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2007.02.03

わかっているようでわからないひろゆきの謎

2ちゃんねる閉鎖か、という話がかけめぐっている。
ほんとうに閉鎖されるかどうかはともかく、管理人の
ひろゆきが危ない綱渡りをしているのは確かだろう。

●巧妙な仕掛けと大胆不敵な対応

 2ちゃんねるで誹謗中傷された男性が、書きこみをした人についての情報開示を請求した。管理人の西村博之氏(通称ひろゆき)は裁判に応じず、昨年 9月に開示を命じる仮処分が出た。それにも応じなかったために1日5万円の制裁金が科されたが、それも無視。ひろゆきの財産の差し押さえが申し立てられ、 2ちゃんねるにも影響が及ぶのではないかと懸念されている。

 昨年春、参加しているいくつかの集まりのひとつにひろゆきがやってきて、彼の話を聞いた。「争うのが嫌い」だそうで「負けるが勝ち」の方針のも と、裁判にはいっさい出廷せず、何の反論もしないので敗訴するが、賠償金もすべて払わないことにしていると言っていた。最初の裁判で400万円の支払い命 令が出たが、払えなかったのがきっかけでそうなったとのことで、意図したものというより、少なくとも当初は払えなかった、ということのようだ。
  賠償金はもう何千万円にもなるが、裁判所が差し押さえをしようと思っても個人財産を持っていないのでできないのだという。収入は彼には直接入らず、彼が設 立した会社に行く。ひろゆきはその会社からなんらかの形でお金を得ているのだろうが、そのルートがわからなければ差し押さえができないということらしく、 少なくともこれまではほとんど差し押さえられなかった。徹底的に踏み倒す気になればできることを、ひろゆきは身をもって実証しているわけだ。

 こうしたひろゆきの対応について、聞いてはいたが、飄々と目の前で何ごともなさげに口にされるとやはり驚いた。そう飛び抜けて反社会的にも見えない目の前のハンサムな好青年が、そんな大胆不敵なことを実践しているとは、と思ったのだ。
  実際のところ、ひろゆきの収入はかなりあるようだ。早稲田大学での講演で、ひろゆき自身、年収は「日本の人口より多い」と言ったそうだが、2ちゃんねるに 張られているリンクをクリックすればアダルト広告がいっぱい現われるし、過去ログを読むためのビュアーも売っている。また、2ちゃんねるに書きこもうとす ると、知的財産権の無償譲渡を求められる。書きこみを乱用されないための防御的な意味もあるようだが、ベストセラーになった『電車男』を始め、書きこみを まとめた本の著作権はひろゆきにある。ひろゆき一人の収入にもできるわけだが、「電車男」当人など関係者や、書きこみを編集した「まとめサイト」の運営者 とも印税を分け、寄付もしているらしい。2ちゃんねるの書きこみは次々と本になり、ドラマや映画化もされているので、ひろゆきにかなりの収入があっても不 思議はない。

●「永遠の19歳」であればいいが‥‥

 昨年春の会では、すっぽかすこともまれではないという風評にたがわず、ひろゆきは定刻に現われなかった。来ないのかと思っていたらそれでもやって きて、ゲームばかりしているなどと、ヒマを持てあましているようなことも口にする。そして、ケータイの未来から「小泉政権をどう思うか」といった当惑して も不思議のない質問まで、何を尋ねてもおもしろい答えが返ってくる。頭のめぐりがきわめていいことは明らかで、賠償金を踏み倒すといったタフな態度をとり ながらも、IT起業家などによくいるようなイヤミな上昇志向はない。肩の力が抜けていて欲が感じられず、世間標準からするとそうとう変わっているが、彼の 言っているほうが当たっているのかもしれない、そんなふうにも感じられ、考え方としては共感するところも多かった。私も20代だったら、彼のように考えた かもしれない、とさえ思った。
 しかし、もはや若くない身としては、彼のやっていることは、やはりそうとう無謀に見える。裁判や賠償に応じない今 の態度をとっているかぎり、ふつうの社会生活を送ることもむずかしいだろう。携帯電話とメールがあればどこにいても連絡は取れるものの、裁判所や法律事務 所、あるいは2ちゃんねるに恨みを持つ人びとから逃れるために所在地もはっきりさせにくい。となると、結婚して、子どもを育てるといったこともできないか もしれない。そんなことはさしあたり望んでないかもしれないが、これから数十年、こうした暮らしを続けられるだろうか。
 ひとりで矢おもてに立っ て、2ちゃんねるの匿名性を維持しているひろゆきは2ちゃんねらーのヒーローかもしれないが、彼が犠牲にしなければならないものはかなり多いはずだ。2 ちゃんねるによってお金が儲かったとしても、少々大げさに言えば、2ちゃんねるを続けるかぎり、彼には安住の地はないわけだ。

●ひろゆきの情熱

 ひろゆきの話を聞いたのは、ライブドアの堀江貴文社長(当時)が逮捕され、大騒ぎになってまもなくだった。事件を指揮した特捜部長は、「額に汗し て働いている人々や、法令を遵守して経済活動を行っている企業などが出し抜かれ、不公正がまかり通る社会にしてはならない」と、グレーな領域にも踏みこん でいくことを表明していた。法律を支える側から見れば、彼のやっていることは明らかに法律への挑戦で、その賠償金が積み上がり、彼の態度が知られるように なればなるほど、当局の見せしめ的な対応のターゲットになる可能性は高くなる。実際のところ、2ちゃんねるでのやりとりに気晴らしや救い、安らぎさえ感じ ている人がいる一方で、誹謗中傷されて悪感情を抱く人も次々と生まれている。2ちゃんねるやひろゆきをどうにかしてつぶしてやろうと思う人も確実に増えて いるわけだ。そういう意味でも、彼のリスクは高まっている。

 十分に聡明な彼が、はたしてそうしたことを感じないのだろうか。尋ねてみようかと思ったが、やめた。2ちゃんねるで誹謗中傷が横行し、それに十分 に対処できないでいるかぎり、今後も訴訟は続くだろう。お金があるなら、弁護士などを雇って法的な対処をする「大人のやり方」もあるとは思うが、そうした 方法をひろゆきはとりたくないようだ。そもそも彼は、学生時代、「交通違反のもみ消し方」というサイトを作り、警察官と議論して違反を免れる方法を伝授し たりもしている。法律について勉強もしていて、彼の行動はきわめて意識的で、いわば「確信犯」である。少々の危険におびえるぐらいだったら、2ちゃんねる は今のようには続いていなかっただろう。答えがわかりきっているように思えて、あえて尋ねる気がしなかった。

 しかしそれにしても、彼は、なぜそうまでして2ちゃんねるを続けているのだろうか。「もう飽きた」などと言いつつもやっているのは、これだけ人が 集まるサイトになってしまい、簡単にやめられなくなったということもあるだろうが、それだけなのだろうか。彼がそのとき口にしたことのなかには、そうした 疑問に対するヒントのようなものもあった。次回はひろゆきが2ちゃんねるを続ける情熱のありかについて考えてみたい。

afterword
2ちゃんねるの「総合案内」にある「削除ガイドライン」を見ると、かなり細かい削除規定が書かれている。まったく削除する気がないというよりも、やはり対処しきれなくなった、ということなのだろう。

関連サイト
●ひろゆきが法律の専門家と対談し、昨年7月に刊行した2ちゃんねるで学ぶ著作権という本を読むと、ひろゆきが法律に関心も知識もあり、法的な対処を真剣に考えていることがわかる。それだけに、「負けるが勝ち」という無謀なやり方は不可思議だ。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.469)

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