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2006.06.30

おじさんたちのインターネット

インターネットは若者の文化というのは
いまやかならずしも正しくはない。
ネットで熱く議論しているのは、じつはおじさんたち

●2ちゃんねるの年齢構成の劇的な変化

 インターネットは若者の文化で、おじさんたちはなかなかついて行けない、と一般には思われている。
 でも、ほんとにそうかな、と思うこともある。
 ある部分ではむしろ逆で、若い人々が「おじさんたちのインターネット」にはついていけない、と思っているのではないか。

 たとえば、ネットであれこれ理屈をこねてケンカしているのはどうもおじさんが多い気がする。もちろんネットの向こうにいる人の年齢や性別はわかりにくい。
 だけど、ふとしたはずみに漏れる個人的な情報から、なんとなくその人の年がうかがえる、ということはある。そうすると、なんだ、この人も私と同じぐらいのおじさんだったのか、とわかるわけだ。

 ネット視聴率会社ネットレイティングスの調査から明らかになる、家庭から2ちゃんねるにアクセスした人の年齢構成の変化はおもしろい。
 2000 年10月に2ちゃんねるにアクセスしていたのは、10代が13パーセント、20代が52パーセントで、合計65パーセント。2ちゃんねるはまさしく「若者 のサイト」だったわけだ。それから年々若者が減少する。とくに20代のアクセスは劇的に減り、わずか3年後の03年10月には、なんと半分以下の22パー セントになってしまった。

 日本広告主協会のWeb広告研究会が昨年11月に発表した「消費者メディア市場規模調査」のデータはもう少し新しい。04年9月から05年9月ま での4回の調査をまとめたもののようだが、これでは、20代の2ちゃんねるアクセス率シェアはさらに減り、15パーセントにまで落ちている。

 一方、2000年10月には、9パーセントしかいなかった40代、3パーセントの50代は、倍以上の増加を示し、40代が22パーセント、50代 が9パーセントで、あわせて3分の1を超えた。2ちゃんねるにアクセスする人がもっとも多いのが30代で31パーセント。つまり30代以上で65パーセン トを占めている。以前とまったく逆転したわけだ。

 社会が高齢化しているにしても、ネットにアクセスする人の割合は高齢になるほど少ない。
 昨年の通信利用動向調査では、40代が85パーセント、50代が65パーセントと40歳ぐらいから減り始め、65歳以上は、18パーセントがネットにアクセスしているに過ぎない。
 時間が経てば歳はとるわけだけど、それだけでは説明できないほど2ちゃんねるの高齢化は著しい。
 このときからさらに時間が経っているいまは、この傾向はもっと顕著になっているに違いない。2ちゃんねるでカンカンガクガク論争を繰り広げ、それに関心を持って読んでいるのは、いまや大半がおじさんたち(おばさんもいるかもしれないが)というわけだ。

 そういえば、テレビドラマの「電車男」でも、主人公の「電車男青年」を除くと、「おじさん・おばさん2ちゃんねらー」が目立っていた。
 ドラマ化にあたっては、2ちゃんねるの実際の年齢構成も意識したのだろう。
 少子高齢化している最近の2ちゃんねる状況を反映して、「電車男」は、「おじさん・おばさん・ねらー」が少数派になった若者を温かく応援するという「社会派ドラマ」でもあったわけだ。

●ブログの年齢構成

 ビデオリサーチインタラクティヴのブログ訪問者の年齢構成調査によれば、ブログにアクセスしているのも中高年が多数派で、35歳以上が53パーセントだ。
 年齢の分け方が先の調査とちょっと違うけれど、30歳以上ということならば、60パーセントを軽く超えるだろう。
 10代や34歳以下の男性の割合は漸減傾向で、コンスタントに増えているのは男女とも50代以上だ。ブログを読んでいるのも、やはり中高年が多くなってきているわけだ。

 もちろんどんなブログかによってアクセスする中心世代は変わってくるだろうけど、おそらく2ちゃんねる的な論争モードや専門家のブログになればなるほど、読んでいる人の年齢層は高いのではないか。

