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2006.03.31

放送と通信の融合はバラ色か?

放送の仕組みが大きく変わる制度変更の検討が、
着々と政府の内部で進んでいる。
ふと気づくと、ある日突然テレビが一変していたということも‥‥

●戦後何十年かの放送の仕組みがまもなく変わる?

 年が明けてから、「放送と通信の融合」の話を少し続けて取り上げようと思っていた。というのは、昨年末から今年初めにかけて立て続けに動きがあって、06年は、今後の変化が展望できる年になると思われるからだ。

 大きな動きが起こっていることは、たとえば、最近のパソコンの広告からも感じとれる。ぱっと見るとテレビの広告なのかパソコンの広告なのか、よく わからない広告が新聞などにも載るようになってきた。DVDがあって、ハードディスクがついていて、簡単に録画でき、大画面で‥‥などといった説明は、も はやテレビの広告でもパソコンの広告でもありうる。
 テレビの広告なのかと思って眺めていたら、「あれ、これはパソコンの製品名だった」と気づく、ということさえ起こる。

 

「テ レビとパソコンはどんどん融合していく」と本誌などで私も繰り返し書いてきたが、実際にそうなるスピードは、思っていたよりもかなり早い。テレビだかパソ コンだか一見わからない新聞広告を見て驚いていたら、妻に、「あなた、自分でそうなるって書いていたじゃないの」と言われて、不明(?)を恥じなければな らなくなっている。

 動きが加速されているのは、規制緩和を掲げる政府が強く推進していることも関係している。昨年9月の総選挙で小泉自民党が大勝し、規制緩和派は勢いづいた。しかも、小泉政権は9月に終わる。
 タイムリミットがはっきりしており、放送と通信の融合にかんしても次期政権をも拘束する方向で固めてしまいたい。
 ライブドアの強制捜査や耐震偽装問題などの事件が起こり、また社会の格差が拡大していることも問題になってきて、このところ規制緩和派の勢いは少し落ちたものの、依然として規制緩和に向けてのアクセルは踏まれ続けている。
 そして、半世紀にわたって続いてきた放送の仕組みが大きく変わる決定がわずかの期間のあいだになされていく。

 ライブドアの思いがけない事件があってちょっと中断してしまったが、引き続き何回かに分けて、放送と通信をめぐる大きな変化について昨年末から起こっていることを紹介してみよう。

●地方の放送局がキー局を脅かすことができるか?

 昨年12月21日に発表された政府の規制改革・民間開放推進会議の第2次答申では、規制改革・民間開放の改革は「官による配給サービス」から「民 による自由な競争・選択」へと制度の転換を図ることにあると言い、官が定めた特定の者だけが、官によって決められた財・サービスを提供する世界は「社会主 義的システムにおける市場の機能を無視する配給制度と同様」で、「我が国の公共サービスの大部分は、この「配給制度」により支配されている『官製市場』の 下にあるといっても過言ではない」と冒頭で勇ましく述べたうえで、「官だけがいわゆる公共公益性を体現できる唯一の主体であるという旧来の発想は終焉を迎 えたと言わなければならない」と宣言している。

 この推進会議の答申では、少子化から外国人の移住、教育や農業まで広範な問題が取り上げられているが、通信と放送の問題は「生活・ビジネスインフラの競争促進」の項で扱われ、通信分野に比べて放送の変化は「遅々としたもの」だと懸念を表わしている。
 地上波テレビ放送も、5年ごとの再免許のときに新規参入ができることにはなっているが、現実には、例えば関東では、「昭和39年に5局体制となって以降40年以上変化がないなど、新規参入が想定し難い環境にある」。
 2011年7月に予定されている放送のデジタル化完了後も、新たな措置を講じない限り、電波による伝送手段からコンテンツの制作・編集まで「上下一体型の事業モデルが地域単位で維持される」。

 こうした状況に対して、新規事業者の公募手続きを明確化するとか、デジタル放送への移行によって周波数帯の余裕ができたときには活用するなどと いったことが盛りこまれている。昨年は、ライブドアや楽天が、民放キー局の事業に参入しようとして四苦八苦していたわけだけど、新規に自前で地上波放送局 を持つことも、少なくともいまよりは容易になるだろう。

 また、放送対象地域を基本的に県単位とする現行の制度のもとでは、地方の民放はキー局に依存した番組作りをしがちで、経営基盤も脆弱になり見直す 必要があるとか、ネットや衛星放送で地上波を流したいと思ったときに許可するかどうか、いまは放送局の判断にゆだねられているが、放送局の同意を確実に得 られるようにするといったことも書かれている。

 さらに、われわれ視聴者にただちにかかわることとしては、「コピーワンス」の見直しがある。地上波デジタル放送は一度しかコピーできない。しかし、それではあまりに不便なので見直すべきだということが、昨年7月の情報通信審議会の第2次中間答申に続いて書かれている。
  これからは家で録画したものを携帯デバイスで持ち歩いて見たり、自宅で録画した番組を出先でネット越しに見たり、といったことがさかんに行なわれるように なると予想される。「コピーワンス」の制約下でもコンテンツの「移動」はできるが、移動の途中にトラブルが起これば消えてしまう。

