近未来のテレビ視聴
やがてくる多チャンネル視聴時代のテレビの見方は
どのようなものになるだろうか。
CS放送を通して来るべき時代を感じとってみよう。
●多チャンネル放送時代のテレビ視聴
「スカパー!」はテレビだけで約180チャンネルを見ることができるが、180チャンネル全部を見る人がいるなどとは、「スカパー!」も想定していないだ
ろう。
各チャンネルを見るためには、「スカパー!」と契約したうえで、チャンネルごとに契約する必要がある。
スポーツ好きならスポーツ・チャンネルをまと
めたパッケージ、映画好きなら映画チャンネルのパッケージ、釣りが好きなら釣りチャンネルを単独で、音楽好きならMTVなどといった形でそれぞれ契約する
仕組みになっている。
こうした多チャンネル放送は、地上波テレビ同様、リアルタイム視聴を前提にすることが、そもそもふさわしいのだろうか。
多チャンネル視聴が可能になると、チャンネル数が多すぎて、番組を選ぶのが厄介になる。テレビを見るたびごとに、有料の分厚い番組案内をくって調べてか
ら見る、などという人は少ないだろう。たくさんのチャンネルの契約をしても、実際によく見るのはそのうちひとつかふたつ。それらのチャンネルを漠然とつけ
るか、何をやっているか知っている番組を見る、といったぐあいではないか。
けれども、それでは「宝の持ち腐れ」だ。見ないチャンネルまで契約している視聴者にとって損なのは当然だが、「スカパー!」や番組提供側にとっても、見 てもらえないのであれば、いずれ契約を打ち切られてしまう可能性が高い。見てもらうためには、当たり前だけど、見たい番組が見やすくなければならない。
視聴者サイドの「対策」としては、デジタルビデオレコーダー(DVR)の機能を使う、ということがまず考えられる。キーワードを指定すれば関連番組を自
動的に録画してくれる機能や、興味のある番組を学習して勝手に録画してくれる機能などは、多チャンネル視聴ではいよいよ威力を発揮するはずだ。こうした機
能を使えば、分厚い番組案内をくる必要も、チャンネルが多くなればなるほど使いにくくなる電子番組表を、リモコン操作して見る必要もない。番組を録画し、
再生するだけで、チャンネルの多さにわずらわされずに見ることができる。
とは言っても、いまのところたいていのDVRは、どんな放送でもキーワード録画で
きるわけではない。110度CSは、チューナーを内蔵しているDVRでは比較的可能だが、それ以外の多チャンネル放送にまで対応している機種はまだ少な
い。
視聴者は、チャンネルを見たいわけではなくて、番組が見たいのだ。「スカパー!」では、契約していないチャンネルで見たい番組をやっていたとしても、わ
ざわざ契約するのが面倒で、あきらめている人が多いと思われる。
これでは番組提供側もビジネス・チャンスを失っていることになる。
チャンネルごとの契約で
はなくて、チャンネルに関係なく見たい番組をオンデマンドで見られれば、いまよりもっと見たい番組が見やすくなる。
キーワード指定でも、学習機能でもいい
が、その人が関心のありそうな番組が自動的に提示され、見たぶんだけお金を払うというほうがずっと合理的だ。
録画視聴している人たちも、ニュースとスポーツは比較的リアルタイムで見ているという。
こうした番組は、早く情報を知りたいからだ。
逆に言えば、これら
の放送以外、リアルタイムでの放送の必要はあまりないことになる。
リアルタイムで見られることを前提にしているいまのようなテレビ放送は、多チャンネル時
代になればなるほど崩れていくように思われる。
●テレビは、もっと孤独な楽しみになる?
とはいえ、テレビというのは長らく、ただ見て楽しむだけのメディアではなかった。見た番組について家族や友人と話をし、共通の話題にすることで、その魅力が倍加するメディアだった。
かつてテレビがいまよりもっと贅沢品であったころには、お茶の間に一台ドンと置いてあって、家族が集まって見てあれこれ語り合うのが当たり前だったし、
そのもっと前には、町角に一台だけあって町の人が集まってそれを見ていたりもしたそうだ。
しかし、家族の人数が減り、一人暮らしの人が増え、一人暮らしで
なくても、自分の部屋で一人で見る人も多くなってきた。
それでも、チャンネル数が少ないときには、同じ番組を見ている人が学校や職場にいて、前日の夜の番
組を話題にできた。ところが、チャンネル数が爆発的に増え、さらにオンデマンドで好き勝手に見られるようになると、テレビのこうした持ち味は薄れてしま
う。もはや次の日に前日の夜の番組を話題にする、といったことはむずかしくなっていく。
テレビを見るのが、とっても孤独な営みになっていくわけだ。もはや
テレビ番組を語り合える人はどこにもいないのか‥‥という気がしてくるが、そうではないだろう。
●ネット越しにみんなで見る未来のテレビ
「テレビブログ」というサイトがそうした未来のテレビ環境についての解決策を提示している。
このサイトの基本的な仕組みは簡単だ。
「テレビブログ」の番組表に、ブログで書いた番組の感想をトラックバックしてもらい、番組ごとに視聴者の感想を一
覧できるようにしている。それだけのことだが、いつ番組を見たとしても、ネット上でその番組についての感想を見たり書いたりできる。
「テレビブログ」の番組表では、放送が終わったものについては、詳しい番組ログが表示されている。
たとえば、テレビ朝日の朝の番組「やじうまプラス」をクリックすると、
04:25:00オープニング 東京タワーの映像あり。
04:25:23【サッカー】キリンカップ・日本代表-ブルガリア代表 W杯ドイツ大会 目前、ジーコ監督はFWに玉田圭司を指名。
04:26:07気象情報(中継)東京港区・六本木ヒルズ情報カメラ。
などと秒刻みで、すでに放送した番組の詳細な情報が掲載されている。その番組を録画していれば、特定のシーンを再生することもできるようだ。部屋で一人で番組を見ていたとしても、(ネット越しに時間差で)他の人と「お茶の間の会話」をしながら、テレビを見られるわけだ。
ただし、ほかの人が話題にしている過去の番組を見るためには、自分もパソコンで録画していなければならない。
他人が録画してくれたものをネット越しに見
ることができれば便利だけれど、著作権の問題があって、それはできない。
自分もその番組をたまたま見ているか、あらかじめ録画していなければ、感想を言い
あうことができないわけだ。その点がこの仕組みのさしあたりの泣き所だ。
現状では、「テレビブログ」の使い勝手はいまひとつで、そうしたこともあってか、「テレビブログ」に書きこんでいる人が少なく、この仕組みのおもしろさを感じにくくなっている。
でも、テレビとパソコンがもっと融合し、みんなが録画してテレビを見るのが当たり前になり、とくに一定期間内のすべての番組を録画できるような装置を多
くの人が持つか、あるいは、オンデマンドによってすでに放送した番組を見られるようになれば、「テレビブログ」の仕掛けは生きてくるはずだ。
そのときには、こうしたブログを通して、おもしろい番組、話題になっている番組を発見し、それを見て、「お茶の間の会話」をネット越しにするようになっているのだろう。
関連サイト
「テレビブログ」では、テレビ視聴をネット越しに共同体験するためのおもしろい仕組みがいろいろ提供され
ている。このサイトが提供しているソフトを使うと、番組の特定のシーンにコメントをつけたり、録画番組の再生中にほかの人が付けたコメントを映像とあわせ
て見ることができたりする。こうした仕組みのなかにも、「未来のテレビ」は眠っているのだろう。
(週刊アスキー「仮想報道」Vol.434)
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