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2006.02.03

姿が見え始めた「放送と通信の融合」のかたち

ブロードバンド会社が、ネット、電話、多チャンネル・テレビの
3点セットを提供する時代になってきた。
こうした時代のテレビの運命はどうなるだろうか?

テレビに乗り出したNTT

 「放送と通信の融合」という言葉は、この1年で驚くほどポピュラーになった。
 1年前は、「なんだか専門的」というイメージもあったと思うけど、もはやそんな雰囲気はなくなってしまった。その功績のかなりの部分はライブドアの堀江氏にあるのだろう。
 捜査の対象になったライブドアや堀江氏の運命がこの先どうなるかはわからないけれど、彼らのフジサンケイグループとの争いによって、「放送と通信の融合」はすっかり有名になった。この言葉を聞くと、誰もがホリエモンや楽天の三木谷社長の顔を思い浮かべるのではないか。

 しかし、実際のところ、どういう具合に融合していくのかは、はっきりしていない。堀江氏や三木谷氏がやろうとしたように、IT企業とテレビ局が資本関係を深め統合する、などというのはそのひとつだが、かならずしもIT企業と民放キー局が会社ぐるみ融合しなければならないわけではない。

 年末押し詰まった12月26日、NTT東、NTT西とスカイパーフェクトは、先のIT企業とは違った形の「放送と通信の融合」のプランを発表した。スカイパーフェクトの100パーセント子会社オプティキャストとNTT東西は、共同で会社を設立し、光ファイバーを使った「光パーフェクTV!」の販売運営をする。
 現在NTTは、ブロードバンド・ネットワーク接続「Bフレッツ」とIP電話のセット販売をしているが、それに多チャンネルのテレビが加わって、「トリプルサービス」を提供するという。

 放送というのは、以前は電波を降らせてコンテンツを配信することだったが、ブロードバンドの通信回路を使って多チャンネルのテレビ放送を届ける動きがどんどん進んでいる。
 「光パーフェクTV!」というのは、従来の『スカイパーフェクトTV!(スカパー!)』とは違ってアンテナ不要で、光ファイバーのネットワークを使い、デジタル放送を含む地上波、BS放送、280の多チャンネルが見れる。これまでは関東・関西・名古屋などのマンションだけが対象で、昨年末で345棟22700戸、有料の多チャンネル加入者は3550件にすぎなかった。東京23区の新築マンションには50パーセント以上に導入しているというが、まだこれからというところだろう。
 オプティキャストは、この春から一戸建ても対象にトリプルサービスを提供する予定だそうで、NTT東西と組んだことで、対象地域が一挙に広がり、強力な販売体制ができた。

 スカイパーフェクトが有料多チャンネルサービスを提供しているのは現在400万人、5年後までに800万人を目標にしているとのことだが、NTTは、中期経営戦略で、2010年度に3000万の光アクセスサービスの顧客獲得をめざしている。
 NTTは、2011年度のテレビのアナログ放送停止も見すえ、スカパーの280チャンネルのコンテンツを手に入れたことになる。
 NTTが提供している「ひかり電話」は、1契約で2回線、5番号が使える。NTT東の従来の加入電話では月額1700円だった基本料金が500円になり(いずれも税別)、通話料も全国一律という、NTTが自爆しかねないほどの価格破壊的なIP電話だが、スカパーの有料チャンネルを加えて1万円以下で提供するという。

巨大メディア企業グループの誕生

 NTTと対抗するKDDIも、光ファイバーを使った電話サービスやネット接続に加えて、30チャンネルの多放送とビデオオンデマンド、カラオケ配信を組み合わせた「光プラスTV」というサービスをすでに提供している。
 KDDIは、これまで、NTTから光ファイバーを借りて通信サービスをやっていた。しかし、昨年秋、光ファイバーを持つ東京電力と組み、ネット、電話、多チャンネル・テレビの3点セットで1万円を切る新しいブロードバンドサービスを発表している。
 けれども、いまのKDDIの「光プラスTV」は、30チャンネルとチャンネル数が少ないのに加えて、地上波やBS放送はそのままでは見れない。
 KDDIはさらに、ケーブルテレビ業界2位のジャパンケーブルネットの筆頭株主となり、地域密着型のケーブルテレビと組むことでも「トリプルサービス」を提供しようとしている。
 これまで、ケーブルにしろスカパーにしろ多チャンネルは「贅沢品」といった雰囲気もあった。しかし、それもだんだん当たり前になっていくだろう。アメリカなどでは、ケーブル放送はそれほど裕福でない家庭にまで浸透している。

