小さな政府と大きな政府、どちらを望むか?
選挙の結果がどうなるかは神のみぞ知るだが、
神の領域に何とかたどり着こうという試みもある。
それを見ると、有権者の心が少しはわかる
●選挙予想は当たるか
いろいろな総選挙の予想が出ている。衆院解散後、小泉政権の支持率が急上昇したから、自民党圧勝の予想ばかりかと思っていた。しかし、各選挙区での当落予想をもとに数字を積み重ねていくと、民主党と接戦になると予想するメディアや政治評論家もいる。前回の総選挙や参院選などでの獲得票をもとにはじき出すとそうなるらしい。このところ民主党は選挙のたびに議席を伸ばしてきたから、これまでの選挙の延長でこんどの選挙をとらえれば当然だ。しかし、有権者が「小泉マジック」にかかっている今回の選挙で、そうした予想が成り立つとは思えない。もし、民主党が勝つとすれば、自民党が圧勝すると思った有権者が、バランスを保つために民主党に投票する、ということをやったときぐらいのものかもしれない。
メディアの報道をうけて投票行動を決めることを「アナウンス効果」というわけだが、専門家のあいだでは、こうしたことがほんとうにあるのか、疑問の声もあがっている。アナウンス効果によって負けそうなほうに投票する人がいる一方で、勝ち馬に乗ろうとする人もいる。どちらに有利に働くかはかなずしもいえないというのだ。
とはいっても、メディアの報道が投票行動に影響をおよぼさないわけはない。そのときの情勢によってどちらにプラスになることもありうる、ということだろう。今回の選挙についていえば、マクロに見ると自民党が勝ちそうだが、それぞれの選挙区の特定の議員への投票にそうした状況がどれほど影響するか、その具合によって結果が変わってくるにちがいない。
●大きな政府を望んでいるのは誰か
ネットでの世論調査も発表されている。「gooリサーチ」がやった調査は、年齢別、性別に有権者の動向がわかっておもしろい。
衆議院の解散を支持するかどうかは、世代ごとの変化が大きいようだ。20代未満で解散を支持する人は4割を切っている。歳をとるほど支持は増えていき、70歳以上になると、63・5パーセントが支持している。もっとも解散不支持も、20歳未満が21パーセント、70歳以上が28パーセントで、こちらもわずかながら年齢とともに増えている。若い世代は「どちらともいえない」の割合が多く、よくわからないとか、興味がないという人が多いのだろう。政治に関心があるかどうかという問いに、はっきり「ある」と答えたのは20代、30代が26パーセントなのにたいし、70歳以上は79パーセントもの人が「ある」と答えている(ただし、20代、30代は「どちらかといえばある」と答えている人は45パーセント。「ある」と答えるほどには関心はないけど、まあまあある、ということのようだ)。
この数字は、考えてみれば、そういうものかも、という気がするが、興味深いのは、「小さな政府と大きな政府のどちらを望むか」についての答えだ。60歳以上は6割が小さな政府と答えているのにたいし、30歳未満では4割近くが大きな政府と答えていて多数派だ。こうした傾向は、「小さな政府」を推進している小泉政権を支持するかどうかにも関係している。若い世代になるほど小泉政権への支持は少ない(全体では支持と不支持の割合は4対3で支持のほうが多いが、20代未満は支持と不支持がほぼ拮抗している)。
憲法9条を改正すべきかについても世代によって意見がはっきりと分かれている。20歳未満では、改正派は23パーセントしかいない。51パーセントが反対。50代までは「改正すべきでない」が多数派だが、60歳以上で逆転。70歳以上は「戦争を知っている世代」だから9条支持派が多いのかと思いきや逆で、半数以上が「改正すべき」と答えている。
憲法9条改正をもくろむ政治家がこの調査を見たら、「早く改正しないとしにくくなる」とあせりを感じるにちがいない。
もっとも「次期首相として期待するのは誰か」の答えを見ると、「若者はハト派」と見なしていいかどうかは怪しくなる。規制緩和の荒波を直撃されて苦しんでいるせいか、40代、50代で小泉政権が続くことを望んでいるのは3割前後と少し少ないが、トップが小泉首相である点は各世代共通だ(各世代あわせて35パーセント)。しかし時期首相期待が次に多い政治家は世代によって異なっている。60歳以上の年輩層は岡田民主党党首(24パーセント)、30代から50代までが安陪晋三自民党幹事長代理(19~22パーセント)なのにたいし、20代、30代は、安陪氏とほぼ並び、石原慎太郎都知事をあげている(18パーセント)。「若い世代はハト派」とはとてもいえなさそうだ。
性別の調査も、顕著な違いが出ている。
