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2006.07.21

ウェブ2・0は流通経路の拡大でさらに進化する

ものを売る人や情報の発信者は爆発的に増えたが、
商品や情報の販売経路は、それほど増えてはいない。
そうしたハードルを超える試みが出てきた。

●意外に限られている個人の販売経路

 ネットを使えば、誰でも簡単にものが売れる。
 ホームページを作って売ってもいいし、オークションに出品もできる。あるいはアマゾンのように、持っている本を売らせてくれるサイトもある。
 インターネットは分散型のメディアといわれているけど、売り手に関してはまさに分散型、無数の人が売り手になった。

 ところが、販売チャンネルについては、じつは売り手の数ほどは分散化していない。
 楽天やヤフーなどの大手ポータルを通して売買している人が圧倒的に多いはずだ。
 ブログを書き始めたついでにその傍らでものを売る、などということはなかなかできない。
 なぜできないかといえば、商品管理や課金・決済などが面倒だからだ。
 こうしたことをするにはそれなりの覚悟がいる。

 ブログを書くかたわらで副収入を得ようと思えば、いまはどこかのアフィリエイトになって商品のリンク広告を置き、売れた場合に、わずかばかりの報奨金をもらうことで満足するしかない。
 アフィリエイトはあくまでも広告だから、取り分はわずかだし、商品に関心を持った人がリンク広告をクリックすれば、販売サイトに飛んで行ってしまう。
 価格や売り方も自分では決められない。
 広告なのだから仕方がないとはいえ、やっぱり自分で売っているのとは違う。

 不特定多数の人がコンテンツやサービスを気軽に作り、不特定多数の人がそれを広めていくという「ウェブ2・0」が、雑誌の特集などでさかんに取り上げられている。しかし、販売チャンネルについてはまだ限られていて、「ウェブ2・0」になっていないのが現状だ。
 大手ポータルの助けを借りずとも、ブログも含めた無数の個人サイトが気軽にものを売れるようになるのが、「ウェブ2・0」時代のネット販売ではないか。

 新たに流行る兆しが見え始めたドロップシッピングは、まさにそうしたビジネス・モデルだ。
 前回までに書いたように、商品を直送してくれるドロップシッピング業者と契約すれば、受けた注文をネット越しにまわすだけで顧客に直接発送してもらえる。
 在庫を抱えるリスクがなく、業者が写真やデータを提供してくれていれば、それを張りつけるだけで販売サイトも簡単に作れる。

 日本のオークションサイトは所有していない商品を売りに出すことは認めていないことが多いが、アメリカのオークション・サイト『イーベイ』ではそうした商品であることを明記する条件で、直送業者の商品の出品を認めている。
 とはいうものの、実際には明記しないで売っている場合もあるようだ。
 届いた商品の送り手が違っているので気づいたり、落札した商品が届かず、トラブルが起きてわかる、などということもあるらしい。

 イーベイには、利用者同士がやりとりするコミュニティ・サイトがあるが、そこでもドロップシッピング(直送)業者を使った出品の評判はよくない。
 誤配達などのトラブルが起こるリスクを考えれば、商品を持たずに売るデメリットは大きい、という意見が圧倒的だ。
 きちんと発送してくれ、トラブルにも対処してくれるドロップシッピング業者にあたればいいが、儲かりにくい少数の商品の売買をきめ細かくフォローしてくれる業者は少ないはず、といったやりとりが交わされている。

 コミュニティ・サイトでは、「優良なドロップシッピング業者を教えてくれ」という質問もたびたび出ているが、自分が契約している優良業者をほかの人たちに教えてしまえばライバルが増えるだけで、得にはならない。
 そうした心理も働くようで、「自己責任で判断してくれ」という回答がほとんどだ。