 ジャパンケーブルネットのように、ケーブルテレビ業界も、提携や合併によって通信・放送両方にわたるサービス競争に加わる動きを見せている。
 従来のスカパーは、アンテナの角度によっては見ることができなかったが、ケーブルテレビは、どの家でも加入できる。
 また先行している地域外でもデジタル放送が視聴可能だ。
 デジタル対応のテレビやチューナーを買わずとも、貸与されるチューナーをアナログのテレビに接続するだけでデジタル放送が見れる方式のものもある。
 昨年9月までで200万世帯と契約している最大手のジュピターテレコムは、テレビやネットだけでなく電話も提供し、NTTやKDDIと競える3つのサービスを提供している。
 しかし一般にケーブルテレビ会社は小規模なところが多く、こんどのNTTグループの発表で、ますます再編を迫られることになるだろう。

 通信会社やケーブルテレビのほか、ソフトバンクも、ブロードバンドにIP電話、多チャンネルのテレビをそろえている。
 ソフトバンクとヤフーは、日本ばかりかアジアのテレビ局も含めた多くのコンテンツにアクセスできる「TVバンク」を立ち上げ、ブロードバンドを使った多チャンネル時代に対応しようとしている。

 こうした企業グループは、激しい吸収合併を繰り返し、テレビ、電話、ネットばかりでなく、ビデオのオンデマンド配信や音楽配信、ショッピングやオークション、さらにはさまざまな金融や決済の機能にいたるまで広範なサービスを提供するようになっていくことも考えられる。
 毎月の基本料金や通話料、コンテンツ視聴料などともに、ショッピングや金融などの決済機能が備われば、テレビはコンテンツを提供するばかりでなく、ワンストップの「家庭内ATM」として、携帯電話とともに強力な課金決済システムになりうる。

テレビは幸福になるのか不幸になるのか

 こうして気づいてみれば、降ってくる電波でテレビを見ている人は減っていき、ブロードバンドの有線ネットワークで、テレビも電話もネットもやっている、といった人は、どんどん増えていくだろう。
 「放送と通信の融合」などとことさらに言わなくても、通信の設備で放送を見るのが、当たり前になっていく。
 そうなったとき、民放キー局やNHKは、数百あるチャンネルの一部になっていくだろう。テレビ局は、しだいに、伝送路を握っている会社にコンテンツを提供する番組制作会社になっていく。

 指で数えられる数少ない会社で限られた電波を分けあって放送していたときには、民放キー局は、特権的な存在だった。しかし、たくさんのチャンネルの中の一つになってしまえば、獲得できる視聴者は減り、広告収入も落ちていく。
 さて、そうなったとき、テレビ局は、はたして幸福になるのか不幸になるのか。

 テレビ会社は、在京キー局でさえも、これまでのような高所得が得られる職場ではなくなっていくかもしれない。しかし、おそらくいまよりもずっと作りたい番組を作れるようにはなるのではないか。
 現在は、膨大な視聴者に受け入れられる番組を作ることが、いやおうなく求められている。
 報道系の番組なども、まともなドキュメンタリーなどはどんどん減り、ワイドショーまがいの報道系番組ばかりが増えている。扇情的なポピュリズムを促進するメディア装置としての傾向をいよいよ強めているわけだが、それは、過大な視聴者を相手にしているからだ。
 たとえ扇情的な番組を作っても、見ている人が格段に減れば、その影響力は限られる。
 少なくともテレビに関していえば、いまよりもずっと健全なメディア状況になるだろう。
 個々のテレビ局の影響力が減った社会はハッピーになる‥‥というのは、楽観的すぎる考えだろうか。

