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2005.09.24

雨のち晴れは出口調査に最悪の日?

選挙は自民党の大勝に終わったが、
各種の調査からは意外な「真実」も見えてくる。
そしてまた、その調査の意外な盲点も‥‥

●「小泉人気」を過大に評価するのは間違い?

 自民党は公明党とあわせて衆議院の3分の2を超える議席数を占めた。「小泉人気」が自民党の大勝をもたらしたと見られている。しかし、選挙前に行なわれた世論調査では、そこまで勝つとはとても思えなかった。
 8月末から9月始めにかけて行なわれた読売新聞の世論調査では、小泉内閣支持は46パーセントで、2年前の衆院選とほぼ同じだそうだ。選挙直前の朝日新聞の調査ではもっと小泉首相に厳しく、「小泉首相の政治姿勢に共感しますか」という問いには、イエスとノーがともに40パーセント。「小泉さんに首相を続けてほしいですか」という問いにも、続けてほしいと答えた人はわずかに多いだけだった。にもかかわらず、自民党支持が36パーセントと、民主党支持16パーセントを大幅に上まわっていた。この数字をそのまま解釈すると、「支持されていたのは首相ではなく自民党」という、およそ印象とかけ離れたことになる。これはいったいどういうことなのだろうか。

 小選挙区で実際に自民党が獲得した票は、民主党の1・3倍に過ぎない。にもかかわらず、議席数では民主党の4倍になった。小選挙区ならではの、わずかの差が地滑り的効果を生んだ、ということがまず言える。そのうえで、支持を決めていなかった大都市の無党派層が自民党に票を投じ、投票率を押し上げるとともに、自民党の圧勝をもたらした。また、読売新聞や毎日新聞の調査では、各党が掲げる政策を見て投票するという答えが、候補者個人や党首を基準にするという答えよりずっと多かった。優等生的な答えで、カッコつけているのではないかと思えなくもないけれど、郵政民営化という政策によって自民党に投票するという人がやはり多かったのだろう。もちろん、「郵政民営化イエスかノーか」と二者択一を突きつけた小泉首相のやり方が巧みで迫力もあった、ということは、大きく影響しているにちがいない。
 その一方、朝日新聞の調査では、「民主党の岡田代表に首相になってほしいと思いますか」という問いに「そうは思わない」と答えた人が66パーセントもいた。「なってほしい」はわずか16パーセント。岡田氏はまじめでおもしろくはなさそうだけど、そう悪い政治家とは思えない。岡田氏個人の不人気というより、民主党全体のアピールに魅力を感じられなかったから、その党首に首相になって欲しくない、ということなのだろう。
  
●出口調査の方法と限界

 テレビ各局は、いつものように投票が終わった8時きっかりに、出口調査をもとにいっせいに各党の議席予測を華々しく発表した。テレビの出口調査は3つのグループがやっていた。NHKは単独、テレビ朝日は朝日新聞と合同で、ほかの民放4社(フジテレビ、日本テレビ、TBS、テレビ東京)は共同通信社と組んだ。その調査をもとに、各局それぞれの調査や取材などを加味して予測を出した。だから、テレビで発表された各局の予想は少しずつ異なっていた。当確を打つのも各局の判断だ。
 選挙日当日の「フジサンケイ ビジネスアイ」の記事によると、民放4社と共同通信の調査では、原則的に、全国300の小選挙区のそれぞれで24か所ずつ投票所を選び、40人以上の有権者に調査員が投票結果を聞き取って、1選挙区あたり千人程度、全国で約30万人の基礎データを集めたという。有権者のばらつきが出ないように時間を変えて午後6時まで実施し、7時には各局に結果を渡すことになっていたのだそうだ。
 この説明からは、調査の「弱点」もうかがえる。投票時間は原則的には午後8時までだから、6時以降の投票はフォローしていないわけだ。夜の時間に投票する人が多いのは、都市部の住人で、家族持ちというよりは独身者だろう。こうした人たちが投票する候補者の票の予想は低めになりがち、ということになる。
 もちろんテレビ局だってそれぐらいのことは考えているにちがいない。これまでの経験をもとにデータの補正はするだろうが、同じ属性の人だって、昼に投票する人と夜に投票する人では考えが違うかもしれない。さらに、投票日が雨で、夜の6時ごろに雨が上がったりすれば、通常は夜に投票に行かない人たちも、それからどっと押しかける。調査としては最悪の条件、ということになる。
 今回も、東京など関東南部では投票日の午後に激しい雨が降った。その時間に行くはずだった人の多くは遅れて投票に行き、調査対象外になったと考えられる。各局の予測は、自民党が実際より10議席ぐらい多く、民主党がそのぶん少なかった。でもまあ480議席のうちの10議席は2パーセントぐらいのものだから、それは誤差のうちかもしれない。しかし、民放の番組中に出されたいくつかの当確は間違っていて、訂正とお詫びをしていた。ぬか喜びさせられた候補者や支持者は大迷惑だろうから、こちらのほうは問題だろう。なぜ間違ったのか、いま推測したような雨の影響があったのかどうかなど、きちんと分析して発表してくれると出口調査についての見方が深まっておもしろいのだが。
 
●ネットでは「政権交代」が起こった!?

