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2007.01.26

『マイスペース』はスパム2・0のサイト?

『マイスペース』は自己宣伝の場に過ぎず、
その本質はスパム(大量自己宣伝)だ、と告発した記事は
いろいろと考えさせられるものがあっておもしろい

●マイスペースの正体は何?

 11月に日本に上陸した『マイスペース』は、世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)として知られているが、共同創立者のトップ2人は、かならずしもSNSとは思っていないらしい。
  プロフィールページがあって、日記が書けて、とSNSの特徴があることは確かだし、03年7月にサイトを作ったのも、SNSの誕生に刺激されてのことだろ う。しかし、マイスペースのトップはインタヴューで、SNSだというのは「メディアが勝手にそう言っているだけ」でマイスペースは「ポータルサイトに近い 存在」だとも言っている。米ヤフーやAOLなどのポータルサイト、その他トップ100位のウェブサイトのサービスを取りこむことを考えながらサービスを提 供してきたそうで、日本上陸後、ことあるごとに「ミクシィ」と比較されるのも不本意なようだ。

 マイスペースに登録すると、Tシャツ姿で笑っている創立者で社長のトム・アンダーソンの写真が一人目の「友だち」として現われるなど、アメリカ西海岸のフレンドリーで開放的なサイトの雰囲気が漂っている。
  しかし、マイスペース誕生や、その後のメディア王マードック率いるニューズ社による買収をめぐっては異論が出て、訴訟も次々と起こされている、という話を 前回書いた。マイスペースを設立したeユニバースという会社の当時のCEOブラッド・グリーンスパンは、自分こそがマイスペース誕生をリードしたと主張し て、マイスペースの執念深い「クレーマー」と化し、そうした行動を起こしている。グリーンスパンが訴訟を起こしたり、膨大な文書を書きしるしてサイトで公 開したりしたために、マイスペース誕生にまつわる複雑な裏話も意識されるようになってきた。

 そうしたなか、トレント・ラピンスキーというブロガーでジャーナリストの卵だという20歳の若者が、マイスペースの実態はウェブ2・0などではな く、スパム2・0だという記事を、昨年9月、テクノロジー・ゴシップ・サイトに載せた。1週間後にはニューヨークタイムズがこの記事を取り上げ、米『ウィ キペディア』のマイスペースの項目でも紹介され、注目を集めている。

●マイスペースの親会社の実態

 とはいえ、ここに書かれていることは、驚くような事実というわけでもないようだ。ニューヨークタイムズの記事でも、情報の多くは公的記録に基づい ている、と書かれている。実際のところ、どぎつい表現でラピンスキーが書いていることは、前々回、マイスペースの特徴として私が書いたことともかなり重 なっているのだ。
 ラピンスキーはこう書いている。

「たくみにSNSのふりをしているが、実際のところ、 マイスペースは、次世代のマーケティング、広告、プロモーションである。わかりやすく言えば、マイスペースはスパム2・0なのだ。‥‥eユニバースは、 『スキルジャム』[オンライン・ゲーム・サイト]や、ポップアップ広告、迷惑な大量メール、スパイウェア、物議をかもしているファイル交換ソフト『カ ザー』のアドウェアなどで知られていて、何百万ドルも儲けているマーケティングとエンターテイメントの会社だ」。

 マイスペースの親会社eユニバースの「実態」をそう描き出したうえで、マイスペース社長のトム・アンダーソンの正体についても、こう指摘している。

「マ イスペースが急速に人気を得て、グリーンスパンが実権を失うと、デウォルフとマイスペースのチームは、増大する利用者の理想や好みを反映した偽りのPR話 をでっちあげた。彼らは、スパム1・0の会社がサイトを立ち上げたという事実を隠し、トム・アンダーソンがサイトを作ったという話を創作した。そして、こ の試みは成功した」。

 マイスペースの成功は、たんなる口コミによるものではなくて、eユニバースが集めた大量のメール・アドレスを使って宣伝したからだと言い、アンダーソンは、こうしたダークな面を隠すために引っ張り出されたPR用の人物にすぎないとラピンスキーは言う。

●マイスペースの本質はスパムの大衆化?

 こうした細部の真偽はともかく、この後に続く部分はなかなか鋭い。

「マイスペースは、ミュージック・バン ドからビジネスまであらゆるもののマーケティングを認めるどころか奨励し、昔からある自己宣伝の技術のうえに新しいやり方を加味した。それは信じがたいほ どうまくいった。彼らは、あらゆるもの、あらゆる人(もっとも重要なのは個人である)に誘いかけ、自己宣伝の方法を提供した。本質的に、サイト全体が、登 録した人々みなへのマーケティング・ツールである。ユーザーは、バンドや仕事、個人を装ったスパムまがいのメッセージをつねに受け取り、プロフィール・ ページにもっと“友だち”を増やすように言われる。‥‥マイスペースの世界では、スパムは大地であり、空気であり、火であり水であるのだ」。

 ラピンスキーは、マイスペースを批判しているはずなのだが、おもしろいことに、終わりのほうにいくにつれ、賛嘆しているようなトーンも混じってくる。

「基 本的なビジネスの詳細や会社のスキャンダルはさておき、重要なのは、スパムの土台の上に築かれたサイトが、インターネットの歴史上、文化的・社会的・技術 的にもっとも影響力のあるサイトのひとつにどのようにしてなっていったかということだ。人気上昇に貢献した最大の鍵は、マイスペース・チームが直感的に流 れに身を任せ、ユーザーのことをともにサイトを作る仲間としてあつかい、彼らの貢献がもたらすネットワーク効果を認めて多くの面で発展の舵をとらせたこと にある。この点が、ウェブ1・0とウェブ2・0、スパム1・0とスパム2・0を分ける基本的な違いである。マイスペースが行き着くところまで行き着いて、 社会のパラダイムが変化したのだ。スパム――というのは、否定的な意味があるわけだが――が変わり始め、途方もない『超大衆(スーパーパブリック)』によ る大がかりな創造行為に火が点いた」

 たしかに、マイスペースのプロフィール・ページは自己宣伝の場であり、そうしたページを使ってお互いに誘い合う仕組みは、結局のところスパム空間にほかならない、とも言える。
  しかし、知らない人から勝手に来るメッセージはスパムだが、知っている人や好きな人から来るメッセージ、好きなものについてのメッセージはスパムとは思わ ない。大量の自己宣伝の情報が行き来しても、みずからそうした空間作りの参加者になったネット・ユーザーは、スパムを避けようとしなくなった‥‥というよ りも、スパムをスパムと感じさせない巧妙な仕組みをマイスペースが創りだしたということだろう。
 そうはいうものの、第三者が冷ややかに見れば、それはやはり一種のスパム(=大量自己宣伝)空間だ、というのが、ラピンスキーの記事が暗に指摘していることのように思われる。

afterword
 マイスペースの本質が、ラピンスキーの言うように自己宣伝にあるのだとしたら、匿名志向が強くて、自己宣伝があまり好きではない日本のネットに受け入れられるかどうかは興味深いところだ。

関連サイト
マイスペース・トップのインタヴュー「目指すは“ヤフー超え”、マイスペース創業者大いに語る」
●テクノロジー・ゴシップ・サイト『バレーワグ』に掲載されたラピンスキーの記事「マイスペースはスパム2・0のビジネス」
●グリーンスパンが立ち上げた『マイスペース』告発サイト『センサースペース』。ラピンスキーは、グリーンスパンがCEOを務めていたeユニバースをスパム会社だと非難したが、マイスペースの批判者という点で利害が一致したのか、このサイトの発行人として名前を連ねている。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.468)

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