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2005.02.11

未来に対処する機能を持ったフリーソフト

強力なフリーソフト組織が日本でも本格的に
活動を始め、ブラウザやメーラーの世界で
久しぶりに大きな波乱が起き始めている。

●千通の迷惑メールをたちまち退治したメール・ソフト

 前回書いたように、昨年の年末から迷惑メールが一日数千通のレベルで送られてくるようになった。プロバイダやポータルサイトの受信拒否の設定を使ったけれど、受信拒否できる数には限度があり、それでも追いつかない。
 ちょうどそのころ「サンダーバード」というメールソフトの日本語版が一応の完成とされるバージョン1・0にまでなってダウンロードできるようになった。それを使ってみることにした。
 このソフトは、「迷惑メールにお別れを」とサイトでもすぐれた迷惑メール機能があることを謳っている。結論から言うと、このソフトの威力は驚くべきものだった。受信フォルダにいったん入ったメールが、ちょっと考えるかのような間のあと、次々と迷惑メールのフォルダに送られていく。残っているのは必要なメールだけ。受信拒否の設定をしても一日千通近いレベルで迷惑メールが来たが、それがたちまち仕分けされ、きれいさっぱり迷惑メールのフォルダに移動していく様子は圧巻だ。もちろん見ている必要はないんだけれど、あまりにすごいのでついつい見とれてしまった。
 アドレス帳に登録してある送信者のメールは迷惑メールに分類されないことになっている。そうしたメール以外は、片っぱしから迷惑メールと見なしているのではないかとじつは始め思った。実際、最初から100パーセントちゃんと分類されるわけではなくて、まともなメール、とくにメーリングリストのように一日何通も来るメールなどは迷惑メールに分類された。そうしたメールはメール・アドレスをアドレス帳に保存して、これはまともなメールと学習させていく。私の場合は、幸か不幸か来る迷惑メールの数が多かったこともあってたちまち学習してしまい、数日のうちにほとんど間違いはなくなった。何日かに一度迷惑メールのフォルダを覗いて、まともなメールが入っていないかチェックするが、ネットで商品を買ったあとにくるメールなどまぎらわしいものがごくまれに混ざっているぐらいで支障はほとんどない。以前から来ていた迷惑メールやどうでもいいメールも受信フォルダから消えてしまったので、これまでより快適になったぐらいだ。大量に迷惑メールが来るようにならなければインストールしなかっただろうから、何が幸いになるかわからない。

●未来を予測する理論

 迷惑メールの分類には、ベイズ理論という確率理論が使われている。むずかしく聞こえるが、要するに、迷惑メールとまともなメールにそれぞれどんな単語が使われているかを調べ、単語それぞれについて「迷惑メール度」をはじいておく。「無料」という単語はたとえば迷惑メール度0・9とか、「明日」は迷惑メール度0・2といったぐあい。新たに来たメールにどのような単語が含まれているかを調べて「迷惑メール度」を計算し、何ポイント以上は迷惑メールと判定するのがこのベイズ理論を使った仕分けの仕組みである。
 ソフトにはあらかじめ単語の「迷惑メール度」について基本的な知識があたえられているが、どういうメールを迷惑と思うかは人によって多少の違いがある。利用者が実際に受けとったメールについて、まともなメールと迷惑メールにそれぞれどういう単語が含まれているかを学習させれば、さらに精度が上がるというわけである。
「件名に“未承諾広告”とあるのは迷惑メール」などとルールを一つ一つ設定していたことから考えると、びっくりするような進歩だ。これから来るメールについてまともなメールかどうかを判断できるわけで、この技術を使えばいわば未来の出来事に備えることができることになる。ついに自分のパソコンも未来を予測できるようになったかと思えば感動もする。ベイズ理論にはビル・ゲイツも注目し、マイクロソフトの製品にも使われている。検索などにも用いられ、IT業界が熱い視線を注いでいる。
 ベイズ理論は18世紀のイギリスの数学者トーマス・ベイズが生み出したものだ。この理論を迷惑メール対策に使いはじめたのも英語圏で、日本語についてはいまいちなのかなと思っていたけれど、立派に使い物になっている。(ただ、かならずこれぐらいのレベルで機能するというわけではない。ベイズ分析を導入しているニフティのも試してみたが、英語のメールについては分類するものの、日本語の迷惑メールについては学習させてもほとんど機能しなかった。技術の問題というよりも、この仕分けを使う設定をした人が迷惑メールのフォルダをチェックせず、必要なメールを読まないアクシデントを防ぐために、迷惑メールに判定するレベルをおそらく上げているのだろう)。
 この「サンダーバード」というメールソフトには、ニュースサイトやウェブログの記事を読みこんで表示するRSSリーダーの機能も付いている。RSSリーダーはこのコラムでも以前紹介したが、「サンダーバード」では、興味のあるサイトを登録しておけば、メールと一緒に新しい記事情報を取りこんで表示してくれる。メールを見るついでに読むことができるので、ニュースサイトやウェブログとの距離がずっと近くなる。
 驚くことに、この高機能のメール・ソフトは無料である。有料のメールソフトでもこうした仕分けのできるものはあるが、無料でこれだけのレベルになっているからすごい。

