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2006.07.07

額に汗しないでも儲かる方法――アフィリエイトの次

「アフィリエイトの次はこれだ」とばかりに新手のビジネスモデルが登場した。
まったくバーチャルなネットの流通システムが生まれようとしている。

●バーチャルなネット小売り「ドロップ・シッピング」

 「額に汗して働いている人々が出し抜かれるような社会にしてはならない」と言ったのは、ライブドアを摘発した東京地検の特捜部長だが、この特捜部長の神経を逆なでするような、額に汗しないで儲かる新手の仕組みがネットで生まれている。

 すでにすっかり普及しているアフィリエイトも、頭は使うにしても、自分のホームページにリンク広告を置くだけで「額に汗しないで儲かる方法」のひとつだろうが、「アフィリエイトより儲かる」ことを売りにしたビジネスモデルが登場し始めている。
 「ドロップ・シッピング」というのがそれだ。

 ドロップ・シッピングというのは「直送」という意味で、それ自体は新しくない。しかし、ネットを使ったビジネスとしてアメリカで流行り始めている。日本でも導入しようとしている会社が急速に増えてきた。

 ドロップ・シッピングを使ったビジネス・モデルはいくつかあるが、とりあえず在庫を持たないネット小売りができる。
 販売サイトなどが、 商品を直送してくれる業者と契約し、購入申し込みがあれば、その注文を業者にまわす。業者が直接顧客に発送してくれるので、在庫リスクがなく、発送する手 間もいらない。ネットでデータをやりとりするだけで、商品を実際にあつかわないまったくバーチャルな小売りである。

 こうしたドロップ・シッピングでは、販売サイトも簡単にできるようになっていることが多い。
 ドロップ・シッピング業者が商品の写真やデータを準備してくれていて、それを自分のサイトに並べるだけで、販売サイトができあがる。
 つまり、業者と契約し、商品を選んでその写真とデータの提供を受け、それを自分のホームページに張り付ければ、準備は終わり。
 注文があれば、その販売サイトの名前で発送したり領収書を送ってくれるドロップ・シッピング業者まである。

 アフィリエイトと違うのは、販売価格を自分で決められることだ。
 卸価格との差が儲けになるので、アフィリエイトよりも利益が大きいはず、というのが、ドロップ・シッピングを勧める人たちの言い分である。

 サブカル系の個人サイトではサブカル・グッズが売れるし、映画好きのサイトではDVDなどが売れるだろう。1個から直送してくれる業者があれば、そうしたことが可能になる。そんな商品ばかりを集めている卸業者も、日本で誕生しつつある。

●オークションでも売れる

 「サイトを作るのは面倒だな」という人にも、ドロップ・シッピングを使える方法はある。
 オークションで売るのだ。
 ドロップ・シッピング業者と契約しておき、そこが提供している商品をオークションに出す。
 出品物を持っていないわけだが、落札されたら、業者にオーダーをまわし、商品を送ってもらう。

 なんだかやばそうな話だな、と思うが、とりあえずちゃんと落札されたものが届くのであれば、オークション詐欺とはいえないだろう。
 日本のオークション・サイトはまだこうした出品を認めていないところが多いが、アメリカの大手オークション・サイトの『イーベイ』は、そうした商品であることを明示するなどの条件で認めており、さらにドロップ・シッピング関連業者を認定してお墨付きまであたえている。

 日本のいまのオークション・サイトや販売サイトでも、写真やデータが並んでいるだけで、ほんとうにその商品を持っているのかはわからない。しかし、購入した商品がちゃんと届けば、購入者は気にしていないようだ。

 こうしたことはネットでなくてもあった。
 カタログ販売では実際の商品を見ずに写真だけで売買している。
 また、どんな種類の商品でも、店になければ「取り寄せ」になるが、その場合は、元売りから顧客に直送されることもある。