関連サイト
●このNTT東のサイトのように、現在NTTは、Bフレッツと「ひかり電話」を組み合わせたサービスを提供している(http://www.ntt-east.co.jp/t/useful/index.html)。
●NTT東西とスカイパーフェクトの 100%子会社オプティキャストが、多チャンネル放送と、デジタルを含む地上波・BSの再送信サービス「光パーフェクTV!」の販売運営会社設立を昨年 12月26日に発表したときの報道会見資料(http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10104795/M00001595.pdf)。
●光ファイバーを使って多チャンネルのテレビ放送と電話とブロードバンド接続を提供している“総合ブロードバンド通信サービス”『KDDI光プラス』(http://www.kddi.com/hikari/index.html)。今年初め、法人向けのイーサネット・サービスをやっていたパワードコムと合併して、KDDIは「ラスト1マイル」も手に入れた。
●ケーブルテレビ最大手ジュピターテレコムはすでに、電話とネット、多チャンネル・テレビの3点セットを提供している(http://www.jcom.co.jp/)。
●ソフトバンクとヤフーが12月19日に始めた動画配信サイト『TV Bank』(http://www.tv-bank.com/)。現在の『Yahoo!動画』は、有料コンテンツも含んでいるが、成功しているUSENの無料動画配信サイト『GyaO』の影響か、『TV Bank』は無料中心にするらしい。コンテンツはすでに、ドラマやアニメ・映画などのコンテンツ制作配給会社、民放キー局ではテレビ朝日が提供し、ほかの民放各局とは、「具体的なコンテンツの選定、提供形態、提供開始時期についての協議を進めて」おり、さらにNHKは実証実験に参加しているという。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.420)

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コメント

コメントありがとうございます。

いずれ動画も手元の媒体に保存するのが減り、手元には再度見る為のネットのリンクだけを残す様になるのかも知れません。
紙媒体の本など直接手で触れて読んだり眺めたりするものはそれなりに残るでしょうがオンデマンドによる高価な注文品になってしまうのかも。


>以前はメディアの名前だけで信頼性が担保

歴史の古い新聞のほうがもっとなのかも知れませんが、テレビなどの報道のある意味傲慢な「おれが報道」という自意識が強過ぎるのが気になります。
本来先ず先にあるべき正しい情報を伝え、啓蒙するという実質を何処かに置き忘れている気がします。

例えば、松本サリン事件であらぬ犯人報道をしたときも、全国ネットのテレビや全国紙が報道の途中で常に自らの情報の検証をしていたらああなったでしょうか。

又、自らの過ちが判明したときに素直に認め被害補償も含め相応の謝罪をしたと考えているのでしょうか。
なまじ全国報道だけに取り返しの付かない被害を与えても悪けりゃ「m(_ _)mゴメン」の一言で済むと思ってはいないかと疑いたくなるのは私だけなのか。

報道の自由には責任が伴う筈であり、報道の自由の名の下に節度の無い情報の収集と垂れ流しでは名前負けしたバラエティーでしかないでしょう。

 あだちさんの言われるとおりですね。
 テレビだけでなく、あらゆるデジタルなコンテンツはこうした伝送路を使うことになっていくのでしょう。
 長い目で見れば、屋台や影響力、経済的見返りが大きいので、とりあえずテレビから始まっている、というぐらいのことと考えたほうがいいのかもしれません。
 いずれ取り上げようと思っていますが、ともかく政府の動きがすごい‥‥ 小泉政権が終わる前に方向性を出そうということのようです。

 正確性の保証のためには「名前」はだいじですね。メディアは、以前はメディアの名前だけで信頼性が担保されたわけですが、だんだんそれだけではすまなくなっているのかもしれません。

最近のテレビ局や新聞社の報道では視聴率や販売部数の為の拡大・勝手な解釈、不十分な取材・検証、意図的ともとれる誤判断、不都合な部分の省略等々によるショー化が鼻に付きますが、ネットで確認されれば判ってしまうものを・・・。
「放送と通信の融合」以上に「情報伝達媒体と通信の融合」でテレビ、ラジオ、新聞、雑誌等の情報媒体の融合化が進むのではないでしようか。
この場合、情報発信側の情報の正確性保証(署名記事化等)や情報受信側の能力(情報を見分け必要に応じて情報の確認をするスキル教育等)、情報を発信・受信する双方に新たなものが求められるのでは?

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