政治に関心があると答えたのは男性が47パーセントにたいし、女性は17パーセント、3割以上が、「どちらかと言えばない」あるいは「ない」。小泉自民党は次々とマドンナ候補を刺客として送りこんだが、女性一般が政治に強い興味を持っているわけではないようだ。
世代別の調査とあわせると、女性と若者は大きな政府を望んでいるようで、男が5対2で小さな政府を望む人が多いのにたいし、女性は逆転し、2対4で大きな政府を望む人のほうが多い。憲法9条改正についても、女性は若者と共通で、男性が改正派と反対派がほぼ同じなのにたいし、女性は2対4で、はっきりと改正反対派が多い。
財政赤字が膨大になり、少子高齢化に向かういま、大手新聞は、「小さな政府にするしかない」みたいな論調が多いし、世の中のムードもそうなのかと思っていたが、この調査を見るかぎり、かならずしもそうではなく、世代や性によって違いが大きいわけだ。これはネット調査特有の結果なのだろうか。
●選挙予測は楽じゃない
こうした調査を公表しているポータル・サイトがある一方で、「はてな」はいっぷう変わった総選挙予測サイトを作っている。各政党の評価を予測して、仮想的な株を売買するサイトだ。評価が低いときに買って、高くなって売れば持ち点であるポイントが増える仕組みだ。
この「はてな総選挙」は今年の4月から試験的にやっている「はてなアイデア」のひとつだという。「はてなアイデア」では、はてなのサービスへの要望や不具合を登録し、それが仮想的な株になる。そのアイデアを見て、いいと思った人はその株を購入する。1000株以上購入されたら「上場」され、以後は参加者間の売買になる。はてながアイデアを採用すると配当が支払われて取り引きは終了、というのがおもなプロセスだが、アイデアをカテゴリー間で移動したり、ほかのアイデアにくっつけたり関連づけたりといったことができる。という具合でけっこう複雑だ。「総選挙はてな」はアイデアの代わりに政党に投資するわけだが、独自のルールもあって、もっとむずかしそうだ。まったくの仮想のポイントで、「いかなる価値も持ちません」とのことなのに、それでも価格が変動し、売買が行なわれている。
投票日はまだ先だが、さしあたり政権交代を予想する人は少ないようで、「はてな総選挙」の一番人気は自民党だ。この原稿を書いている時点で、元値の10倍以上の値段が付いている。次の民主党は7倍ほど。元値に届かない政党もかなりある。
おもしろい試みだが、公職選挙法は選挙期間中の「人気投票」の公表を禁じている。これが人気投票にあたるのではないかという声があがり、あちこちのブログで議論されている。予測と人気投票は違う、という意見もあるが、裁判所がそれを認めるかどうか。しかし、さしあたり選挙結果に影響をあたえるとは思えないし、いろいろな試みをやって選挙にたいする興味をかきたてられれば、社会的にはプラスだろう。
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候補者は、公示日のあとサイトを更新すると、公職選挙法にひっかかると見られている。自民党は、ネット選挙は不利に働くということで、これまで規制緩和に積極的に動かなかった。しかし、これだけ「世間うけ」をねらった選挙ができるのであれば、もう解禁してもいいのでは?
関連サイト
●goo総選挙特集サイトで発表されている調査(http://news.goo.ne.jp/specials/2005/elex/research/)。goo総選挙特集サイトは、候補者リストや選挙関係のニュースなどのほか、こうした調査やブログ・アンケートなどを実施していて充実している。gooのこの調査は、ネットを使って解散後の8月半ばの4日間で4万8000人の回答を集めている。公示後、一部のデータは公表を控えることにしたようだが、gooリサーチのサイト(http://research.goo.ne.jp/Result/0508op17/01.html)にもこの調査の別のデータが載っている。
●政治家のブログも増えている。政治家ブログ『ele-log(エレログ)』(http://www.election.ne.jp/)は、政治家にブログを提供したり、リンクを張って、有権者の判断を助けようとしている。90人以上の衆議院議員のサイトにリンクが張られている。
●ブログ検索サイト『テクノラティ』も総選挙特集ページを作っている(http://trj.weblogs.jp/senkyo/)。総選挙関連の検索ヒット数などのトピックスが提供されている。
●『ヤフー』は政党マニフェストの比較サイトを作り、テーマごとに政党の比較ができるようになっている(http://election2005.yahoo.co.jp/)。
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