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2005.08.19

相次いでネット配信に乗り出すことを発表したテレビ局

7月半ばの10日間で、テレビとネットの融合は、
突然進み始めたかのようだ。
示し合わせたかのように民放各局が
次々とネット配信を開始すると発表した

●どこでやっている、フジのネット配信?

テレビ・メディアに大きな変化を引き起こすかもしれない変化は次のよう始まった。
 まず7月12日、フジテレビが、7月下旬からヤフーBBやOCN、ビッグローブなど複数のプロバイダーと提携し、テレビ番組の有料オンデマンド配信をすると発表した。そして実際に「ワールドグランプリ女子バレーボール」の決勝ラウンド全15試合を8月31日までの期限つきで配信し始めた。8月には、CS放送のオリジナルコンテンツなどを配信し、番組を増やしていくという。
 フジテレビのサイトを見たところ、たしかにトップページの目立つところに、「女子バレーボール ワールドグランプリ2005」のバナーがある[現在はこのバナーはなくなった]。クリックしてアクセスしてみたが、オンデマンドで見れそうではない。どう見てもワールドグランプリの取材記でしかないのだ。取材記を読まなくても、全試合の映像が見れるはずなのに‥‥と思ったが、オンデマンド配信へのリンクはどこにもない。
 しかたがないので、「お探しものを入力!」と書かれた検索ウィンドウに「オンデマンド配信」と入れてサーチしてみた。いくつかヒットしたうちのトップに出てきたのがそれらしい。クリックすると、CSのニュースの見出しが細かい字で並んでいる。
 7月12日のところに「フジテレビが、ついに見たいときに見たい番組が見られる動画配信サービス『フジテレビ On Demand』をスタート!」とある。それをクリックして、ようやくオンデマンド配信の案内ページにたどり着いた。
 この新サービスの担当は、どうやらフジテレビのCSらしい。フジテレビのCSのトップページを見てみると、そこにはたしかにバナーリンクが載っている。
 それにたいして、フジテレビのトップページのほうにはオンデマンド配信の案内はどこにもない。結局フジテレビの地上波のサイトはテレビ番組の宣伝ばかりか。ウェブ・サイトなんだから、本編を見れるコンテンツをもう少し重視してほしいよなあ‥‥などと思いながら、ワールドグランプリのオンデマンド案内ページをよく見ると、コンテンツが見れるのは、フジテレビのCSのサイトでさえないことに気がついた。配信サービスをやっているのは、ヤフーBBやOCN、ビッグローブなどの提携したプロバイダーで、フジテレビのCSのページには案内と、それらのプロバイダーの配信ページへのリンクがあるだけ。考えてみれば、フジテレビのサイトには課金の仕組みがないから、さしあたり自前で有料配信できないわけだ。
 「テレビとネットの融合は、突然進み始めたかのようだ」なんて、勇ましくこの原稿を書き始めたけど、実体を見ると、かなり腰が引けている。

●やる気満々の日本テレビ

 なあんだ、と拍子抜けした気分で、10月からテレビ番組のオンデマンド有料配信を始めると、1週間後の7月19日に発表した日本テレビのサイトを次に覗いてみる。
 こちらはまだ配信サービスを始めているわけではないから、当然ながらそれらしい雰囲気は何もなかった。しかし、会社情報のページを見ると、プレスリリースだけでなく、この件についての記者会見の要旨も載っていて、「第2日本テレビ(仮)発信! この秋日本テレビがVOD事業に、本格参入!!!」と、なんだかやる気満々の感じだ。
 日本テレビは、「映像コンテンツの商店街[モール]」を構築し、約18万本あるアーカイブを再パッケージするのに加えて、地上波の番組とは別に編集した1本あたり3分から15分ぐらいの短い「オリジナルコンテンツ」をクリエーターや記者たちに送り出してもらう、と言う。パソコンだけでなく携帯電話などにも流す。早期に100万人の会員を集めるのが目標だそうだ。会員を集めるというのだから、こちらはさしあたり自前で配信・課金するつもりなのだろう。
 1本あたり3分から15分ぐらいの短いコンテンツというのは、要するに、各番組のなかで流しているビデオ映像やエピソードをパッケージ化するということらしい。バラエティなどは、いくつかの話題やエピソードをまとめて1時間番組にしているわけだから、それをばらせばいい、というわけだ。ネットの視聴者は移り気で、ひとつのコンテンツを1時間もじっと見てくれたりはしない。だから、こういう形のほうがいい、ということなのだろう。すでにあるコンテンツを再加工して使うというのは、お手軽ではあるものの、現実的な発想である。
 コンテンツの担当は、「電波少年」のプロデューサーとして話題と顰蹙を巻き起こしてきた日本テレビの看板制作者、土屋敏男局次長だそうで、左のようなトップページのイメージ図を作っている。映像コンテンツの商店街は「喜」通り、「怒」通り、「哀」通り、「楽」通りの4つからなり、「寝る前にちょっとこんな気分になりたい」という視聴者のニーズに合わせたコンテンツを提供します、とのことで、この商店街の会長も土屋氏自身が務める予定らしい。
 ネットでは、性別や年齢、居住エリアなど利用者の属性に応じたCMを打つことができる。テレビとはまた違ったピンポイントの広告が可能なメリットを活かし、広告収入もねらっていくという。
 
●TBSのねらいはDVDの販売?

