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2006.05.26

Web2.0時代の動画配信

動画配信が一変し始めた。
受動的に見るだけでなく、
ネットを通して共有しみんなで語れる、
そんな動画配信が強い支持を集めている。

●動画配信の本格化

 多チャンネル時代になれば、当然ながら、見てもらえない番組がたくさん生まれる。制作側がコストを捻出するためには、オンデマンドで見てもらうしかない。
ちょっと考えればわかることだが、その当たり前のことが、まだあまり当たり前にはなっていない。

 番組の再利用について先行しているアメリカでは、たとえばアマゾンは、テレビ番組などのコンテンツをオンデマンドでDVDにして売るのだそうだ。テレビ 番組のDVDを売るだけなら、日本でももちろんやっているが、注文を受けてからDVDにするというのはユニークだ。次世代DVDにはいろいろなフォーマッ トがあるが、こうしたやり方ならば、希望するDVDに焼き付けて売ることもできるだろう。

 もちろんテレビ番組のネット配信も、アメリカではさかんになっている。たとえば、大手テレビ・ネットワークのひとつCBSのサイトにアクセスしたら、 トップページに、オンデマンド配信しているドラマのビデオの売れ行きリストがいきなり現われ、1話99セントとかでダウンロードできる、と案内されていた りもした。また、米アップルは、昨年10月に、iPod向けにテレビドラマのビデオ配信を1話1ドル99セントで始めて話題を呼んだ。

 さらに、『グーグル・ビデオ』は、テレビ番組などを有料でダウンロードしたり、一日単位で「レンタル」(つまりその間だけネットで見れる)できるように している。米グーグルのこのサイトは、昨年1月にテレビも含めた動画の検索サイトとして立ち上がり、4月には動画像のアップロードが可能になった。そし て、今年1月からは、プロ・アマを問わず、制作した動画の有料配信もできる。

 

広告収入の比重がきわめて大きいグーグルだが、さしあたりこのビデオ検索につ いては広告を載せず、配信収入で運営するとのことで、有料の動画の場合は、原則として価格の3割を手数料としてとっている。先々は広告を載せる可能性もあ るというが、グーグルは、広告以外の新たな資金源を探ってもいるのだろう。

 しかし、『グーグル・ビデオ』で、意外なほどの人気を集めているのは、無名の人々がアップロードした無料映像だ。不特定多数の人々がコンテンツやサービ スを作り広めていくといったネットの特徴を「Web2.0」と呼ぶのがこのところの流行りだが、「グーグル・ビデオ」はまさにWeb2.0的なサイトに なっている。
 もっとも、無料のやりとりばかりされたのでは儲けにならないから、グーグルとしては、目論見はずれの面もあるだろう。

●グーグルに勝っている無名の若者たちの配信サイト

 いまを時めくネットの帝王グーグルにとってさらに予想外だったことには、『グーグル・ビデオ』は、29歳と27歳の若者が半年前に正式オープンしたサイ トに負けてしまっている。

 無名の人々が作ったサイトでもたちまち人気を集めるというのは、何が起こるかわからないネットの世界をまさに象徴するようだが、 すべて無料のこの動画配信サイト『YouTube』では、毎日4千万のダウンロードが行なわれ、3万5千の新しい動画像がアップされているという。サイトへ のアクセス数でも、アップルの『iTunesミュージック・ストア』を上まわっている。

 これだけ人気を集めているのだから、当然ながらメディアの注目度も 高い。
 また、ヤフーやグーグルに投資してきたセコイア・キャピタルも、この会社に計1150万ドル(約13億円)を投じ、『YouTube』は資金的にも順調のよう だ。

 このサイトを作ったチャド・ハーリーとスティーブ・チェンは、ともにネットの決済サービス会社『Paypal』の社員だった。昨年1月のディナー・パー ティーのあと、ビデオを送ろうとして、大容量の映像を共有できる仕組みがないことを感じ、2月に会社を設立して開発を始めた。
 5月に試験版が完成、12月 に正式にサイトを公開した。
 そのときにはもう1日あたり300万の動画像がダウンロードされていたというから、まさにWeb2.0時代のすさまじさで、正 式オープン以前からネットの口コミで人気を呼んでいたわけだ。

