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2006.04.14

ワンセグはテレビを変えるか?

4月1日に29都府県でワンセグの本放送が始まった。
まだ見ている人は少ないだろうが、
こうした究極のパーソナル視聴がテレビを変えるかもしれない

●「ユビキュタス・テレビ」の時代の始まり

 ワンセグ対応の携帯電話を購入して使っている。
 アナログ放送の受信はこれまでもできた。しかし、受信が不安定で、見る気になれなかった。デジタル電波を受信しているワンセグは、評判通り野球のボールまでくっきり見える。
 家の中のテレビははっきり見えて当然のように思っている。しかし、携帯電話だと、鮮やかに見えるだけで驚く。でもじきに、いつどこででも鮮明なテレビ画像が見えて当たり前と思い、驚いていたことがウソのようになっていくのだろう。

 携帯電話だけでなく、パソコンでもゲーム機でも、ワンセグ対応の機器ならば、簡単なアンテナだけでクリアな画像を見ることができるわけだから、デジタ ル・テレビ放送は、これまで以上に生活のさまざまなところに浸透していくにちがいない。
 もちろんワンセグは大きな画面では見劣りするだろう。
 けれども、実 際のところ、「持ち運びしやすい小型の画面で、そんなにきれいに見えなくてもいい」ということはけっこうあるのではないか。

 高級なマンションでは、浴室や台所などにテレビが設置されているが、とくに金持ちでなくても、防水加工してあるワンセグ機器を一台買えば、それを持って好きなところへ行ってクリアな画像のテレビが見れる。

 デジタル放送はワンセグでもデータ放送を送ることができ、双方向的だ。画面の傍らに現われるデータ放送のリンクをクリックすれば、情報を呼び出したり ショッピングもできる。
 テレビを見ながらほんとうにそんなことをするだろうか、とこれまで言われてきた。
 リビングで寝そべってテレビを見ているときには、 たしかに面倒でやらないかもしれない。
 でも、電車の中で、ケータイ・テレビを見ているときは、かならずしもそうではないだろう。ヒマを持てあましているわ けだし、バラエティやトーク番組で話題になっている本や商品を購入する、ということはやるのではないか。あるいは、お風呂に入っているときに、温泉旅行番 組を見て、「あ、こんどの休みにここへ行こう」と画面下のリンクをクリックして申しこむ、などということはやりそうだ。

 リビングのテレビの見方は受動的だが、ケータイ・テレビのほうはもう少し能動的で、テレビを「見る」だけでなく「使う」ことまでするように思う。「いつどこででもテレビが見れる」という特徴は、デジタル・テレビの双方向的な機能を活かしやすい。

●番組の中に広告が進出する?

 ドラマなどの中にさりげなく商品を登場させる「プロダクト・プレースメント」と呼ばれる広告も、デジタル放送の浸透にともなって導入の動きが加速されるだろう。
 ハードディスク・レコーダーの世帯普及率が上がれば上がるほど、テレビCMは飛ばし見される。それに対処するために、CM提供側は、番組内に広告を入れ たい。実際、スポンサーの商品をさりげなく登場させている番組はすでにあるが、現状では、広告だとわからないような放送をするのは放送法違反である。しか し、こうした規則が崩れていくのはもはや時間の問題かもしれない。

 放送と通信をめぐる政府のさまざまな会議では、放送と通信の「規制のアンバランス」がしばしば問題になっている。放送には、いま書いたような広告の識別 をはじめ、さまざまな規制がある。通信のほうは、通信内容については「放送の秘密」が守られていて、放送に比べて規制は格段に少ない。
 放送と通信のあいだにこうした違いがあっても、これまではとくに支障はなかった。しかし、放送と通信が融合し、同じような役割を担うようになればそうは いかない。
 同じことをやっているのに一方は規制がいっぱいで、片方は自由というのでは不公平だ、ということになってくる。

 厳しいほうにあわせるか、ゆるいほうにあわせるか、どちらかにするしかないが、ディスプレイの下半分に表示されるデータ放送では広告を出すことができ、 さらにクリックして飛ぶ仕組みまであるのに、クリックしたくなるような広告を番組中に流してはいけないというのは、維持するのがかなりむずかしいルールの ように思われる。

●ワンセグを見るのは誰?