 テレビの当確予想のような実害はなかったと思うが、実際の結果と大幅にはずれてしまったネットの「出口調査」もある。選挙情報専門サイト『Election.』の調査だ。「出口調査」とは書かれているが、投票日までの1週間、ネットでアクセスしてきた人にアンケートに答えてもらうというものだから、統計的な正確さはもとより期待できない。しかし、実際の結果とどう違うかに興味があって結果を待っていた。
 テレビ局同様、投票日の午後8時過ぎにサイトで結果が発表された。それを待っていた人はたくさんいたようで、しばらくアクセスしにくかった。少しして覗いてみると、現実と異なり、民主党の得票が自民党を上まわった、という結果になっていた。自民党の得票率は34パーセントなのにたいし、民主党は41パーセント。7パーセントの差で民主党の勝ちだ。「小泉内閣を支持しますか」という問いにも、支持36パーセントにたいして、不支持が42パーセントと上まわっている。
 この調査の回答数は1万を超えているものの、回答者の85パーセントは男性で、30歳代が3分の1、40代が4分の1とこの世代だけで6割近い。地域も、北海道や東北、北陸・信越、中国、四国はそれぞれ5パーセント台以下で、東京と南関東があわせて30パーセント、近畿が19パーセントと都市部に片寄っている。
 このサイトでは、郵政法案の否決後4回調査をしている。最初の調査では、自民党支持が多く、小泉内閣支持が不支持を9パーセント上まわっていた。しかし、選挙までの1か月のあいだに、ほんとうに小泉自民党でいいのかと思い始めた人が多かったのか、最後の調査では、逆転して民主党が上まわった。
 2号前にとりあげたgooリサーチの調査などを見ても、ネットでは、ネット外よりも、小泉内閣に対して批判的な人が多いのかと思うが、読売新聞がやったネットモニター調査では、じつはまったく違った結果が出ている。比例区で自民党に投票すると答えた人は52パーセント、民社党が23パーセントと大差で自民党が支持されている。同じ8月末から9月初めにかけて読売新聞がやった電話調査では、自民党34パーセント、民主党19パーセントだから、『Election.』とは違い、読売の調査では、ネット利用者のほうがずっと自民党支持色が強かったことになる。読売のネットモニター調査は男女比や地域バランスを考慮したそうだが、読売の名前で募集し、応募者の中から選んだとのことなので、その点で片寄りがあったのではないか。
 しかし、もし読売と『Election.』どちらの調査もそれなりに実態をとらえているのだとすれば、大都市のアクティヴなネット利用者だけが反自民色が強かったことになる。さて、どうなのだろう。

    *

 巨額の財政赤字を作り出した政党に、その責任をとらせることなしに解決もゆだねてしまうというのは、ほかの国の人から見るとちょっと理解しにくい話かもしれない。もっとも、日本では、「戦犯」の責任を問うよりも、これからなんとかしてくれそうなリーダーのいる政党に政権をゆだねるのは当然、ということだろうか。

関連サイト
●選挙を支えるハイテク機器や出口調査の実情などに触れた9月11日の「フジサンケイ ビジネスアイ」の記事(http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200509110008a.nwc)。民放4社と共同通信の出口調査では、調査員の手配などは調査会社に委託、データは幹事社の共同通信と専門の調査会社が集計・分析し、費用はしめて5億から6億円だという。「当確」は、フジテレビの場合、「担当デスク」と呼ぶ責任者を10人以上配置し、系列局による地元選挙区についての判定をもとに判断しているそうだ。
●読売新聞の総選挙特集ページ(http://www.yomiuri.co.jp/election2005/)。ネットモニター調査の結果も載っている。比例区で自民党、民主党それぞれに投票すると答えた人の割合は、5対2。しかし、現実の結果は5対4で、これほどの差にはならなかった。
●オンラインで頻繁に世論調査をしている選挙情報専門サイト『Election.』(http://www.election.co.jp/)。これは選挙当日の夜に発表された「衆議院選挙出口調査」。姉妹サイト『ele-log(エレログ)』では、政治家にブログを提供したり、多くの議員のサイトにリンクを張っている。

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