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2006.03.17

謎のサイト『きっこの日記』に思うこと

「うーん、よくわからない」。
そんなブログが人気を集めている。
まあおもしろいサイトなんだけど、
これっていったいどう考えたらいいんだろう?

●ヘアメイクは何でも知っている‥‥

 ネットでちょっとディープなニュースを見ている人は、まず知っている。だけど、つい最近、週刊誌などで取り上げられるまで、リアル・ワールドのたいていの人は知らなかった超有名ブログがある。同文章で、ひとつは『きっこの日記』、もうひとつは『きっこのブログ』と名づけられているサイトだ。
 じつは、このコラムでも、昨年秋、耐震偽装事件を取り上げたとき、次のようにちょっと紹介したことがある。

「この事件に関するもっとも不思議なサイトはこれだろう。ヘアメイクの仕事をしているという『きっこ』なる女性が書いたブログ。早くから事件の黒幕として総研の内河所長の名が出ていた。どこから仕入れているのかわからないが、インサイダーっぽい情報が満載。国会で証拠を示して追及した馬淵議員の事務所とも関係があると言う。イーホームズの藤田社長からのメールが来るハプニングも」。

 まあ端的に紹介するとこのとおりで、その後、ライブドア事件が起こると、ホリエモンと沖縄の「ホニャララ団」(という言い方を『きっこの日記』はしているけれど、暴力団のことだろう)との黒いつながりみたいなことを書き始めたかと思うと、沖縄で自殺した野口氏の遺族が、他殺の可能性を捨てきれないと書き送ってきたメールを公開したりと、引き続き話題を呼んでいる。

 『きっこの日記』には、事件を追いかけているメディア関係者も注目していた。しかし、ヘアメイクを自称する女性が、なぜこんなに裏情報を次々と仕入れられるのか、誰しも不思議に感じ、情報通の誰かがこの女性の名前で書いているのか、少なくとも背後にいると思われた。
 少し冷静に考えてみれば、『きっこの日記』の不可解さにはすぐ気づく。
 たとえば、「たんなる個人ブログ」がなぜ同じ文章で2つ公開しているのだろうか。
 その内容を強くアピールしたい意図があるのだろうが、それはなぜなのか。
 ‥‥などなど、『きっこの日記』には、よくわからない点がいっぱいある。

 またその情報も、週刊誌やネットの寄せ集めに過ぎないという声もあり、実際それを実証しようという試みもなされた。しかし、週刊誌の情報が色あせるディープな話を次から次へと繰り出し、連日かなりの分量のブログを書いたあげく、「‥‥と思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?」という人を食いきった決まり文句をはさむこのブログの異様な迫力のまえには、なまじっかの疑惑は粉砕され、アクセスが集まるばかりか、「きっこファン」まで出てきた。
「正体をあばいて何になる」という「きっこファン」の悲鳴にも似た声にもかかわらず、その一方、週刊誌やフリーのジャーナリストなど取材能力を持った人々がきっこの正体探しを始めている。

 実際のところ、「きっこの正体」はとりあえず意外に簡単にわかる。プロフィール・ページだったかのリンクをいくつかクリックしてみただけで、この女性が出したとされる句集の写真が現われた(騒ぎが大きくなって、いまはこのリンクはなくなったようだ)。本なので、当然ながら、名前も書かれていた。
 また、「きっこ」の政治的色合いもきわめてはっきりしている。小泉は大っきらいといったことがしょっちゅう書かれ、民主党議員事務所とのつながりもみずから明かしている。政治的意図があるなどと言っても仕方がないぐらいに、政治色は濃厚なわけだ。
 さらに、沖縄出身の女性四人グループMaxの熱狂的ファンとのことで、ブログの記述からは、豊かではなさそうな生活ぶりも読みとれた。
 そうした「きっこ像」は浮かび上がるものの、だからといって、その不思議さは少しも減りはしなかったし、疑いをもって見れば、著者像を明確にしようという試みがかえって怪しくも感じられる。

