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2007.03.03

最後に笑う動画サイトはどれか?

このところ人気を集めている動画サイトはユーチューブだが、
テレビ進出を意識した動画サイトの争いは
まだ始まったばかりだ。

●テレビポータルサイトの是非

 テレビがネット端末になる時代がようやく本格的に来ようとしている、という話をこのところ書いている。
 テレビをインターネット回線につなぎ、アクセスすると、リモコン操作しやすいポータルサイトがテレビ画面に現われる、という仕組みが一般的だ。すでに始まっているサービスはそうしたものが多い。
 でも、こうした「公式サイト」っぽい作りは、携帯電話ではだんだん過去のものになりつつある。
 パソコンでのネット・アクセス同様、携帯電話でも、検索して自由にサイトにアクセスできる方向に向かっている。iモードも、最初はとても便利で画期的なアイデアに見えた。しかし、より自由に、より多くのサイトにアクセスしたいという欲求が出てくるのは自然なことだろう。

 ところが、テレビのほうは、過去のものになりつつあるその「公式サイト方式」をこれからとろうとしている。
 居間のテレビにネットのコン テンツを表示する場合、安心できるコンテンツであってほしい、という希望はあるだろう。しかし、あらかじめサイトをセレクトしておかなくても、フィルタリ ング・ソフトを使って「危ないコンテンツ」をはじくことはできる。セキュリティ・ソフトや検索エンジンにはそうした機能が盛りこまれている。それらを使え ば、「危ないコンテンツ」をはじきながら、はるかに多くのサイトにアクセスできる。

 「危ういサイト」を初めから排除しておくのがいいのかどうかかは、国民性の問題も関係している。
 「余計なことをしないでくれ。自分で選ぶ」という気質の人たちには、公式サイト方式は文字どおり「余計なお世話」だ。けれど、少なくとも居間のテレビに限っては、公式サイト方式は少なくとも日本では一定の需要があるだろう。
 しかし、自分の部屋で一人でテレビを見るときには、それではあまりに従来のテレビじみていて、ネットに慣れてしまった人たちには物足りなく感じられるにちがいない。

●サンプル動画が壁表示される検索

 こうした観点から、このところおもしろいと思っているのは、『blinkx』という動画検索サイトだ。blinkというのは、まばたきするとか点 滅するという意味で、このサイトにアクセスして目にするサムネイル画像は、点滅しているように見える。サムネイル画像は5行×5列に並んでいる動画で、ひ とつひとつが動いているために、点滅して見えるのだ。サムネイルにポインターをあわせると拡大し、クリックすれば、動画がスタートする。
 現在 700万時間のビデオ・コンテンツが対象になっており、CNNやBBC、ロイター、ブルームバーグ、フォックス、MSNBCなど大手マスメディアの動画か ら、ユーチューブやマイスペース、グーグル・ビデオなどの投稿動画、さらにはポッドキャスティングまで、キーワード検索などを使って動画サイトを横断的に 探せる。
 動画像のキーワード検索は、ふつうタイトルやキャプションなどの文字を対象にしているが、blinkxは音声認識技術も使っているそうで、音声部分も検索できる。
  検索結果は、サムネイルと簡単な説明だけでなく、動画の一部がプレビューとして8秒ぐらいずつ次々に自動再生されていく。それを見て、プレビュー上でク リックすれば動画全編が再生される。あとで見るために、「プレイリスト」に加えておくこともできる。また、「Wall it!(壁にしろ)」というオプ ションもあって、このボタンをクリックすると、検索されたサンプル動画像が5行×5列の壁状に並ぶ。

●ネット端末テレビで動画を検索して見る未来の生活

 テレビ局サイトの映像まで含めた動画の横断検索はグーグルなどもやっている。blinkxがおもしろいのは、リビングのテレビに進出することを強く意識しているように思われる点だ。
  文字による番組説明は、全体像をつかむにはいい。しかし、寝っ転がってもっと気楽に番組を選びたいときには、blinkxのように自動的にプレビューさせ てくれるほうが便利だ。blinkxが勝ち残るかどうかはともかくとして、このサイトの仕組みは、ものぐさ受動視聴のテレビ向きである。

 こうした検索サイトからは、次のような未来生活がイメージされる。

 仕事が終わって帰ってきて、ルームライトのスイッチをオンにすると、壁が光り出す。キーワードやジャンルで設定した最新のお好みの動画のサムネイ ル画像が壁一面にぽこぽこ動いている。ネクタイをゆるめて着替えをしながらその画像を横目で眺め、おもしろそうだと思った画像に触れる。すると、それらの 動画像が次々と「プレイリスト」に並んでいく。シャワーを浴びて戻ってきて、「プレイ」ボタンを押すと、リストに並んだ動画が次々と流れ始める。テレビ局 が制作した番組も、シロウトの投稿動画もある。個人の投稿動画をハイビジョン・テレビで見たいかといえば、それはかなり疑問だ。けれども、いくつも続けて みる動画のひとつがそうしたものであってもさして違和感はない。
 テレビの前にいる男にはそもそも、それがどんな動画かはどうでもいいことだ。おもしろければ見るし、おもしろくなければ見ない。作成者や投稿者の名前もその気になればわかるが、知ったところで意味はない‥‥。

●検索表示されれば、動画の出所はどこでも同じ

 こういうふうになったとき、テレビ局は、その男が見ているのが自社のサイトの映像か、それともどこかの誰かが勝手に投稿サイトに流したものなのか は重要だろうか。もちろん、それが有料動画であれば、お金を払わずに見られるのは困るだろう。しかし、有料でなければ、どういう経路をたどってその男のリ ビングのテレビに行ったのかは些末なことで、制作費を回収しさらに利益を得られればそれでいいはずだ。
「われわれが得た広告収入を分配します」と、まさにそうした選択肢を提供しようとしているのがユーチューブである。
 動画サイトのなかで、いまはユーチューブが頂点に立っている。グーグル・ビデオは同じころ動画検索サイトとして出発したが、結局ユーチューブを買収して傘下におさめなければならなくなった。
  とはいえ、グーグル・ビデオやblinkxのような検索サイトは、ユーチューブを含む数多くの動画サイトのコンテンツを、検索表示という形で軒並みとりこ める。自分でコンテンツを作らない検索サイトのグーグルが圧倒的に強力な企業になったことから見ても、自分のところで動画を抱えこまない検索サイトが、結 局のところ配信サイト以上の強みを発揮するということは、十分ありえるのではないだろうか。

afterword
blinkxのような検索サイトは、著作権侵害の訴訟リスクも低い。責任を問われるのはまず投稿者であり、次に、そうした投稿を許しているサイトで、動画検索サイトは、せいぜい3番手である。

関連サイト
●ユニークな動画検索サイト「blinkx」
 動画配信をめぐってはおもしろいサイトがさらに出てきそうだ。ユーチューブを最終勝利者と見なすのはまだ早い‥‥と思っていたら、下のようなサイトも登場した。
●『はてな』が2月16日にリリースした新サービス「Rimo(リィモ)」。ユーチューブの人気の高い動画のなかからピックアップされて次々と自動再生されていく。まさにテレビ感覚で、画面上の「リモコン」によって「チャンネル」を変え、違うカテゴリの動画を見ることもできる。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.473)

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