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2005.04.22

ウェブログ時代のニュースサイト──「リンク型ジャーナリズム」

すべて自前でやろうとするニュースサイトの発想は
もはや古いのではないか。ウェブログ時代の
ニュースサイトのあり方を考えてみる

●ブログを知らない人は62パーセント

 「いまさら聞けない○○用語」というのは、雑誌などでよくやられる特集だけど、「ブログ」もそうしたときに選ばれる定番の一語だろう。とはいえ、ブログの知名度はぐんぐん上がっている。「アンカーリサーチ with goo」の継続的な調査(登 録が必要)では、1年まえに「ブログについてよくわからない」と答えた人は40パーセントいたが、今年の3月には16パーセントになったという。ただし、 これはネット利用者に尋ねた調査なので、一般の人々が対象だと知らない人はもう少し多いはずだ【追記・4月に発表された数字ではさらに認知度が上がり、9割になった】。
 アメリカでは、電話を使って調査したところ、62パーセントのネット利用者がブログを知らなかったと今年の1月2日にピュー・リサーチ・センターが発表している。ネット上の出来事というのは知っている人と知らない人の落差がやはり大きいのかもしれない。
  その一方、アメリカのこの調査によれば、昨年1年でウェブログ読者が58パーセント伸びてネット利用者の27パーセント、3200万人になった。昨年アメ リカでは大統領選挙があったが、政治的なブログの読者が増えたことがこの伸びに貢献したと分析している(先の日本の調査では、ウェブログを見たことがある 人は4月の発表で68パーセント)。
 また、日本のネットレイティングスが発表した、昨年1年間に生まれた「利用者の多い主なサイト」の上位6つはウェブログだった。 トップはライブドアのブログで、昨年11月の時点の利用者数は、2位のエキサイトブログの280万人を大幅に引き離す738万人で、ダントツのトップであ る。実際ライブドアはブログ作成サービスのほかにも、『未来検索』と名づけたブログ検索や、ウェブ上で読めるブログ・リーダーを提供するなどウェブログに 熱心だ。
 すでに書いたように、ライブドアは報道部門を充実させようとしている。一般から記者を募集し、「パブリック・ジャーナリスト」として登 録したうえで、彼らの記事の掲載も始めている。しかし、総じて記事のレベルが高いとはいえず、ネットでの評判は芳しくない。「プロのジャーナリストはやっ ぱり必要」ということを皮肉な形で実証してしまったようにも見える。
 「市民記者」によるニュースサイトというのは、日本でも、また海外でも生まれ ているが、それらの多くはウェブログの普及以前に生まれたものだ。ものすごい勢いでウェブログが増えているいま、もっと違う形のネット・メディアを誕生さ せたほうがおもしろいのではないか。
 パブリック・ジャーナリストに文句をつけたお詫び(?)に、どんなことが考えられるか書いてみよう。

●リンク型ジャーナリズム

 ポータル・サイトは、利用者を呼びこんでできるだけ長くサイト内にいてもらおうと、ますます多くのサービスを提供している。しかし、記事や記者をすべて 自前で調達しようというのはネット的な発想とは思えない。同じくお金をかけずにやるにしても、たとえば私がニュースサイトの編集者だったら、すぐれたウェ ブログの書き手をネットワークして、ニュース・ページを強化することを考える。
 ウェブログでは、それぞれ専門家たちが無償でニュースを解説している。たと えば政治だったら、政治家や評論家から学者までがウェブログを立ち上げているし、金融や経済の専門家のウェブログもある。弁護士や医者のウェブログも数多 い。音楽やアート、スポーツ、あらゆるジャンルの本職や専門家のウェブログがすでにある。そんなに熱心にウェブログを探しているわけではないけれど、たと えば下段のようなウェブログはニュース解説としてそのまま読める。探していけば、おそらくほとんどのジャンルをカバーできるほど専門家のウェブログがはも うあるだろう。
 専門家でなくても、ニュースサイトの「デスク」が見て価値があると判断したブログにはリンクを張り、論調を分類するなどわかりやすく表示し ていく。日々更新されていくそれらの見出しを拾い、リンクするだけでもちょっとしたニュースサイトができる。
 こうしたことはじつはすでに個人の ニュースサイトがさかんにやっていて、びっくりするほどの数のアクセスを集めたりもしているようだ。また、著名人にポータルサイト内でウェブログを書いて もらうこともやられているが、さらにブロガーたちに、専門分野のできごとについてエントリ(記事)の依頼をしておき、タイムリーなニュース解説をやっても らう。ブログへのリンクとニュース記事を組み合わせていけば、深みのあるニュース・サイトができる。
 かつてのCNNのサイトは、ニュースソースにあたれるように外部サイトへのリンクをじつに熱心に張っていて、ネットの広がりを感じさせてくれた。 CNNはまもなくそうした試みをやめ、一般記事のニュースサイトは、日本のはもちろんのこと、「内向き」の傾向を強めた。ニュースサイトはリンクを「再発 見」すべきだ。 ニュースサイトは、ブログからリンクを張られる受動的な立場にとどまらず、もっと積極的にリンクを張っていく存在に変わるべきだろう。そうすれば、「パ ブリック・ジャーナリスト」などとことさらに名前を付けて「発掘」しなくても、これまでになく強力な「一般投稿型ニュースメディア」ができるはずだ。
  ニュースサイトとしては、「リンクによってサイト外へ出ていかれるのは困る」ということだったら、ウェブログの文章と同じものをサイト内にも載せるように すればいい。ウェブログの書き手たちは、ニュース解説として読めるまとまったものを書いたときにはニュースサイトにも掲載し、自分のサイトはそのまま書き 続れる。「ポータル・サイトに抱えこまれるのはちょっとね」というブロガーたちも二重にアップされるということならば、抵抗が少ないのではないか。
「タダで記事を書いてね」というのはちょっと虫がよすぎると思うが、書き手としても(そもそも無償でウェブログを書いていたわけだから)記事についてそれなりの評価と読者が得られるのであれば、通常より安上がりに協力してくれる人もいるだろう。