●ブラウザに一波乱が‥‥

 このソフトを作ったのはモジラという組織だ。本家はアメリカで、昨年8月には日本法人も作られ、オープンソースのソフトウェアを開発している。ほかのオープンソースのソフトウェア同様、ネットなどを通して多くの開発者が協力し、製品の質を向上させている。また、プログラムがオープンになっているので、次々と追加の機能が開発されて機能がさらに向上する仕組みになっている。
 モジラは「ファイアフォックス」という名前のブラウザも無料ダウンロードを始めていて人気を呼んでいる。アメリカでは、インターネット・エクスプローラー(IE)のシェアをじわじわと喰い始め、IEが9割のシェアを切るのはもはや時間の問題になってきた。
 このブラウザは、ネットスケープがもとになっている。90年代半ば頃はネットスケープを使っている人がほとんどで、ネットスケープ社はいまのグーグルと同じようにIT業界で高い評価を受けていた。しかし、その後、マイクロソフトが無料でブラウザーを配布し始め、さらにはウィンドウズのパソコンの標準ソフトとして組みこんだので、すっかり旗色が悪くなってしまった。その後、ネットスケープも無料化し始めたが、もはや手遅れだった。98年になって、ネットスケープ社はプログラムを公開して無料で利用を認めるとオープンソース化を発表した。モジラのブラウザはネットスケープが技術支援し、また、ネットスケープ社を買い取った米アメリカン・オンラインが資金援助もした。マイクロソフトにたたきのめされたソフト会社がまさに捨て身でプログラムを開放して蘇り、マイクロソフトに復讐しようとしているわけだ。
 IEが席巻して長らく無風地帯だったブラウザの世界にこうして波乱が起こりつつある。この波が日本にどのように押し寄せてくるかは見ものである。日本語版もすでに出ていて使い始めたが、なかなか具合がいい。いくつものウェブ・ページを見る場合、IEのようにウィンドウをいちいち開かなくてもひとつのウィンドウ内に新しいウェブ・ページを開ける。タブをクリックして違うウェブ・ページを行き来する。いくつもウィンドウを開いてしまうと収拾がつかなくなったりするが、テーマごとにウィンドウを開いてウェブ・ページをグループ化できて便利だ。IEが絶対的な地位に満足して製品向上が遅れれば、その先行きは危ういものになるだろう。

関連サイト
●Mozilla Japanが12月24日に日本語版を公開し始めた迷惑メール対策にすぐれている無料メールソフト「Thunderbird」。迷惑メールで困っている人にはお勧め。RSSリーダーとしても使え、高度なセキュリティ機能もある。インストール時に、アカウントやアドレス帳、メールなどをこれまで使っているメール・ソフトからコピーしてくれるので、すぐに使い始めることができる。
●「モジラ」の情報を共有するサイトも有志によって日本語化され、次々と新しいニュースが掲載されている。これは『mozillaZine 日本語版』
●昨年12月半ばニューヨークタイムズ紙に見開き2ページにわたって出した「Mozilla」の人気フリーソフト「Firefox」の全面広告。左頁には協力者の名前がずらっと並んでいる。「Firefox」は76日間で2000万のダウンロードがあったという。動作が速く安全性が高いことを謳っている。RSSリーダーとしても使え、画面の拡大も容易。グーグルのツールバーなども、有志がすでに作成していて組みこめる。インターネット・エクスプローラーからお気に入りや履歴、パスワードを読みこんで簡単に移行できる。
●「Thunderbird 」同様、ベイズ分析を使っている自動メール振り分けフリーソフト「POPFile」。日本語化され、日本語サイトができている。Outlook Expressなど多くのメール・ソフトと連携して使える。迷惑メールを仕分けするばかりでなく、学習させて多様なメール振り分けができる。

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コメント

こんにちわ。
最新の週アス読みました。
ブログを利用したネット新聞のようなモノがどんなふうになっていくのか、とか…とても気になるコトです。
例のオーマイニュースですが、
「オーマイブログ」なるものが開設されてます。必見。

 コメントやトラックバックのほかにも、何人かの方からメールをいただきました。
 迷惑メールで困っている方は、意外に多いみたいですね。

歌田さん初めまして。いつも『週アス』の方で拝読しています。時事問題をわかりやすく解説、意見されているのでとてもタメになります。
ほとんどの回でタメになるのですが、今回のメーラーの件はとても参考になりました。
私はとくにアドレスを公開してるわけではありませんが、懸賞などに使うフリーメールアドレスにはやはり多少の迷惑メールが送られてきます。なので、今回の「Thunderbird」は使い心地も良く、助かりました。ありがとうございました。
これからも「本誌」の方で楽しみに拝読させて頂きます。
P.S.ちなみにブラウザは「Fierfox」ではなく、「Opera」使ってます。タブブラウザでは「Sleipnir」と並んで有名ですね。
長文、乱文失礼しました。

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