 でも、きっこファンが生まれる心理はよくわかった。仕事で疲れてふらふらになりながらも、芸能関係者とのつきあいのなかで手に入れた裏情報を次々と書いている「ただのヘアメイクの女性」。誰でも情報発信できるようになった時代をまさに体現しているような存在で、つい喝采を送りたくなる。
 たとえ幻想だったとしてもそれを壊されたくないと思うのは無理もないし、じつは私も少しはそう思っている。
 まあ、『きっこの日記』に書かれていることが全部ほんとうとは思えないけれど、少なくともネット上のエンターテイメントの一つとして楽しませてくれるぐらいの役割は確実に果たしていた。
 ただ、あくまでもネット上の人格にとどまりながら、現実世界への影響力は着実に増大しているということであれば、その正体を突き止めてやろうという人たちが現われるのは当然だ。実際のところ、きっこの正体ばかりか、きっこの正体を探っていた人の正体がわかったという告発まであり、謎が謎を呼んで、ネットのダークサイドを覗かせる事件にまで発展しつつある。

●誰もが情報操作を始められる時代

「きっこ」はともかくもネット上の人格として存在し、ブログという個人空間まである。架空の名前だったとしても、その情報は、2ちゃんねるのような匿名の掲示板とは比較にならない真実味を帯び、また影響力も出てくる。そうなればなるほど、「ネット上の人格」というだけではすまなくなってくるのは仕方がないことだろう。

 このところライブドアの事件をめぐって、検察がグレーな領域にまで踏みこもうとしているのだとすれば、それはおかしいといったことを書いてきたが、こうした不思議なサイトの存在をあらためて見てみると、少し考えが揺れてきた。「風説の流布」という容疑でとりあえずライブドア捜査に着手した検察は、ネットを使ったこうした情報発信のありようも懸念しているのではないだろうか。そう思い始めたのだ。

 『きっこの日記』がどういう人が何のために書きつづっているのかわからないのでこのサイトのことはとりあえず置いておくとしても、もしこうしたサイトが、ある意図を持って作られたときには何が起こるだろうか。
 政治的なスキャンダルを引き起こすことは可能だろうし、また、これまでもネットでディープな情報が流れるたびに、株価操作の疑惑が語られてきた。ネガティヴな情報が出ると事前にわかれば、信用売りして、下がった時点で買い戻せば確実に儲けられる。信用売りをした人間とネガティヴな情報を流した人間の関係が証明されないかぎり、罪には問えない。

 これまで情報操作ができるのは、何らかの形で情報発信力のある人々だけに限られていた。誰もができることではなかったから、捜査当局もいまよりは容易に突き止めることができた。しかしいま、捜査当局は、これまでのようなやり方では対処できない。一般の人々が思っているよりも、いまの社会はずっとダークで複雑なことになっているということが、ライブドアの事件などでも明らかになってきた。
 捜査当局はすでにそうしたことを感じ、グレーな領域にも踏みこまざるをえない、と判断の軸を変え始めているのだろう。

 警察国家になるのはいやだ。しかし、バーチャルな空間の誕生によって資本主義社会の秩序が壊れ始めているのだとしたら、それもまた困ったことだと考えざるをえない。
 何ともむずかしい世の中になってきたわけだけど、ただひとつ確実に言えるのは、検察の態度の変化の理由がいま書いたとおりだったとしても、捜査当局は、そうしたむずかしさをもっとはっきりと具体的に、しかもホームページなどで一般に直接伝わる形で説明し、理解を得る努力をすべきだろう。それを怠って問答無用の捜査をやれば、反発を買い、結局は、それもまた社会を混乱に陥れることになる。

     *

 『きっこの日記』は、爆発的な人気を呼ぶまでに5年も書きつづられてきたそうだから、何らかの意図があったとしたら、とても気の長い準備をしていたことになる。しかし、途中できっこのサイトの「有用性」に気づいた人がいる、ということだってありえなくはない。実際にあるネット企業は、『きっこの日記』は高値で買う価値がある、と評価したようだ。次回はそれを取り上げる。


