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2005.04.15

ライブドアは「世界にひとつだけの花」?──拡大するポータルサイト

日本でもアメリカでも、ブロードバンドが浸透し
ポータルは動画コンテンツに熱い視線を注いでいる
多様なサービスを盛りこんでポータルはどこへ行く?

●アミューズメントパーク・サイト

 このところある回ではホリエモンを持ち上げ、次の回ではホリエモンをけなしているみたいで、応援するのかしないのかどっちなんだ、はっきりしろ、と思っている人もいるかもしれない。
 ホリエモンが「株主のため」に戦っていることが世の中を変えることにつながっているという意味ではホリエモンを応援するけれど、株主資本主義の論理に何の懸念も持たず、すべてそれで片が付くと臆面もなく語ることには大きな疑問を感じる。結局のところ、私も含めて株主でもない人間が勝手な思いこみをして、ことさらに応援したりするのはそれ自体ヘンなことなのだろう。勝手な思いこみで応援するよりも、はたして私たちにプラスなのかどうかを考えてみたほうがよさそうだ。
 「テレビなどのマスメディアを使ってポータルサイトに視聴者を引きこめば儲かります」ということはホリエモンも言っているけれど、新しいアイデアではない。しかし、そもそもこうした発想がどうも引っかかるのだ。引っかかるのは「儲かります」の部分ではなくて、ひたすらポータルサイトに呼びこんで、そこでいろいろなサービスを提供し、会員登録をしてもらうという考え方だ。
 もちろん、クリックひとつでほかのサイトに飛んでしまえるウェブで、利用者をサイトに「閉じこめる」ことは無理だ。でも肥大化していくポータルサイトは、その無理を何とか可能にしようとしているわけで、ウェブのあり方とそもそも矛盾しているんじゃないかと思う。
 日本のヤフーは、この4月1日で9周年になるそうだが、9年経って、ジャンル分けされたリンクはスクロールしなければ現われないほど下にさがり、ヤフー自身のサービスへのリンクが上のほうにずらっと並ぶようになった。しかし、もともとヤフーは、「できるだけこのサイトのなかにいてください」という発想とはまったく逆のものだった。おもしろいサイトをジャンル分けして並べたリンク集だったわけで、つまりはほかのサイトに飛んでいくための文字通りの「玄関」(ポータル)サイトだったわけだ。それがいまのトップページに見るとおり、ジャンル分けされたリンク集は下のほうに移され、ヤフー自身のサービスが上のほうにずらっと並ぶようになった。検索しても、ヤフーのサービスがまずトップに並ぶ。「できるだけ一日中ここで遊んでください」ということをデザインによって暗に語っているわけで、玄関サイトというよりも、アミューズメントパーク・サイトとでもいったぐあいになってきた。
 日本のサイトより一足先にサービスをはじめることの多い米ヤフーは、自前の動画コンテンツをそろえるためのスタッフを昨年来とくに熱心に集めている。ライブドアのようにテレビ局を傘下に入れようとしているのではなくて、テレビ局や映画産業で働いている人間を積極的にスカウトして「ハリウッド化」を進めている。さしあたり自分たちで動画コンテンツを作るというよりも、コンテンツの権利を獲得するつもりのようで、人気テレビ番組の放映されていないクリップなどを「独占映像」として流している。3分ぐらいに切り分けられたクリップの冒頭にそれぞれ広告を入れており、クリップをクリックするたびに、毎回同じ会社の広告が現われる。続けて見ると、3分ごとに広告が現われるわけで、もとのテレビ番組以上に広告が入っている感じだ。ご丁寧なことに予告編にまで広告が入っていたりして、「いくら何でも予告編には入れるなよ」と思うけど、ともかく広告が取れるということなのだろう。
 ワーナーブラザーズ出身の現在の米ヤフーのCEOは4年もまえから着々とヤフーのメディア産業化を図っていたらしい。ブロードバンドが普及していよいよ時節が到来したというわけだ。ブロードバンド先進国の日本でも、同じことが始まらないはずはない。そう思ってなのだろう。日本でもショートムービーを準備しているところが増えてきている。
 ネット広告は、ITバブル崩壊後、一時集まりにくくなったが、検索連動広告によって生きかえった。さらにブロードバンドが普及して、お金の取れる動画広告も立ち上がり始めたようだ。ただでさえ資金の余裕のある米ヤフーがこうしてさらに新たな収入源を得ることができれば、ますます多くのサービスを提供し、いよいよ肥大化していく。
 米ヤフーは1500万人の有料サービス加入者獲得を目ざすと言っているが、日本でも、いろいろなサイトが会員を集めることに熱心だ。会員にならないとアクセスできないサービスが増えてくれば、テレビ以上に「チャンネルを変える」(つまり違うサイトのコンテンツにアクセスする)のは厄介になってくる。テレビのチャンネルはリモコンのボタンひとつでほかの番組に移れるのに、クリックひとつで移動できるはずのウェブでは、会員登録しないとコンテンツにアクセスできない、そんな奇妙な状態が現実に生まれ始めている。あれこれ登録するのが面倒なので、ネットにアクセスして結局ひとつのサイトのサービスを使っただけで終わってしまったということになってきたら、これはネットの輝かしい未来なのか、それともネットの死なのか。
 少々先走り過ぎの心配かもしれないけれど、ひたすら肥大化をめざし、多様なサービスを提供して登録会員を増やすというアイデアを聞くと、こうした未来像が思い浮かび、ぞっとしない気分になってくる。

