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2007.01.12

日本に上陸した世界最大のSNS「マイスペース」は成功するか?

音楽がガンガン鳴り、
動画が流れまくるSNSが急成長したのは、
先行するサイトと差別化する
たくみな戦略があったからだった。

●めちゃくちゃ派手なミクシィの強敵

 今年、成功しても失敗しても話題になりそうなのは、11月7日に日本語版がオープンした1億4000万の会員のいるソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)「マイスペース」だろう。
  ミクシィにどうも馴染めないという話を前に書いたが、ミクシィ以来、SNSには疎遠な気分になっていた。マイスペースというサイトがアメリカで急成長して いるとは聞いていたものの、興味が湧かなかった。かなり遅れて覗いてみたのだが、アクセスした瞬間、「しまった」と思った。
 マイスペースは、ミクシィとも、またそれ以前のSNSとも大きく違う。そしてこのサイトは、まぎれもなくいまのウェブ進化の最前線に位置していて、ウェブはもちろん、リアル世界のあり方も変えてしまう可能性を秘めている。もっと早く見てみなかったことが悔やまれた。
 このサイトを見ないでウェブ2・0について語るのは「もぐり」とさえ言えるかもしれない。これまでのSNSの枠にははまらず、コンテンツ流通や広告のあり方も一変させる起爆力を秘めている。

 ミクシィとどう違うのか、そしてまたこのサイトの持っているパワーは、トップページに並んでいる写真のどれかをクリックしてみるだけで、すぐにわかる。
といっても、会社や学校などではやめておくほうが無難だろう。アップされた音楽ががんがん鳴り出す。ミュートにでもしてからアクセスしないと、周囲の顰蹙を買うのは間違いない。
  利用者それぞれのトップページには写真がべたべた貼られ、音楽や動画がアップされ長いページになっていることが多い。ミクシィのようなSNSを見なれてい る人にはあまりに派手で、同じSNSとは思えないだろう。自分のページを改造する自由度が高く、それが人気を呼んだ理由のひとつでもある。たとえて言え ば、フリーマーケットで、一人一人がスペースをもらって好きなものを置き、リンクを使って、ほかの人のものまで並べている、そんな感じだ。
 その 一方、あまりにページが汚いと批判されてもいる。見た目が汚いだけならいいが、htmlがおかしく、きちんと表示されないことはざら。ウィルスやスパイ ウェア、フィッシングの巣になっていると問題視され、さらにはティーンエージャーなどをだまして連れ出す性暴力事件の頻発が危惧されるなど、アメリカをは じめ展開している国々で、よくも悪くも評判を呼んでいる。今年9月には米『PCワールド』で「最悪のウェブサイト」に選ばれたりもしている。

●音楽プロモーター的な努力で成功したサイト

 2003年秋に生まれたこのサイトが急成長した最大の理由は、ミュージシャンたちにページを作らせたことにある。それぞれのページで、音楽やビデ オを流し、コンサートやメディアへの登場の予定などがアナウンスされる。マドンナやマイケル・ジャクソンなどメジャーのミュージシャンのページもできてい る。
 一般の利用者は、こうした有名人も「友だち」の一人として自分のページに加えることができ、彼らの音楽やビデオをリンクの形で自分のページに加えられる。そればかりか、有名人のサイトに、「友だち」の一人として顔写真入りで載る栄誉まで受けられる。
 セレブを「客寄せパンダ」にするのは古い手法にも見えるが、このサイトが画期的なのは、有名人たちをメディアの向こう側の人間としてではなくて、(たとえそれが一種の幻想だとしても)自分と同じ世界にいる人間と思わせる仕組みを作ったことにあるだろう。

 このサイトを立ち上げた創立者の一人トム・アンダーソンは、02年末にSNSに大きな可能性を感じ、当時人気を集め始めていたSNSサイト『フレ ンドスター』を始め出会い系サイトやニッチなコミュニティ・サイトなどを見てまわった。そうしたサイトは「やり方がせせこましい」と感じたそうで、彼は、 サイトを立ち上げると、地元のバンドやクラブのオーナーにページを作らないかと声をかけてまわり、ほかの会員が彼らを「友だち」として登録できるようにし た。ほかのSNSにはないそうした特徴を会員が喜んだのはもちろんだが、ミュージシャンたちにとっても格好の宣伝媒体になった。いまでは、超メジャーもア マチュアも、同じくマイスペースにページを作って「友だち作り」に精を出すのが、プロモーションの常識になってきた。
 現在30歳のトム・アン ダーソンがこうしたコンテンツ作りの中心になり、40歳のもう一人の創立者クリス・デウォルフがビジネスプランを考えた。しかし、2人は週末ごとにクラブ に通って、新しいミュージシャンを発掘してまわったらしい。こうした音楽プロモーター的な仕掛けがこのサイトの成功の秘密というわけだから、ほかのSNS と違っているのは当たり前だ。

 有名人のページだけでなく、商品や映画、テレビ番組などのページもできている。たとえば「プレステ3」や人気テレビ番組「24」のページなど、めぼしい ものは軒なみある。商品を「友だち」と感じてくれる人が集まり、コミュニティができるわけだから、メーカーなどにとってはじつにありがたいサイトだ。

 こうして音楽やテレビ番組、映画などの宣伝をするだけでなく、ダウンロード販売も一部すでにやられている。さらに、物販にもつなげられる。たとえば、マ ドンナのサイトでは、オリジナルのシャツやアクセサリーなどが並んでいて、クリックすると、マドンナ・グッズの販売サイトに飛ぶようになっている。マイス ペースは、あっというまにオンライン・ショッピング・サイトへの誘導装置に変貌しうる。

●マイスペースは日本でも成功するか?

 さて、日本上陸ははたして成功するのか。マイスペースの歴史をこのように少しでも振り返ってみると、うまくいくかどうかの分かれ目はかなりはっきりしているように思われる。
  日本のミュージシャンやタレントをどこまでとりこめるかに、成否はかかっているのだろう。マイスペース・ジャパンの運営会社もそうしたカラクリは十分にわ かっているようで、セレブたちに声をかけてまわっているらしい。メジャーのミュージシャンのページがずらっと並んでいる‥‥といったことになれば、成功へ の道を大きく歩き出したといえるのではないか。
 成功するかどうかが有名人次第というのは「興行」めいてもいるが、すでに書いたように、口コミと 物販がこのサイトではものの見事に融合するわけで、流通のあり方を変える可能性も持っている。商品がメーカーや小売りによって売られるものではなくて、 ネット上の友人や知人に勧められたり、コメントを見たりしながら、友だちの輪を通して売り買いされていく‥‥ そういったことが、今後どんどん増えていく にちがいない。
 グーグルの成功以来ウェブ2・0型のサイトはもっぱら広告収入に頼ってきた。しかし、このサイトの成長は、そうしたビジネスモデルも変えるかもしれない。

afterword
今年もうひとつ話題になりそうなサイトは、やはりアメリカからやってくる「Second Life」だろう。アバターを使って、バーチャル空間での生活を楽しめる。このサイトについても近々とりあげる。

関連サイト
『マイスペース』日本語版サイト。ソフトバンクが、マイスペースを持つニューズ社と合弁会社を設立して運営する。『ミクシィ』などのように会員の紹介がなくても、14歳以上なら誰でも会員登録ができる。早くも中島美嘉などメジャーなミュージシャンが自分のページを作り始めている。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.466)

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