« 「マンション購入者・自己責任説」はなぜ生まれたか | トップページ | 姿が見え始めた「放送と通信の融合」のかたち »

2006.01.27

徹底解剖! 第2日本テレビ

敏腕プロデューサーが、エネルギーを注いで作った

テレビ・サイトは、たしかにとてもおもしろい。
放送と通信が融合する新たな未来を切り開けるか。

ゲーム的なテレビ・サイト

「普段は『今日と明日、何も違いはあんめい!』なんて言っているんですが、05年と06年はそうは行かない感じがヒシヒシとしています。『放送と通信』融 合だか提携だか競合だか知りませんが、とにかくそんなものの『予兆が見えた年』と『本格化した年』になることは明らかな気がするからです」
 ‥‥と、「電波少年」などで敏腕プロデューサーぶりを発揮してきた「第2日本テレビ商店会長」は、大晦日に書いていた。
「第2日本テレビ」は、日本テレビが始めたオンデマンドのテレビ・サイトで、昨年10月末に「開局」し、「商店会長」になったのは、番組にもしばしば登場している日本テレビの土屋敏男コンテンツ事業局次長だ。
 ほかの民放キー局も、番組のネット配信をはじめたが、自前で会員を集めて課金しているのは日本テレビだけ。ほかのテレビ局とは段違いに番組制作者たちの気合いが入っている。
 人気バラエティ番組を作ることに長けている敏腕プロデューサーが本気になって作ったと思われるこのサイトはよくできている。もっとも何がよくできている かをひと言で説明するのはかなりむずかしい。というのは、このサイトは、いろいろな意味で複雑にできているからだ。これだけ凝って作りこまれたサイトも珍 しいかもしれない。いろいろなことを考え抜いて作ったものなのだろう。

 で、何がすぐれているかというと、それを説明するのがけっこうむずかしいわけだけど(苦笑)、トップページをぱっと見ると、どこをクリックすればいいの かがまずわからない。ゲームなどはそうなっているが、たいていのサイトはそんなふうには作らない。誰でもがすぐわからなければ使いにくいからだ。
 「第2日本テレビ」はそうした常道をとらなかった。なぜそうしなかったのかは明らかだ。クリックしてみて、思いがけないものが出てくるのを楽しんでほし い、と思ったからだろう。しかし、これは微妙な賭けだ。わかりにくくて嫌われるかもしれないし、利用してもらえないかもしれない。

 有料なのか無料なのかも、少なくとも開局前は説明するのがむずかしかったらしい。このサイトは広告とコンテンツ収入で成り立っているが、無料で見れるコ ンテンツも多い。商店街の交番へ行くと、「どうしたワン」と「犬のおまわりさん」が出てきて、無料で見れる有料コンテンツが張り出されている。無料になる コンテンツは日替わりで変わるらしく、実際上はかなり無料で見れるようだ。

 会員制なので登録すると、まず2か月間有効の千ポイントがもらえる。1ポイント1円で、電波少年やショート・ムービーでも99ポイント。古いニュース映像などは9ポイントなので、千ポイントあればかなり見ることができる。
 また、交番の上には福引き所がある。ネコの福引き係が「福引きするだニャー」とベタな言葉で迎えてくれる。ガラガラまわすと玉が出る商店街お馴染みの福引で、当たり玉が出ると、ポイントがもらえる。私は3回やって3回とも当たった。運がいいなと一瞬思ったが、それもそのはずだ。当たると、協賛スポンサーのCMが流れ、それが終わるとポイントがもらえる。福引はCMをみせるための仕掛けなのだろう。

 このように広告と有料コンテンツはバーターになっている。広告を見ることはコンテンツ料金を払うことにほかならないというのはネットの特徴的な仕組みだが、「第2日本テレビ」も意識的にそうした手法を使っている。