 ネットのドロップ・シッピングは、そういう仕組みをシステマティックにやろうとしているだけ、ともいえる。
 きちんと仕事をしていて信頼できるドロップ・シッピング業者を使っているかぎりは、たしかにそれほど変わりはないかもしれない。

●ねらい目の市場と商品

 へえー、簡単そう、と思うが、しかし、買うほうだってバカではない。
 同じものがもっと安く買えないかと検索ぐらいはするだろう。
 オークションだって、何人も同じ商品を出品していれば、価格競争が起こり、高値で売れなくなる。

 どの検索サイトも、ネット横断型の商品検索には力を入れ始めている。
 検索されれば、安く売っているところがわかってしまう。
 多くの人がこのような売り方を始めるようになればなるほど、価格競争が激しくなっていくことはまちがいない。
 商品に何らかのオリジナリティが加わっている必要も出てくるだろう。

 ということからか、オリジナルの図柄をプリントして直送します、というドロップ・シッピング業者もある。
 写真やイラストなどをあらかじめ送っておけば、購入申し込みが入りしだい、Tシャツやマグカップなどにプリントして直送してくれる。
 サイトのオリジナル・グッズとして商品を販売することもでき、デザインに自信がある人には向いている。

●個人で簡単に始められる「貿易」

 ドロップシッピングを使うかどうかはともかく、なるほどこれはありうるかも、と思ったのは、日本独特の商品を海外のオークション・サイトに出品するというやり方だ。
 着物や扇子、あるいは観光地のお土産品程度でも、海外のオークションに出せば物珍しがられて高値で売れる可能性がある。
 また、日本のマンガやアニメは、いまや世界市場を持っている。日本ではありふれているグッズも、海外で手に入りにくければ、写真と簡単な説明だけでほしがる外国人はいそうだ。
 需要と供給の関係で、思いがけない値段がつくことだってあるだろう。
 ものを遠くへ運ぶことによって価値を生み出すというのは商売の基本だから、着物でもサブカル・グッズでも、日本独特のものを海外のオークションにかけるというのはうまくいくかもしれない。

 ドロップ・シッピングについての日本語の本はまだほとんどないが、『日本人が知らなかったネットで稼ぐ新方法ドロップシッピング』という本を書いた青田貴典という人は、こうしたビジネスを実践しているそうだ。
 青田氏は14歳のときにオーストラリアに渡ったというから英語力があるのだろうが、英語に自信がない人でもできる方法を本の中で説明している。

 英語市場に参入する人は多そうだが、いまやネット・オークションは世界中にあるわけだし、こうした形での「輸出」は可能かもしれない。
 貿易などというのはこれまで個人が気軽にやれることのようには思えなかったけれど、オークション・サイトを使えば、きわめて簡単にできるわけだ。

 ドロップ・シッピングは、ネットならではの「頭を使うだけで額に汗しないで儲かる」要素があって、なかなかおもしろい。
 もう少し詳しく知りたいと、ためしに、イーベイがお墨付きをあたえているワールドワイド・ブランドという会社のサイトを覗いてみた。ドロップ・シッピングのための専用ソフトまでできている。

 これらのサイトをあれこれ覗いているうちに、ドロップ・シッピングのいろいろな問題点も見えてきた。
 日本でもトレンドになるかもしれない「アフィリエイトより儲かるドロップ・シッピング」について、次回ももう少し詳しく見てみることにしよう。

    *

 商品を持たずに売るのは、在庫リスクはないとしても、第三者による商品発送には問題が生じる恐れがある。信頼できる業者かどうかの見極めが重要になってくる。どのような問題がありうるかは次回以降で取り上げる。

関連サイト
●ドロップ・シッピングを扱う業者はこのところ急増している。『Web卸問屋.com』もそのひとつ。食品からアウトドア・グッズまで1個から直送する多様な商品を卸している。
●ウェブアークという会社がやっている『セーリングクラブ』は、商品仲介だけでなく、「セーリングマネー」という独自の決済システムまで準備している。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.441)

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