もちろんいまでもそういう人はいるし、新聞 の連載小説はベストセラーになることも多い。電車のなかなどで時間のあるときにたまたま読んでおもしろいと思い、本にまとまったときに購入したりもするか らだろう。けれども、多くの人が毎日楽しみに見る対象が、新聞小説から朝ドラに変わってもうずいぶんになる。
 テレビや新聞だけではない。マンガ も、週刊マンガ雑誌の売り上げは落ちている。その理由は、ケータイに読者が奪われたからだとか、マンガ自体にパワーがなくなったから、などとさまざまな理 由が指摘されているが、「一週間楽しみに待って読む」という接し方が時代にあわなくなってきたということもあるはずだ。
 数十年前の私が子どもの ころは、雑誌でマンガを読むのがあたりまえだった。人気連載は単行本化もされたが、それはあくまでもオマケで、メインはあくまでも連載のほうだった。で も、単行本化されることが多くなり、「一週間待って読む」楽しみよりも、「まとめて一挙に読む」楽しみが大きくなってきた。マンガ雑誌を読まずに、コミッ クスを買う人も増えている。
 連ドラやマンガが得意の、「ハイ、また来週」という見させられ方が、作り手にもてあそばれているようで不愉快、とい う気分も広がってきているように思う。若い世代ほど能動的なメディア利用を好む傾向があるというIBMのレポートを前に紹介したが、自分のペースで好きな ときに好きなように見たいという欲望はたしかに強くなってきている。だとすれば、一週間に一度見るのがあたりまえの連ドラやマンガ週刊誌が衰退傾向にあっ ても不思議はない。
 ただし連ドラは、何回分も録画してまとめ見することが簡単にできるようになった。だから、復活し始めたのではないか。完結し てからでなくても、2回分を続けて見るだけでもそうとう迫力は違う。好みのスタイルで見た人がおもしろいと思い、周囲に伝えれば、視聴率も自然にあがって いくはずだ。
「口コミ」の威力がすごい、というのは最近のマーケティングの常識で、ウィルスのように伝染して広まることからバイラル・マーケティングなどと呼ばれているが、こうしたマーケティング効果が連ドラを蘇らせているのではないだろうか。

●ワンクリック詐欺まで登場した連ドラ人気

 などと思いながら、ついに最終回を迎えた「華麗なる一族」のホームページを覗いてみて驚いた。最終回で歌われる曲についての裏話とか、出演者のイ ンタビューなどバイラル・マーケティングに貢献しそうなコンテンツがいろいろ提供されているが、その下に、なんと、こう書かれているのだ。

 【ワンクリック詐欺サイトにご注意!】

クリックしてみると、次のような警告の言葉が現われた。

「い つも『華麗なる一族』および、公式サイトをご覧頂きまして、大変ありがとうございます。近頃『華麗なる一族』の名前をかたった、ワンクリック詐欺サイトが 出現しているとの報告を頂いています。ワンクリック詐欺サイトとは、『さらに衝撃のあらすじはこちら!』など、興味を引くリンクが設置されているが、ク リックすると内容とは異なる、不当な処理や不当なページが表示されるサイトです‥‥」

 うーん、詐欺まで出没したとは。連ドラ人気はほんとうに復活しつつあるようだ。

afterword
 妻によれば、録画をまとめ見したくない理由は、一挙に見ると疲れる、録画ではテレビを時計代わりにできない、寝るのが遅くなる、などまだまだあるらしい。ひと言でいうと、私とは人生観が違う、ということのようだ。

関連サイト
 TBSの人気連ドラ「華麗なる一族」のホームページ。ホームページには、「すべての人間へ…」と書かれているが、男性サラリーマンのロマンに合致したのが高視聴率を獲得した理由か?

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.478)

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