 日本テレビの翌日には、TBSが、「TSUTAYA」のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と共同で、テレビ番組のネット配信やDVD化のための会社を8月に設立すると発表した。
 TBSは、パッケージソフトの自社流通網がなくて、フジテレビ系列のポニーキャニオンで販売したりもしてきたそうだ。「TSUTAYA」グループと組んだことからもわかるとおり、TBSは、まず番組をDVD化してソフト販売をしたいのだろう。そのうえで、「TSUTAYA」のショッピング・サイトを使って携帯電話やネットへのコンテンツ配信もするということらしい。日本テレビがもくろんでいると思われる独自配信でもなく、またフジテレビのようにプロバイダーと組むのでもなく、TBSは、ソフト販売のノウハウのある大手チェーンを提携相手に選んだわけだ。
 同じオンデマンド有料配信を発表したとはいえ、3局いずれもその思惑と戦略は異なっている。
 しかし、その背景は共通だ。テレビ局がネット配信になかなか踏み切れないのは、番組の権利関係が複雑で、バックミュージックの権利ひとつをクリアするだけでも、作曲家、作詞家、歌手、演奏家などそれぞれと交渉しなければならず、厄介だからだ。ネット配信して得られる収入を考えると、手間ひまをかけて権利をクリアしても割が合わないと思われてきた。
 けれどもこの春には、経団連が、来年3月までの暫定的なものながら、ブロードバンド配信にあたっての音楽やシナリオなどの使用料の目安を発表した。また権利関係の情報を共有するためのデータベース作りも進められていて、少しずつテレビ番組のネット配信の環境は整い始めている。各局は、テレビドラマなどの本格的な配信はもう少し先のことになるだろうと思いながらも、そう遠くない時期に配信できるときが来ると見て、いっせいに声を上げ始めたのだろう。
 ‥‥などと思っていたら、テレビ各局は、そんな漠然とした思惑で、7月にいっせいにネット配信に踏み切ることを発表したわけではどうもないようだ。7月末になって、総務省が、テレビ業界をひっくり返すことになる可能性を秘めた重大発表をおこなった。もっともこれが重大発表だと思っている人は、もしかするとそんなに多くはないのかもしれない。メディアでも、このニュースを比較的地味にあつかったところもあるし、突っこんだ解説も、この原稿を書いているときには見あたらないようだ。気を持たせて申し訳ないけれど、この重大な方向転換についてはまた来週。

関連サイト
●日本テレビは、プレス発表で、映像コンテンツ配信サイトのトップページ・イメージ図も披露した(http://www.ntv.co.jp/info/news/240.html)。「喜」通り、「怒」通り、「哀」通り、「楽」通りの4つで構成される商店街。たとえば「喜」通りは『電波少年』などのコンテンツ、「怒」通りは『報道特捜プロジェクト』、「哀」通りは『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』、「楽通り」は『伊東家の食卓』などにそれぞれアクセスすることを例として考えているという。また、図の右端にある「ニュース速報版」をクリックすると、報道局によるニュース映像にアクセスできるといったアイデアを披露している。さらに左端の掲示板が会員登録のフォーマットになっていて、ブログのようなものも置きたいとのことだ。
●「フジテレビ On Demand」と名づけて「ワールドグランプリ女子バレーボール」の決勝ラウンド全15試合を、8月31日まで525円で見放題、ということで配信し始めたフジテレビ(http://www.fujitv.co.jp/cs/fod/index2.html)。
●TBSは、TSUTAYAのショッピング・サイト『ツタヤオンライン』などCCCグループが持つ「プロモーション力」と連動し、TBSグループの番組や企画、コンテンツの企画開発・運営をしていくという(http://www.tbs.co.jp/company/newsrelease/20050720.html)。
●今年3月、コンテンツ利用者団体と著作権団体がブロードバンド配信にあたって合意した内容を、経団連が発表した(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2005/017.pdf)。音楽著作権については情報料収入および広告収入の1・35パーセント、俳優や歌手・演奏家・演出家などは情報料収入の3パーセント、シナリオや脚本などの文芸は情報料収入の2・8パーセントなど、来年3月末までの暫定的な使用料の目安が発表された。

(週刊アスキー「仮想報道」Vol.398)

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いよいよ映像バブルがやってきますね。

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