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2007.02.23

「ネット端末としてのテレビ」の時代が始まる

動画表示装置としてのテレビの可能性は
まだ十分に汲みつくされてはいない。
この装置の新たな利用方法がようやく本格化する。

●連ドラがおもしろくなった理由

 このところテレビを見る時間がめっきり増えている。「連ドラ漬け」なのだ。
 若いころ、トレンディドラマ評論を書こうとかなりまじめに考 えたことがある。真剣に分析すると、社会の潮流がわかっておもしろいんじゃないか、そう思ったのだ。歌謡曲をまじめに分析した本はときどき見かける。けれ ど、ドラマについては、感想文のようなものがほとんどだ。新たな分野を切り開こうと野心に燃え(?)、編集者に話したこともある。しかし、私とトレンディ ドラマの組み合わせが妙だったらしく、本気度が疑われ、そうこうするうちにこちらもトレンディドラマに飽きて、それっきりになってしまった。
 こ んなにテレビドラマを見るのは、たぶんそれ以来だろう。アナログビデオの時代には録画してまで見る気はしなかった。しかし、デジタルビデオレコーダー (DVR)なら、見る見ないにかかわらず、とりあえず録画し、気が向いたときに簡単にまとめて見ることができる。それで、ついいくつか見始めたら、はまっ てしまったというわけだ。

 どんなのを見ているかというと、キムタク主演の「華麗なる一族」や、松本清張原作のシリーズもの「わるいやつら」とか。これらはかなり凝った作りなので、DVRでまとめて見るのに適している。
  また、たまたま初回を見たら思いがけずおもしろくて見続けているのは「ハケンの品格」。篠原涼子が、「残業は一切しない。休日出勤なんてとんでもない」と 言いつつ、仕事はとてつもなくできるスーパー派遣社員の役どころで、正社員と非正社員の格差をじつにたくみに、かつ辛辣に突いている。「おごれる正社員は 久しからず」とか、セリフやナレーションも風刺が効いている。篠原スーパー派遣社員が、「みんなたいへんそうだから私も残業します」などと生ぬるいことは 口が裂けても言わず、最終回までハードボイルドのままで行ってほしい。でも、ときどき危ういところがあるので、ちょっと心配だ。
 これ以外にも、見ているもの、これからまとめて見ようと思っているものがたくさんある。
  まあ、こんなふうに連ドラ漬けのわけだけど、じっくり見ると、最近の連ドラは、ずいぶんドラマ作りの腕まえがあがっているように思う。そう感じるのは、 CMを飛ばしてまとめ見しているせいもある。CMで気がそがれることがない。さらに、映画の上演時間は2時間ぐらいのものだが、連ドラは、その何倍もの時 間を使える。長ければいいというものではないが、複雑なストーリーを盛りこむことはできる。続けて一挙に見ると、それなりの波瀾万丈があって、へたな映画 よりおもしろい、ということは十分ありうるだろう。

 CMを飛ばして見られるのは、制作側としては、とりあえず困ったことにはちがいない。しかし、現場で制作している人たちが、心の底から不快に感じ ているかと言えば、そんなことはないんじゃないか。本気になって制作している人たちならば、「新聞や雑誌をぱらぱら読んで気を散らしながら横目でテレビを 見て、『ふん、つまらない』などと思われるよりも、真剣に見てもらったほうがいい」と思うはずだ。テレビ局の経営の問題はともかくとして、テレビドラマ は、かつて考えられなかったぐらいに集中して見られるようになってきた。そういう意味で、視聴環境はずっとよくなっている。

●テレビのステータスはいまが底?

 前回、「異論反論がたくさん出そうだけれど、21世紀メディアの主戦場はテレビなんじゃないか」と書いた。講演を頼まれたので21世紀のメディア について考えることになったわけだが、当の講演でこう言ったら、案の定、怪訝そうなムードも漂った。パネラーから、「このところさっぱりテレビを見なく なったんだけど」といぶかる声もあがった。
 たしかに、ネットにケータイ、音楽にゲームと相手にしなければならないメディアは増える一方だ。テレ ビ視聴の時間が減っていることは、いろいろな調査からもうかがえる。(私のように連ドラ漬けになっている人間は別として)多メディア化のこの時代、テレビ 放送のステータスは下がってきたし、今後も下がるだろう。テレビという装置でネットのコンテンツを見ることもまだ一般化していない。
 とはいえ、 大画面の高精細テレビがこんなに話題になり売れてもいるのだから、テレビのステータスが下がっているというのは、妙と言えば妙だ。テレビがブロードバンド につながり、過去の番組や映画をオンデマンド視聴するのがあたりまえになってくれば、動画表示装置としてのテレビの利用価値は、少なくともいまよりはもっ と上がるのではないか。

 実際、テレビという装置の利用価値の上昇を感じさせる動きは、このところいくつも出ている。
 大手動画配信サイトの「ギャオ」は、そのコンテンツをテレビでも見れるように、インターネット回線とテレビをつなぐ装置を売り出した。このサービスの開始にあたり、ギャオは次のように言っている。

「現 在1300万超の視聴登録者を獲得しており、昨今ではPCモニターだけではなく、リビングの大画面テレビで無料番組を楽しみたいといった視聴者ニーズも高 まってきております。このようなニーズに応えるため、リモコン操作によるテレビでの視聴環境を提供できるテレビ接続PC『ギャオプラス』を開発し、ユー ザーの視聴動向の検証も兼ねて、発売することにいたしました」。

 ギャオのような動画配信サイトが充実し、ネット配信や圧縮の技術が高度化すればするほど、大画面のテレビでネットのコンテンツを見たいという需要に応じるところはますます増えてくる。

 ギャオの発表と同じ2月1日、大手テレビメーカー共同のデジタルテレビ向けポータル・サービス「アクトビラ」も開始した。現在はまだ静止画とテキストによる生活関連情報だけだが、そう遠くない時期に、動画の提供も開始するという。

 前回、21世紀のメディアの主戦場になると予測したのは、ひとつはこうしたネット端末としてのテレビで、もうひとつは、電子番組表や電子雑誌・電子書籍を読むための端末だった。
 じつはこのふたつ、どちらもここ10年、普及に失敗し続けてきた商品である。こんなものはそもそもうまくいかないんじゃないかという意見も根強くなってきている。
  けれども私は、時期尚早だっただけなのではないかと思っている。「ネット端末としてのテレビ」はようやくこれからで、「読むための端末」はまだその先、 ネット接続できる端末が低価格で、携帯電話と使い分けできる「もうひとつの携帯端末」として、自由な発想でいろいろ作られるようになって初めて、その可能 性が開けてくるのではないか。

afterword
次回は、「ネット端末としてのテレビ」がある未来の生活がどんなふうになるのかを思い描いてみたい。テレビ局の考え方も大きく変わってくるにちがいない。

関連サイト
●松下電器やソニー、シャープ、東芝、日立、ソネットエンタテインメントによるデジタルテレビ向けの共通テレビポータル・サイト「アクトビラ」。このサイトを通してテレビでネットのコンテンツにアクセスする仕組みだ。2月1日にサービスを開始した。
●動画配信サイトの『ギャオ』も、2月1日、インターネット回線とテレビをつなぐ装置「ギャオプラス」を販売し、テレビで「ギャオ」の動画を視聴できるようにし始めた。「ギャオプラス」は24800円で、月額費用は無料。サイトと同じく広告収入で運営するようだ。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.472)

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