●コンテンツ制作を促進するネットと「殺す」ネット

 こうしたことを考えると、同じ検索サイトであってもグーグルの発想のほうをどうも肩入れしたくなってくる。
 グーグルのビジネス・モデルは、検索システムをほかのサイトに提供し、検索にともなって表示される広告で収入を得るというものだ。その収入は、グーグルの検索システムを導入したサイトにも分け与えられる。個人のサイトでも、グーグルが提供しているタグを貼り付けるだけで(実際にどれぐらいの額になるかはともかくとして)収入を得られる可能性が生まれる。グーグルは他人の母屋(サイト)で商売しているともいえるわけだけど、母屋にも利益を落とし、資金を提供しているわけだ。ブログが次々と生まれて注目度が高まっているアフィリエイトも各サイトに利益を落とす仕組みだが、このサービスを提供しているサイトにアクセスを集めることを目的にしているという点では、やはりアクセス獲得型の発想にとどまっている。
「グーグルは自分のサイトから利用者をできるだけ早く離れさせようとしていることを明言しているおそらく世界で唯一の会社だ」と米グーグルのサイトには書かれているが、自分のサイトにアクセスを集めなくてもビジネスになるというのは「コロンブスの卵」の発想である。
 ネットがいよいよ普及し、勝ち組のポータルサイトがますます大きくなって圧倒的な力を持っていけば、テレビ局も新聞社も出版社も、ポータルサイトにコンテンツを提供するプロダクションのような存在になる。フジテレビもニッポン放送もテレビ朝日もTBSもひとつのポータルサイトに番組を提供するようになって、「それぞれのテレビ局のサイトに行かなくても、ひとつのポータルサイトでいろんなテレビ局のコンテンツを見れるなら便利じゃん」と思うか、「何だかやだな」と思うかは人それぞれだろうし、こうした状況にならないようにテレビ局は抵抗しまくるだろう。だから、簡単には実現しないと思うけど、それでもこうした世界がメディアの未来としておぼろげながら見えてくる。
 いずれにしてもポータルサイトの力が強くなっていくのだとしたら、せめてたくさんの有力なポータルサイトが残ってほしいと思う。 ニッポン放送がフジテレビの株をソフトバンク・グループの会社に貸したことについて、ホリエモンは、「もっとも貸してはいけない相手に貸した」と韓国紙のインタヴューで言ったそうだ。たしかにいくつものポータルサイトが生き残るためには、ヤフーという最大のポータルサイトを抱えるソフトバンクと、強力な娯楽番組を作るフジテレビが結びつくのは望ましいことではないのかもしれない。
 ホリエモンは、NHKの討論番組で、格差社会の中での生き方を聞かれて、「世界にひとつだけの花」と答えたそうだが、なかなかいい答えだ。ライブドアは、ヤフーの後追いをしてポータル・サイトを肥大化させることよりも、「世界にひとつだけの花」のようなサイトをめざすほうがずっとかっこいい。

関連サイト
ヤフーの9周年記念サイト。「いまインターネットがなくなったら」をいろいろな人に聞いたコーナーなどができている。14日までの特集ページ。
ドナルド・トランプが毎回、登場人物の解雇を宣言することで人気を呼んでいるアメリカのテレビ番組「The Apprentice」の「独占映像」などが載っている米ヤフーのページ

(「週刊アスキー」仮想報道 vol.382)

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