 この答申ではこのほか、地上波の放送局自身が通信インフラを使って番組を流せるようにしようとか、NHKの事業は真に必要なものに限定すべきだな どと、関係者にとっては、そうとうに驚いたり困ったりするようなことも書かれている。しかしともかく、推進会議の錦の御旗は「利用者のため」ということ で、規制改革・民間開放は一般国民のメリットになるという信念に貫かれている。
 アメリカなどに比べて、日本の社会は、生産者の論理で政治が動く度合いが強かった。小泉政権の誕生を契機に大きな変化が起きたことが、こうした答申などからもはっきりとうかがえる。

●いまの光ファイバーを超える第4世代高速無線通信

 推進会議のこの答申では、インターネットの未来に関する2つの技術についても具体的なスケジュール入りで明記されている。

 ひとつは、電力線で情報を送り、電源コンセントでADSLを超えるネット接続ができるシステム。
 もうひとつは、高速移動時でもいまの光ファイバー接続と同じ最大100メガBPS、高速移動していないときにはその100倍の1ギガBPSの回線速度が得られる第4世代移動通信システムなどの高速無線通信である。

 どちらもわれわれのインターネットの利用形態を大きく変える可能性がある技術だが、今年度に検討して結論を出し、来年度に措置することが謳われている。
 今年度というのはもう数日で終わってしまうわけで、さすがに少し遅れているようだが、電源コンセントでネット接続できるシステムについては、情報通信審議会の分科会が審議し、今年の5月をめどに答申を出す予定になっている。

 高速無線通信のほうも、今年の11月をめどに答申がまとめられる。第4世代の高速無線通信が格安で提供されるようになれば、「線」なしでいつどこ でも高速でネット接続できるわけで、「ADSLだの光ファイバーだのと言っていたのがウソのよう」ということにだって、いずれはなっていくのかもしれな い。

 こうした動きを見ていると、規制緩和の動きはとても好ましいものに思われる。規制緩和によって競争が激しくなれば、サービスの価格もどんどん下がっていくだろう。
 しかし、激しい競争の結果、わずかの巨大メディア会社だけが生き残り寡占状態になれば、多様な情報やサービスは受けられなくなる。価格もいずれ高騰するかもしれない。
 競争状態が維持され、情報やサービスが多様であり続けることができるかどうかも重要な視点だろう。

    *

 放送と通信の融合やNHKをめぐる問題は、規制改革・民間開放推進会議のこの答申を受けて、総務省の「通信・放送の在り方に関する懇談会」でも精 力的に議論されている。座長の松原聡東洋大学教授は3月21日のNHKの放送記念日特集の特番でもかなり大胆なことを言っていたが、次回はこの懇談会につ いて取り上げる。

 

関連サイト
規制改革・民間開放推進会議のサイト。3月20日の会議でも、「各重点事項の今後の進め方」の冒頭に、公共放送についての見直しと、通信・放送についての規制の見直しがあがっている。放送に関する問題は、最重要検討課題のひとつになっている。
●電力コンセントでネット接続できるシステムについては、総務省の高速電力線搬送通信に関する研究会が、心配される電波の漏洩や干渉などについての報告書をまとめ、昨年12月26日に公表した。「情報通信審議会情報通信技術分科会国際無線障害特別委員会(CISPR)」が引き続きそれをうけて、具体化にむけて検討している。
●総務省の「ワイヤレスブロードバンド推進研究会」がまとめた最終報告書が昨年12月27日に公表された。それを受けて情報通信審議会情報通信技術分科会広帯域移動無線アクセスシステム委員会が引き続き具体化にむけて検討している。
 高速無線通信について検討した「ワイヤレスブロードバンド推進研究会」の最終報告書の9ページに掲載されている「モバイル通信に必要な帯域幅」の図(NTTドコモ提 供)によれば、第4世代移動通信(4G)になってくるとホログラムが送信でき、さらに、この触覚や分身の送信(!)まで視野に入ってくるらしい。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.428)

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コメント

ワンセグは確かに何かの変革への序章なのかも知れない。だが、受け入れる側のテレビの体質はどうなのだろうか。自分に都合のいい双方向はまだしも、視聴者がユーザーという感覚はテレビ側にはないだろう。いくつかの民放TVのサイトに当たったが、積極的に視聴者からの要望や意見を聴取しようという姿勢のものは見つからなかった。番組個別への視聴者の意見は気にしているようだが局全体やクレームについてはきわめてガードが堅い印象がある。NHKもそうなのだが、基本的にメールでそれも住所氏名を明らかにしなければ対応しないという立場である。対応しないのはかまわないが、このネットの時代に貴重な自由意志による匿名の意見を無視するというのは、いかがなものだろう。多くのクレーマーの存在を考慮すれば、慎重な態度もわからないではないのだが、様々な外部の少数意見を採り上げ、自らの改善に役立てようとしない組織は、組織として先が見えているような気もする。
すべての、民放TVのサイトをチェックしたわけではないので一概には言い切れないが、放送と通信の融合について気になる点の大きな側面のような気がする。

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