 では、若い人たちがどこへアクセスしているのかというと、これは容易に想像がつくだろう。
 ビデオリサーチインタラクティヴがやはり今年 4月に明らかにした調査では、たとえば、ミクシィなどの会員制のコミュニティ・サイト(SNS)は、34歳以下が55パーセントを占めている。とくに20 -34歳の層が多くて、この世代だけで35パーセントになる。ミクシィなどにいる3人に1人以上は20代から30代前半というわけだ。

 また、音楽配信や動画配信、オンラインゲームなどに関心が高いのも若い層だ。
 昨年春に経産省の委託で行なわれた情報通信ネットワーク研究会の報告書では、音楽のダウンロード購入の認知率は、19歳以下がダントツで高い。
 10代は、小額決済の支払い手段がないことがネックになって購入に到らないことが指摘されているものの、それでも19歳以下のダウンロード・サイトへのアクセス率は8割近い。
 世代が上がるごとに減っていき、20代になると7割を切り、30代以上は5割前後という結果になっている。
 この報告書では、オンライン・ゲームも、25歳以下が65パーセントを占めている。

 オンデマンドの有料動画配信の利用者は30代、40代、20代の順だが、アメリカで急成長している無料投稿動画サイト「ユーチューブ」には日本か らも5月には410万人のアクセスがあり、利用しているのは若年層が多い。19歳以下が37パーセントを占めていると、4月にネットレイティングスは発表 していた。

●若者に嫌われるサイト

 あれこれ数字を並べてきたけれど、何が言いたいのかというと、おじさんたちが暗く熱い議論をしているのを尻目に(というよりも、暗く熱っぽく議論 していればいるほど)若い層は嫌気がさし、SNSなどで仲間うちで楽しく過ごすことを望み、音楽やゲーム、あるいはクスッと笑える無料の動画を見るように なっている、ということを、こうしたデータは示している。‥‥などと、他人ごとのように書いているが、まちがいなく「おじさんインターネット利用者」の私 も、つい最近ネットで暗く熱い議論をしてしまった。
「あーあ、こんなことをやっていると若い人たちは寄りつかないよ」と思って、「2ちゃんねるがおじさん化している」という話を思い出したというわけだ。

 ベストセラーになった梅田望夫さんの『ウェブ進化論』には、ネットの暗い面を描かず、明るい面ばかりを取り上げているという批判がある。ご本人 も、意識的にそういう本を書いたと言われていたと思う。ネットの半面を強調するような書き方がいいかどうかがこの本に対する評価のひとつの分かれ目だ。

 しかし、ホリエモン逮捕に始まって、IT企業と親交の深い村上ファンドの村上世彰氏も捕まった。IT業種の魅力に影が差しているように思われる時期だけに、大きな希望が感じられるネットの本がベストセラーになったのは、ともかくもいいことだと思う。
 真剣だったり公平であることはもちろん必要なのだけど、それ一辺倒だと現実問題として嫌われる。

 ところで、「2ちゃんねるにアクセスしているのはおじさんたちが中心」と書いたけれど、先の広告主協会の調査報告によると、驚くことに、12歳以下、つまり小学生までが5パーセントもいる。
 とすると、早熟な「小学生2ちゃんねらー」に「おじさん2ちゃんねらー」が論破される、などということも現実に起こっているのだろうか。
 「まさか」とは思うけれど、ネットの向こうにいる人の歳はわからない。
 それに考えてみれば、私も、日常生活で、小学生の子どもに言い負ける、なんてことはしょっちゅうあるしなあ。

    *

いろいろな調査結果が発表されるけれど、何年かまとめて見ると、また違った面が見えてきておもしろい。ネットの歴史はまだ短いけれど、それでもずいぶん思いがけない変化があるものだ。

関連サイト
●日本広告主協会Web広告研究会「消費者メディア調査」の結果を報じたリリース
●調査会社のビデオリサーチインタラクティブは定期的に性別・世代別のブログ訪問者調査をしている。
YouTubeに関するネットレイティングスの発表
asahi.comのYouTubeなど動画投稿サイトに関する記事

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.440)

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