キーワードはレトロ

 「第2日本テレビ」には実のところ、強力なコンテンツが並んでいるわけではない。
 「目玉」になるような新しいコンテンツは、商店街の正面中央の「特別催事 場」にあるものぐらいだろう。この原稿を書いているときには、20日から始まるワールドカップ女子ゴルフを、地上波に先駆け、ライブでネット配信すると予 告している。
 それ以外のコンテンツは、既存の番組の再利用がほとんどだ。
 「タイムマシーン屋」と名づけられた「お店」で見せているのは、53年8月の日本テレビ開局 以来の「昔懐かしい番組」だし、商店街正面の目立つところにあるのは「爆発屋 岡本太郎大博覧会」で、かつての前衛アーティスト岡本太郎のトーク映像と著 名人の岡本太郎賛歌。「もぐら骨董堂」は「日本テレビのアーカイブ約17万本の映像の中から重箱の隅をつつくがごとく映像を吟味」したもの。「テレビ屋サ トーのお店」は、昭和48年から平成6年まで放送された木曜スペシャルで一時代を築いた「テレビマン、いやテレビ屋」佐藤孝吉自らが選んだ「傑作選」。
 まあ、こんなぐあいだ。
 このほか、「電波少年」や「伊東家の食卓」、料理番組や占い、海外のショートムービー、スタジオジブリの選んだ短編アニメなどが並んでいるが、超強力なコンテンツとはいえないだろう。
 人気ドラマならばそれだけでアクセスを集められるかもしれないが、ドラマは、関係者や出演者の権利関係が複雑でむずかしい。
 バラエティも、まるごと再配 信しているわけではなくて、コーナー単位で見せている。それは、移り気なネット視聴者向きにしたということばかりではないだろう。まるごと再配信するとな れば、番組関係者すべての承認が必要になる。コーナー単位なら、コーナーごとの関係者の許可があれば配信できる。放送と通信の融合の掛け声はさかんに叫ば れるが、さしあたり強力なコンテンツが使いにくい。

 それでもついあれこれ見てしまうのは、結局、見せ方がうまいからだ。「ありふれたコンテンツ」をもっともらしく見せてしまうその手腕に、さすがは評判のテレビ人のしわざと感心させられた。
 トップページをレトロな商店街のイラストにしたのも、古い映像を見せるための仕掛けだったのだろう。トップページに番組一覧を載せてアクセスできるよう にすればわかりやすくはあるが、それでは、おもしろみはない。なんだろうと思わせながらクリックさせ、太鼓がなったり、タイムマシーンが飛んできたり (「タイムマシーン屋」)、導火線に火がついて爆発したり(「爆発屋 岡本太郎大博覧会」)、犬のおまわりさんや猫の福引係がワンだかニャーだか言ってこ そ引き立つ。強力なコンテンツを並べてアクセスを集めることは誰でもできる。ハンディのあるなかで魅力的に演出できることこそが才能というものだろう。

究極の「放送と通信の融合」はテレビ局の悪夢

 とはいえ、このサイトが「放送と通信の融合」の未来だとすると、テレビ局にとってはそうとうに苦しいことになる。
 「第2日本テレビ」は、10月末のオー プン以来2か月あまりで16万人の会員を集め、目標は100万人だという。混乱を避けるため少しずつ会員募集をしていったようだから、目標達成は可能だろ う。
 けれども、百万人の会員というのは多いようだが、テレビの視聴率にすれば1パーセントもない。いったん会員になっても2度とアクセスしない人ももちろ んいる。アクセスしても特定のスポンサーのCMを見るとは限らない。テレビの前にすわってチャンネルをあわせた、少なくても百万人、ゴールデンタイムなら ば1千万人以上が見てくれるテレビの常識とは比較にならない。広告料もそれ相応のものしか取れないだろう。

 もちろん、こうしたサイトがいまのテレビにとって変わるなどといったことは、テレビの世界の人は誰も考えてはいないはずだ。しかし、究極的な「放送と通 信の融合」というのは、テレビのコンテンツが、ネットのほかのコンテンツとまったく同列に配信されるということではないか。つまり、日本テレビがなくなっ て、「第2日本テレビ」だけになるというのが、ほんとうの「放送と通信の融合」のはずだ。
 でもこれは、テレビの世界の人にとっては「想像外の悪夢」である。
 では、テレビの世界の人々にとってもう少し「現実的」な放送と通信の融合というのは、 どのようなものなのか。年末から年始にかけて立て続けに明らかになった放送と通信の融合をめぐるビジョンには、それを感じさせるものもある。次回はそれを とりあげよう。

関連サイト
●第2日本テレビ(http://www.ntv.co.jp/dai2ntv/)。
●日本テレビの社員募集ページでは、土屋敏男コンテンツ事業局次長が、ブロードバンドが普及して誰でもテレビ局ができる時代になり、「ただのテレビ屋でい い時代は終わった」と激を飛ばしている(http: //www.ntv.co.jp/jinji/study/division/04contents/01.html)。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.419)

« 「マンション購入者・自己責任説」はなぜ生まれたか | トップページ | 姿が見え始めた「放送と通信の融合」のかたち »

放送と通信の融合」カテゴリの記事

コメント

アスキーでいつも記事を拝見しています。知命の齢になってから放送メディアに転職することに。ドッグイヤーにとまどいながら、変化に目を瞠っています。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/56597/8361373

この記事へのトラックバック一覧です: 徹底解剖! 第2日本テレビ:

« 「マンション購入者・自己責任説」はなぜ生まれたか | トップページ | 姿が見え始めた「放送と通信の融合」のかたち »

2014年8月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31