 イーベイは、さすがアメリカの老舗オークション・サイトだけあって、売買の仕方を教える「イーベイ教育スペシャリスト」という肩書きの専門家の養成もしている。
 そうしたスペシャリストの一人も、ドロップシッピングはリスクがきわめて高いと生徒たちに教えている、とコミュニティ・サイトで明かしている。
 しかし、彼は、リスクを減らす方法がひとつだけあるという。
 出品する商品をあらかじめ少し自分でも持っておき、ドロップシッピング業者がきちんと商品を送らなかった場合には、それを送るのだそうだ。このような準備をしておいた場合だけドロップシッピングは使える、というのが、このイーベイ教育スペシャリストの意見だ。

●ドロップシッピングにふさわしい商品は何か

 ドロップシッピングにはそうした問題はあるものの、流通チャンネルを増やすべき、という理屈はとてもよくわかる。

 たとえば、第3世代携帯電話の普及によって、電子書籍は市場が拡大しているものの、それでも、紙の本の市場を電子書籍がたちまち超えるように言われていたことを思えば、苦戦している。
 その理由としては、読みやすい端末が普及していないことなどいろいろあるだろうが、そもそも電子書籍と出会う機会はきわめて少ない。
 取り寄せになることはあるとしても、紙の本は、出版されていれば原則的にはどこの書店でも買えるのに対し、電子書籍はタイトルごとに売っているサイトが異なっている。
 また、紙の本では出版されていても、電子書籍になっているかどうかもわからない。
 電子書籍検索は生まれているが、探してまで買う気にはなりにくい。

 しかしもし、ブログなどで電子書籍を紹介し、その場でダウンロードして購入できるようになっていたらどうだろうか。
 アマゾンのアフィリエイト広告を置いているブログは多いが、ネット書店で購入しても、紙の本は届くまで待たなければならない。電子書籍ならすぐ読める。
 しかも、本まるごとではなくて、ブログ記事で取り上げたところだけ購入して読めるようになっていればもっといいだろう。
 電子書籍がもしこのように売られれば、販売経路が爆発的に増え、人々が電子書籍に出会う機会はいまとは比較にならないほど増えるはずだ。

 さらに、ドロップシッピングに関するトラブルは発送にともなうものが多い。電子データの販売ならば、商品の遅配や誤配などの問題が生じにくい。
 在庫切れの心配もない。
 電子書籍の直送は有望だろう。
 同じく、音楽や映像などのデジタル・コンテンツも、個人サイトで気軽に売ってもらえればメリットは大きいはずだ。

 こうしたことに気づき始めている会社もある。
 これまでは出版社と販売サイトがそれぞれ一対一で交渉し、決済を行なっていたが、モバイルブック・ジェーピービットウェイパピレスといった会社は、出版社と販売サイトのあいだに入って、交渉や決済の仲介ビジネスを始めている。
 こうした会社が個人サイトの販売まで助けることに乗り出せば、電子書籍がひと目に触れる機会は飛躍的に増大する。
 アフィリエイトと同じようだが、販売するのであれば、売り手が、価格や、電子書籍のどの部分を売るのかなどを自由に決められる可能性が出てくる。

 コンテンツの販売チャンネルを増やすことが重要だということはいろいろなところで認識されるようになってきている。
 アメリカでは、たとえば雑誌やブログ記事を配信するビジネスなども生まれている。
ブログバースト』は、ワシントンポストなどの新聞サイトにブログ記事を仲介するサービスをやっている。
 メディアでブログ記事が使用されれば料金を払う仕組みで、ブロガーは読者を増やし収入を得られるし、メディア側は、コンテンツを充実できるメリットがある。

 ウェブ2・0のさらなる進化の鍵は、このようにコンテンツや商品の流通回路や販売経路を拡大することで、より人の目に触れるようにする点にあるのではないか。

    *

 

 Navioという会社も、電子的なコンテンツが権利ベースで売買できることに目をつけて、無数の販売経路を作り出して流通させようとしているなど、こうしたビジネスはアメリカでずいぶん増えてきている。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.443)
 

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