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2005.04.28

戦争は思いもかけないときにやってくる?──反日運動対処策

中国で反日運動の火の手があがった。
これからいったいどうなるのだろうか?
そして、何かいい手はないかと考えてみると‥‥

●あれよあれよ‥‥か、やっぱり‥‥か

 反日運動のデモは、ネットの掲示板で日時や場所を決めて集まっているという。なるほど、アメリカの大統領選挙ではネットを通して落ち合い草の根グループ が作られた。日本では「2ちゃんねる」を使って映画「マトリクス」と同じ登場人物の黒づくめの格好をした集会が開かれた。それに対し、中国では反日運動な のか。ネットという同じ道具を使いながらも、それぞれお国柄が表われるものらしい‥‥などと呑気なことを言っている場合ではどうもなさそうだ。
 反日運動について、いろいろな人がいろいろなことを言っている。「中国は貧富の差が広がり、不満のはけ口が反日運動に向かっているだけ」などと解説している人もいるけれど、少なくとも「ほんとうの問題は別にある」などと解釈して安穏としていられる事態ではなさそうだ。
 90年代、中国は体制崩壊をくい止めるためにナショナリズムを鼓舞し、日本との過去の歴史を強調する教育をした。ほんとうは日本は、中国がこうしたこと を始めたときに、強硬に抗議するなり駆け引きをするなりして強く改善を求めるべきだった。しかし、日本の与党政治家は「自己主張」に熱心で、不満の火種を 摘むどころか、大きくしただけだったのではないか。手を打たないうちに反日的な若者はどんどん増え、ネットという武器まで手にして中国政府の統制さえきか なくなってきた。
 反日の牙城になったサイトに(ウェブ翻訳などを使って)アクセスしその主張を読むと、そうとうにまずいことになっていることが感じられる。おまけに中国 政府は、怒りの矛先が政府に向かうことだけは避けたいと、日本に不満をぶつけることは容認し、交渉の武器にしようとしているようでもある。政府が裏で糸を 引いているのか、それとも若者たちが統制を超えて動き始めているのか、よくわからないことが不安をいよいよかきたてる。
 怒っているのは中国や韓国の若者ばかりではない。日本人もまた怒っている。
 たとえば、たまたま見たウェブログにはこういったことが書かれていた。
 これで日本が常任理事国になれなかったら、中国は花火をあげて喜ぶにちがいない。日本はどこよりも分担金を払っているのに常任理事国になれないんだった ら、国連を脱退してしまえ。そして、憲法を改正して武装する。中国が核で脅すんだったら、日本も核武装を考える。戦前に国連を脱退して軍国主義に走った気 持ちがわかってきた‥‥
 これを書いた人もまさかほんとうに「国連を脱退してしまえ」とか、「核武装をしたほうがいい」と思っているわけではあるまい。「気持ち」を書いたにすぎないだろう。でも、こうして双方の怒りがエスカレートしていったとき、いったいどこへ行き着くのだろうか。
 いまからそんなことを心配しても仕方がない、と思うかもしれないけれど、中国にしても韓国にしても、政府と国民のちょっとしたスタンスの変化で、友好的な状態がたちまち吹っ飛び、かつてないぐらいに危険な状態になる。いまやそのことを否定する人はおそらくいないだろう。
 双方の政府のトップがこの先「硬派」の選択をしていった場合、どういったことになるか、まずはちょっと考えてみよう。

●最悪の場合‥‥

 国民だけでなく政府内の反日の動きを抑えられなければ、中国政府は「騒ぎの原因は日本にある」という立場を崩せない。日本の抗議が強硬になっていけばいくほど対立は深まっていく。おそらく何ともまずいことになるのは、日本国内で深刻な事件が起きたときだろう。
 すでに、大阪の総領事館に、「反日デモが続けば中国人に危害を加える」などという脅し文句と薬きょうのようなものが入った封筒が届いたり、ガラス瓶を投 げつけて身体に火をつけるなどの激しい事件も起きている。長崎の総領事館にはカミソリの刃が送られ、中国大使館には爆弾の脅しと白い粉。横浜では日中学院 に金属弾が撃ちこまれ、中国銀行には金属弾ばかりか火炎瓶が投げ込まれたという。これ以上の重大な事件が起これば、中国政府はいよいよ反日行動を抑えられ なくなる。
 メディアが中国でリサーチしているのを見ると、多くの中国人は、暴力に訴えることには反対している。ただし、日本の歴史認識や領土問題については不満を 感じている。日本で過激な事件が起これば、大きく揺れずに止まっている中国人の心の計りが一挙に傾き、学生を中心としたデモの動きに一般市民が加わって、 いよいよ収拾のつかないことになりかねない。
 日本では国民・政府ともに、「言うべきことは言うべきだ。毅然とした態度をとったほうがいい」という意見も強い。東シナ海の天然ガス田や尖閣諸島についても理は日本にあると信じている人がほとんどだろう。
 しかし、中国は日本がガス田の試掘権設定の手続きを始めただけで「重大な挑発行為だ」と反発しているぐらいだから、この先進めばいよいよ強い態度をとり、ガス田のある排他的経済水域の境界線あたりや、尖閣諸島での軍事的威嚇にまで進むかもしれない。
 そうした行為に日本の世論もいきり立つ。海上保安庁の船が出動し、わずかのきっかけで軍事的衝突が起こる。この衝突の非がどちらにあるにせよ、中国は けっして謝らないだろうし、日本のほうも、「もう我慢はできないし我慢する必要もない」と思う日本政府は、世論に支持され、強い態度をとる。
 さて、この軍事衝突にさいして、アメリカはどういう態度をとるだろうか。日米安全保障条約はあるが、海の上のちょっとした紛争ぐらいで、アメリカは日本に味方し、軍を動かしたりはしないだろう。
 私はここ十年ぐらい、ある出版社の仕事で、アメリカ国務省の外交文書の編集もやっている。いまちょうど、70年代初めの尖閣諸島についてもめているあた りの文書も編集しているのだけれど、それを見ると、アメリカ国務省は、尖閣諸島が日本の領土であることは認めている。しかし、日中の争いに介入する気はな く、当事国が話しあって解決すべきだという態度をとっている。軍事衝突になってもおそらく同じだろう。わざわざ介入して、嫌われ者の役を買って出るような ことはしないはずだ。
 つまり日本は、戦う気があるなら、自分たちだけで戦う必要がある。そして、「自衛のため」ということなら憲法改正もいらない。こうして日本は戦争状態に突入する‥‥ということもまったくありえないとは言えないだろう。