●ブログのハブ的機能を果たすニュースサイト

 事実はテレビやネットがたちまち伝えてしまうので、これからの新聞はもはやそれでは部数を維持できず、事件の解説や背景説明、読み物などに 力を入れなければならないと言われていたが、専門的な見地からたちまちニュース解説してしまうウェブログ群の登場で、それも怪しくなってきた。
 とはい え、すぐれた論評が載っているウェブログにタイムリーにアクセスする仕組みは、まだ十分とは言えない。単純なキーワード検索でアクセスしても玉石混淆です ぐれたウェブログが効率よく見つかるわけではない。
 また、ウェブログのランキングなども、一般的な興味の指標にはなっても、自分の関心に沿ったものではか ならずしもない。
 ひとつの論点について深みのある意見を探そうと思ったら、結局リンクをたどるという「ローテク」(?)な方法が一番よかったりする。しか し、いま起こった事件について適切なコメントをしているサイトにワンクリックでアクセスできる仕組みがあれば、時間をかけてブログを探すヒマのない忙しい 人たちもアクセスするようになる。ウェブログの影響力はさらに増す。
 「事件」とウェブログの結びつきがインターネットを活性化するということは、 先のピュー・リサーチ・センターの調査からもうかがえる。通常、ブログの読者はブログの書き手たちで、ブロードバンド接続しインターネット歴が長く高学歴 の若い男性たちだと同センターは数字をあげて指摘している。ただし、大統領選挙によって政治的ブログへのアクセスが増えた昨年、平均以上の伸びを示したブ ログ読者層は、女性や、30歳から49歳までの世代、あるいはダイアルアップで接続している人たちだったという。大きなニュースとウェブログの結びつきが ネット・メディアの読者の幅を拡げたわけだ。こうしたデータからも、ウェブログがこれからのニュースサイトの鍵であり、すぐれたブログの書き手といかに密 接な関係を作れるかがニュースサイトの命運を握っていることがうかがえる。

追記
 リンクで成り立っているウェブ上のニュースサイトなのに、わざわざ「リンク型ジャーナリズム」などと言ってみるというのはそうとう妙だと(自分でも)思うけど、ともかく(プロのやっている)ニュースサイトはリンクさえ活かしていない。上に書いたCNNの例のように、後退さえしている。参加型ジャーナリズム以前じゃないだろうか。

関連サイト
●ウェブログを導入してコミュニティー・サイト化した神奈川新聞社のサイト「カナロコ」。街の情報から記事への論評までウェブログを使い、一般の人からの情報や意見交換を取りこもうとしている。試みは おもしろいが、やはりサイト内でコンテンツを増やすことには限界があるのではないか。。
●ニュース解説になりそうなレベルの高いウェブログをいくつか挙げてみよう。公認会計士の磯崎哲也氏のウェブログ「isologue」。ニッポン放送株取得をめぐるライブドアとフジテレビの 戦いなどについても専門家ならではの視点で切りこんでいた。
「小林恭子の英国メディア・ウオッチ」。イギリスにいるフリー・ジャーナリストのウェブログで、イギリス関係のニュースに詳しい。イギリスの公共放送BBCと比較しながらNHKの問題なども論じている。
「中岡望の目からウロコのアメリカ」。『アメリカ保守革命』という著作もあるフ リー・ジャーナリストのウェブログ。アメリカの政治・経済についてディープな解説が載っている。このウェブログは「ホストされている」と書かれている。

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コメント

このコラムのために週刊アスキーを買っていたのですが、1週遅れでしかもハイパーリンクを張ってあるコラムを読めるのはありがたく思いますが、雑誌の未来を考えざるを得ません。
かつて『ダイス』という雑誌を出していましたがポータルサイト化を計っています。まだβ版の公開ですがぜひ皆さんの御意見をお聞かせ下さい。。

http://www.uplink.co.jp/news/log/000495.html
http://www.webdice.jp

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