 アナログ放送よりデジタル放送のほうがバッテリーの持ちがいい。ドコモのワンセグ・ケータイでは、アナログ放送は1時間しか受信できないのに対し、デジ タル放送は3時間持つ仕様になっている。
 燃料電池が使われるようになれば、バッテリーの消耗をいまほど気にする必要はなくなるだろうが、さしあたりバッテ リーのこの消耗具合が、ワンセグの普及の仕方にも微妙な影響をあたえるのではないか。

 昨年、ワンセグ放送について調査しているという研究所の人が話を聞きたいとやってきて、どう利用されると思うかと尋ねられた。
 「まったくの推測だが」とお断わりしたうえで、「若い世代よりもおじさんたちのほうが見るんじゃないか」と答えた。
 若い世代にとって何よりコワイのは、ケータイのバッテリーが切れることのはずだ。
 その一方、若者のテレビ離れが進んでいる。
 それほど執着のないテレビ放 送を見るために、社会生活を送るための彼らのライフラインであるケータイの「残存時間」を縮める危険を冒すだろうか、と思ったのだ。

 おじさんたちは、ケータイ・メールを(一般的には)ばんばん打つわけではないし、帰宅時なら、自宅に「帰るコール」をしてしまえば、もうバッテリーが切 れてもそれほど支障はないだろう。バッテリーの心配よりも、これまで見ることのできなかったニュースやドラマを見ながら帰ることのほうを選ぶのではない か。

 また、年齢層の高い世代のケータイの用途は若い層に比べて限られている。そうしたなか、テレビというのは、年齢層の高い世代にとっても、とっつきやすい 利用方法だ。
 まあ半分、自分のことを考えながらの推測だが、実際に使ってみて、利用者の幅の広いサービスであることは確かだと思う。
 さらにもっと確実に言 えそうなのは、ワイドショーや昼メロに妙に詳しい外回りの営業マンなどが現われる、ということかもしれない。

●多チャンネル放送の生きる道

 視聴率は、調査会社から依頼された世帯のテレビに調査機器をつけて調べており、さしあたりワンセグは対象になってはいないだろう。しかし、ワンセグがもっと普及し、視聴率の対象になり始めたら、テレビ番組の作られ方にも微妙な影響が出てくる可能性がある。
 いまは、ワンセグの放送も、地上波と同じ番組を流しているだけだが、ワンセグ独自の番組を作れるようになったら、主婦を対象にした番組が多いお昼前後の時間帯にも、昼休みのサラリーマンを意識した番組が作られるようになるだろう。

 ワンセグというのは、放送電波を13に分けて、12セグメントは通常の地上デジタル放送、のこりの1セグメントだけを移動体端末の受信のためにあててい る。いわば「残りもの」で、家電業界などにとってメインは、あくまでも高精細・大画面のデジタル・テレビのほうだろう。
 でも、「いつでもどこでも持ち運び できる」という特徴の持つ威力は、思いのほかすさまじいのではなかろうか。
 「鬼っ子」が、普及が遅れているデジタル放送の救い主になる、ということはあり そうな気がする。

 さらに、いまBS、CSとあわせてテレビは、環境さえ許せば200チャンネルぐらい見ることができる。いわば番組があまっている状況で、こんなに番組を 作って見る人がほんとうにいるのかと言われている。
 だけど、究極のパーソナル視聴であるワンセグ放送では、趣味やニッチな関心に沿ったCSの番組などにも 需要があるのではないか。
 ゴルフ専門チャンネルに釣りチャンネル、将棋チャンネルなど、ニッチな番組の思いがけない活路は、こうした「究極のパーソナル視 聴」にあるように思う。

   *

 NTTの再々編について前回書いたけれど、再々編の可能性はけっこう高いかもしれない。政府の委員会では、思いのほかこうした議論が広がっている。放送と通信の融合のためにはまずNTT再々編が必要、というムードが出てきている。次回はそれをとりあげよう。

関連サイト
auのワンセグ対応ケータイ「W41H」。先行発売しているauのもう ひとつのワンセグ対応ケータイ「W33SA」の価格は早くもかなり下がっている。
ドコモのワンセグ対応ケータイ「P901iTV」。 ドコモのワンセグ対応ケータイはこれだけ。ワンセグを見るだけでは通信料は発生しないから、携帯各社はさしあたりあまり積極的ではないようだ。
ワンセグ・チューナー搭載可能な「VAIO type Tオーナーメードモデル」。ゲーム機など、多様な機器がワ ンセグ対応になり始めた。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.430)

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