●ネット的解決方法

 こうした争いは戦争にならなくとも、言うまでもなく、日中双方にとって経済的ダメージは大きい。
 中国は、日本企業が撤退すればまず失業問題が深刻化する。しかし、日本との関係が不安定ということであれば、長期的には、アメリカやEU、ほかのアジア 圏の国との結びつきを深めていくことで打撃を回避しようとするにちがいない。アメリカは日本との関係上、微妙な立場に立たされるが、巨大中国の市場を無視 することはできず、経済的な関係を持続するほうがトクだと考えるだろう。
 日本経済はどうなるのだろうか。学生たちによる政治的な反発が高まったとしても、日本製品の不買がただちに広がるとは思えない。しかし、中国ほどの巨大 市場はないから、中国が日本に対して長期的には考えるかもしれないように、ほかの国で代替するわけにはいかない。日本は、世界の五分の一の人口を抱え急成 長していく中国市場に対して相対的に弱い立場に立たされていくことはほぼ確実のように思われる。理がどちらにあるにせよ、この争いは長く続けば日本に不利 になっていく。中国も、「国境線上の紛争」を超えた争いになればアメリカが黙っているはずはないのでそれ以上踏みこまないだろうが、最悪の場合、日本は、 争いになっているところはとられ、中国の不満は解消されず、広大な市場を失うだけということも考えられる。
 中国政府のやり方には疑問があるが、日本はナショナリズムで熱くなるよりも、下の反日サイトのような呼びかけに応じて日本から大量の募金を送ることのほ うが、じつはもっとも有効な対処法かもしれない。弾丸やカミソリの刃を送っても状況は悪くなるばかりだと思うけど、こうした方法なら、もしかしたら、と思 う。

関連サイト
中国『愛国者同盟』のサイト。反日運動の牙城‥‥のはずなんだけど、どういうわけか、トップページにいま大きく掲げられているのは、白血病の子どもへの募金の呼びかけ。『エキサイト』のウェブ翻訳を 使って日本語表示したので、もうひとつよくわからないのだけど、反日運動にもっとも衝撃を与えようと思ったら、中国語のできる人がこれを訳して個人レベル の募金活動をし、「望みは日中友好」とか書き添えて送金することではないか。ネットが火種なら、火種のサイトに(いい意味での)ショックを与えるネット的 な対処方法もある。【追記・4月29日現在、このサイトは、IDとパスワードを入れないとアクセスできなくなってしまったようだ。見ることができるのは グーグルのキャッシュhttp://66.102.7.104/search?q=cache:UxurwLBQ8ZIJ:www.1931-9- 18.org/+&hl=ja&lr=lang_ja。このURLを上のエキサイトのウェブ翻訳などのウィンドウに入れれば日本語訳が読 める】
●「釣魚島」(尖閣諸島の中国名)の権利を主張している『中国民間保釣連合会』のサイトの釣魚島紹介ページ。『エキサイト』のウェブ翻訳を使って日本語表示した。「釣魚島は中国の固有の領土で、私達の祖国を守った最前方の陣地だ」と書かれている。
中国918愛国網(http://www.china918.net/en/index_en.htm)。9月18日は、柳条湖での南満州鉄道爆破によって満州事変が勃発した日。このサイトは英語ページもできている。「どうして歴史を忘れられようか」と書かれている。
海上保安庁の尖閣諸島のページ。 これまでに起こった中国船の領海侵犯事件などが書かれている。尖閣諸島といわれてもどこにあるかわからない人が多いだろうが、地図も載っている。沖縄本島 から410キロメートル、中国大陸から330キロメートル、台湾から170キロメートルだそうだ。中国や台湾からのほうが近いわけだ。
(週刊アスキー「仮想報道」 vol.384)

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» 反日運動対処策 [きまぐれ日記@WebryBlog]
雑誌の反日の考察の記事でこのサイトの感想が載ってあった。 >「国連を脱退してしまえ」「核武装をしたほうがいい」と考えているわけではあるまい。気持ちを書いたに過ぎないだろう。 もちろん、本気で思ってない。 それどころか、今までだったら日本は中国に嫌われるような悪いことをしてきたんだ。すぐに中国に謝るべきだと思っていただろう。戦争は反対だ。平和憲法を守るべきだと信じていた。それが核武装まで口走るとは変わったものだ。 きっかけはワールドカップから韓国がおかしいと感じたことだ。ネットで興味...... [続きを読む]

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