関連サイト

●ネット騒然の謎のサイト『きっこのブログ』。つい最近までブログの書き手だという「ヘアメイクの女性」のサングラスをかけた写真が載っていたが、話題になって、彼女が好きな飲み物の写真などに変わり、また女性の写真が・・・・。裏ネタっぽい話もこのところ影をひそめている。そうなってみれば、やっぱり残念な気もするが‥… 『きっこの日記』のほうのプロフィール・ページには、かなり綿密な記述があり、『ミクシィ』にも「フリーのヘアメーク」のきっこのページがあって、「知り合い」のコメントまで載っている。あまりに露出し過ぎなのが逆に怪しい、という見方もある。
●5年分の『きっこの日記』を通読して、「5年間の記事の文体は変化しつつも同一人物のもの」で、「一貫して書き続けてきたのが実在する一人の『女性』であることは間違いのない事実だと思う」と結論づけている『絵文録ことのは』。2003年のベスト・アーティクル・ブログ第3位に選ばれ、高く評価されているブログだが、下の『ESPIO』の野田氏から意外な事実が明かされた。この件に関するブロガーの松永氏の反論(?)は『備忘録ことのはインフォーマル』
●公安調査庁出身のジャーナリスト野田敬生氏は、きっこが名乗っている俳人の親などにも連絡をとって、その正体を追いかけ、実在していないと、ブログ『ESPIO』で書いている。
●「インターネット史上最悪最凶、厄病神のメールマガジンと忌み嫌われてきた」と自認する「サイバッチ」も、きっこを追いかけ、「本誌の記事が間違っていた場合には責任を取って廃刊する」と宣言している。「いつもは『うけけけけ。やっちゃいました。またまたまた、誤報です』と言い続けてきた」が、今回は、「蛆虫としてのプライド」をかけているのだという。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.426---一部改稿)

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この国は、サウジアラビアをしのぐ、「地球天然資源群などの保有大国」です、さらに加えて、超膨大で無尽蔵な太陽エネルギーや、海水や、オゾン層のエネルギー群や、地球マグマや、地熱や、風雨や、資源群とエネルギー群などなど、ウランも、無尽蔵に保有中です!~
米国と日本政府当局側は、この保有の事実関係を古くから熟知していながら、これらの大自然様側から無料で無税で贈与され続けている、超膨大で無尽蔵の天然資源群&エネルギー群(※推定数万兆円分以上保有中で、追加の再生産も継続されており、一部分を例外として、枯渇などもしない!…)を意図的に利用せずに、99%以上を廃棄を継続しており、それで、この「日本列島が資源のない国」などと詐称して、その受益群すべき善弱国民側をダマシ続けて、莫大な損害群を善弱国民住民側に強いています!~ こんな粗悪劣悪で、とんでもない「巨悪巨罪の日本政府当局側」は、被害者群のみならず「大自然様側」からも罰せられること必然!~

その超膨大な「天然資源群やエネルギー群」を有効利用する技術群は、すでに開発実用化できているのにかかわらず!(※日本企業や大学などなどが実用の技術群をすでに保有中~)
太陽エネルギーだけでも、1時間に地表に降りそそぐエネルギー質量を計測すると、じつに、地球万民65億人が使用する一年間の全消費エネルギー量をまかなえるほどの膨大な質量であり、これも同計測は地表分だけであり、地表以外の採取可能な地球近隣周辺を加算すると、さらに超膨大な質量となる。この事実関係を、すでに同志社大学の機関誌でも発表している。

この超膨大な「地球天然資源群大国」の資源群と技術を合体させて、普遍的権利として「日本と世界万民が裕福&幸福実現」は充分すぎるほどに可能です!~ その最大の妨害側は、欧米石油メジャーなどと、結託謀略の日本政府側です!~ このままの被害群黙認主義では、人生放棄と同意であり、ですから、普遍的権利として「世界万民の裕福&幸福実現の正当権利群の奪還の言動を!」  ☆ 被害者の私たち、各自がしよう!~

☆ 国内外万民との・茶話や、交流や、交信や、勉学などをしませんか!~、

李 得実(村田 実)
携帯電話  09032755519   ririmurata3@docomo.ne.jp
パソコン  rimurata3@yahoo.co.jp   rimurata3@gmail.com
〒653-0841 神戸市長田区松野通3丁目6-5

「誰もが情報操作を始められる時代」ではなく、すべての情報が現実との一定の距離があり、その情報化にあっては、何らかの変容がなされることだと思う。

メディアリテラシーとは、正しい情報を選ぶことだと言われているが、正しいという語の虚妄さを考えれば、メディアリテラシーとは、情報の受け手が、送り手の都合や意図を踏まえたうえで、コンテンツを受け取ることだと思う。

情報操作を厳密に排除していったら、現実のテキスト化など無理なのだから…。

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