 この急成長ぶりにはスタッフたちも唖然としているようで、ある女性社員が、会社のブログに次のように書きこんでいる。

「われわれは前代未聞の成長をしてきました。ほとんどいつも、何とかこのスピードに追いつこうとして息つく暇もありません。ときどき席に座って20数名の社員を見まわし、こんなに短いあいだにわれわれがどんなに遠くまで来たか信じられない思いでいます」。

 アメリカは、日本に比べればブロードバンドの普及が遅れていると言われてきたが、この4月に発表されたOECDの国際比較調査では、昨年12月の時点で ブロードバンド人口は4930万人に達し、人口比でも日本に近づいた。人数としては日本の倍以上だ(この調査では日本のブロードバンド人口は2250万 人)。

 もっともアメリカでは、ブロードバンドとは言っても、接続スピードがさほど出ていないこともあるようで、こうした状況も、簡単にダウンロードできる 短い動画像が人気を集めた一因かもしれない。
 しかし、それだけではない。
 短いビデオ・クリップならば、ブログやSNS、掲示板などからリンクを張って、簡 単に見て話題にできる。情報共有しやすいことが、短期間で爆発的に高い人気を獲得した最大の理由だ。

 日本語の動画のページにリンクを張れば、英語サイトであることもさほど気にならないということか、ネットレイティングスの先月末の発表によれば、日本か らのアクセスも月間200万を超え、ネット利用者の利用率では米国に並んでいる。10代が37パーセントを占めており、若者層を中心に日本からも利用され ている。

●YouTubeの未来は?

 『YouTube』は、いまはグーグルのリンク広告を載せているだけだが、いずれもっと本格的に広告に乗り出すつもりもあるらしい。若い創立者たちは、その気になれば、動画広告で月1000万ドルぐらいの収入はすぐに得られると豪語している。

 グーグル・ビデオの責任者も、「人々が広告を好んで見ることには驚いた」と言っている。視聴者は、番組の途中に広告が流されることは嫌っても、ショート・ムービーとしての広告はおもしろがる。

「利用者を広告責めにはしない」と『YouTube』のハーリーは言うが、やはり新興のビデオ配信サイト『Dave.TV』なども、アップされた映像に応じた広告を載せると言っており、動画広告には、まだまだ開拓の余地があるということなのだろう。

 『YouTube』は順調すぎるほど順調だが、心配の種がないわけではない。
 著作権侵害のコンテンツは削除すると言うものの、そうしたコンテンツがたくさん アップされている。訴訟になって消滅したナップスターの二の舞になるのではないかという懸念の声もあがっている。
 『YouTube』側は、著作権侵害の被害を抑 えるために、とくに登録しなければ、アップロードを10分までの映像に限るといった対策を3月からとるようになった。
 たとえ著作権侵害のコンテンツを排除 し、訴訟の恐れがなくなったとしても、「逆立ちするペット」みたいな映像で、ほんとうに人気を保てるのかという皮肉な意見もある。
 とはいえ、こうしたサイ トは、動画配信についての考えを確実に変え始めている。

関連サイト
●無料動画配信サイト『YouTube』
●動画検索・配信サイト『グーグル・ビデオ』。有料の映画やテレビの映像は、国の壁の制約があって、日本では見ることができないが、無料映像は問題なく見ることができる。
●『グーグル・ビデオ』や『YouTube』人気の影響か、フジテレビも、個人の動画の無料配信までやる『Watch Me!TV』と名づけたサイトを開設すると5月1日に発表した。7月に試験運用、10月正式オープンの予定とのことだ。ASCII24などに記事が出ている。
●慶応大学のデジタルメディア・コンテンツ統合研究機構は、5月10日、動画配信の実 験サイト『Volume One』を公開した。日本でも『YouTube』を意識した配信サイト開設の動きが続いている。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.435)

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